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あまがっぱ
あまがっぱ
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男は事務所に残り残業をしていた。
この会社ではあんまり残業を推奨していない。
それは、夜に子供の幽霊が出ると噂されていたからだ。
馬鹿らしいことに、社長までもがその噂を信じるどころか実際に見た、とそう言っているのだ。
男は幽霊なんて信じていない。
ただ残業が推奨されてないのには助かっていた。
けれど、その日はどうしてもその日のうちに終わらせなければならない仕事を抱えていたので残業することとなった。
会社に一人仕事をしていると、雨が降り出した。
そこで男が思い出す。
子供の幽霊が出るのは決まって雨が降った夜だという噂を。
男はバカバカしい、と思いながらも少し気分転換に窓の外を見た。
そして発見する。
事務所の外、道路にできた水たまりで遊んでいる雨合羽を着た子供の姿を。
子供は小学生の低学年くらいに男には見えた。
しばらく見ていたが、近くに親がいるわけでもなさそうだ。
外灯のわずかな明かりの闇夜の中、子供はずっと一人でみずたまりで遊んでいる。
男は時刻を確認する。
もう夜の十時をゆうに過ぎている。
子供が出歩いて良い時間ではない。
そのまま放置することもできたが、子供に何かありでもしたら、会社にも悪い噂が立ちかねない、そう思った男は子供をとりあえず保護することにした。
男が事務所から出て道路へ行くと、そこに子供などいなかった。
ただ雨合羽がひらひらと木の枝に引っ掛かり舞っていた。
見間違えたか、と男は事務所に戻る。
それにしても夜に凄い土砂降りだった。
男が少し外に出ただけで、服がかなり濡れてしまった。
仕事はまだあるが、明日、早く出社してやろう、と男はそう思った。
服をとりあえず拭き、事務所の戸締りを確認して帰り支度をして、窓を見る。
子供がいる。
水たまりで遊んでいる。
見間違いではない。
確かにいる。
雨合羽を、あの木に引っ掛かっていた雨合羽を着た子供が、確かに水たまりで遊んでいる。
男はどういうことだ、と思い、もう一度道路まで行く。
子供はいない。
近くの木の枝に雨合羽が引っかかっているだけだ。
男は理解する。
これが幽霊の仕業だと。
本当にいたのだと。
男は慌てて、事務所に逃げ帰ろうとする。
その時、木の枝に引っ掛かっていた雨合羽がズレ落ち音がする。
水たまりにばしゃりと大きな何かが、雨合羽だけではないなにかが、落ちた、そんな大きな音がした。
男はハッ、となってそちらに眼をやってしまう。
道路に落ちた雨合羽が意志あるように浮かび上がり、男に向かいバシャバヤバシャと足音をさせて駆け寄って来た。
無論、雨合羽だけがだ。
その雨合羽を着ているはずの存在は何も見えない。
雨合羽の中身は何もいない。
男は震えあがって事務所に急いで帰り、扉をしめ閉じこもった。
数度だけ扉を叩く音は聞こえたがすぐにその音も聞こえなくなる。
男が恐る恐る窓から外を見ると、雨合羽を着た子供が水たまりで遊んでいるのが見えた。
そこで震えながら事務所で朝を迎える。
その後、やって来た社員に事情を離し仕事を引き継いでもらって、社長の勧めで近くの神社でお祓いをしてもらった。
なにかあるわけではないが、その存在と関わってしまった社員はみんなそこで念のためにお祓いしてもらっているのだとか。
その日は男は会社を休んだが、それだけだ。
男がその会社を辞めたわけではない。
ただ、残業はしなくなった。
雨の日は特に。
この会社ではあんまり残業を推奨していない。
それは、夜に子供の幽霊が出ると噂されていたからだ。
馬鹿らしいことに、社長までもがその噂を信じるどころか実際に見た、とそう言っているのだ。
男は幽霊なんて信じていない。
ただ残業が推奨されてないのには助かっていた。
けれど、その日はどうしてもその日のうちに終わらせなければならない仕事を抱えていたので残業することとなった。
会社に一人仕事をしていると、雨が降り出した。
そこで男が思い出す。
子供の幽霊が出るのは決まって雨が降った夜だという噂を。
男はバカバカしい、と思いながらも少し気分転換に窓の外を見た。
そして発見する。
事務所の外、道路にできた水たまりで遊んでいる雨合羽を着た子供の姿を。
子供は小学生の低学年くらいに男には見えた。
しばらく見ていたが、近くに親がいるわけでもなさそうだ。
外灯のわずかな明かりの闇夜の中、子供はずっと一人でみずたまりで遊んでいる。
男は時刻を確認する。
もう夜の十時をゆうに過ぎている。
子供が出歩いて良い時間ではない。
そのまま放置することもできたが、子供に何かありでもしたら、会社にも悪い噂が立ちかねない、そう思った男は子供をとりあえず保護することにした。
男が事務所から出て道路へ行くと、そこに子供などいなかった。
ただ雨合羽がひらひらと木の枝に引っ掛かり舞っていた。
見間違えたか、と男は事務所に戻る。
それにしても夜に凄い土砂降りだった。
男が少し外に出ただけで、服がかなり濡れてしまった。
仕事はまだあるが、明日、早く出社してやろう、と男はそう思った。
服をとりあえず拭き、事務所の戸締りを確認して帰り支度をして、窓を見る。
子供がいる。
水たまりで遊んでいる。
見間違いではない。
確かにいる。
雨合羽を、あの木に引っ掛かっていた雨合羽を着た子供が、確かに水たまりで遊んでいる。
男はどういうことだ、と思い、もう一度道路まで行く。
子供はいない。
近くの木の枝に雨合羽が引っかかっているだけだ。
男は理解する。
これが幽霊の仕業だと。
本当にいたのだと。
男は慌てて、事務所に逃げ帰ろうとする。
その時、木の枝に引っ掛かっていた雨合羽がズレ落ち音がする。
水たまりにばしゃりと大きな何かが、雨合羽だけではないなにかが、落ちた、そんな大きな音がした。
男はハッ、となってそちらに眼をやってしまう。
道路に落ちた雨合羽が意志あるように浮かび上がり、男に向かいバシャバヤバシャと足音をさせて駆け寄って来た。
無論、雨合羽だけがだ。
その雨合羽を着ているはずの存在は何も見えない。
雨合羽の中身は何もいない。
男は震えあがって事務所に急いで帰り、扉をしめ閉じこもった。
数度だけ扉を叩く音は聞こえたがすぐにその音も聞こえなくなる。
男が恐る恐る窓から外を見ると、雨合羽を着た子供が水たまりで遊んでいるのが見えた。
そこで震えながら事務所で朝を迎える。
その後、やって来た社員に事情を離し仕事を引き継いでもらって、社長の勧めで近くの神社でお祓いをしてもらった。
なにかあるわけではないが、その存在と関わってしまった社員はみんなそこで念のためにお祓いしてもらっているのだとか。
その日は男は会社を休んだが、それだけだ。
男がその会社を辞めたわけではない。
ただ、残業はしなくなった。
雨の日は特に。
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