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たいしょほう
たいしょほう
しおりを挟むヴィンセントとクロードは無言でベッドへと向かうと、ふたりで広いベッドの上に乗り上げた。
落ち着かない様子のクロードは、ベッドの上でも目線を泳がせている。
そんなクロードの手を取り、ヴィンセントは優しく問いかけた。
「横になれますか?」
「……僕がですか?」
クロードは目を丸くして、不安そうに尋ね返してきた。なにか勘違いしているらしい。
ヴィンセントは苦笑しつつ、クロードの疑問に答える。
「俺がリードするだけです。あなたをとって食うような真似はしません」
「騎乗位でするということですか?」
「まあ、そうですね……」
ちゃんとそういう単語は記憶に残っているのだな、とヴィンセントは少し感心してしまった。
それはそれとして、実はヴィンセントには騎乗位の経験がなかった。以前のクロードとの閨事ときは正常位が後背位のどちらかで、ヴィンセントがクロードの上に乗ったこともなければ、リードしたことも一度もない。
まあ、なんとかなるだろう──そんな軽い気持ちで、ヴィンセントは事を進めようとしていた。
とにかく、クロードのものを勃たせて、自分で中を解して、挿れればいいのだ。
おそらくクロードがなにもしなくても、ヴィンセントが頑張ればどうとでもなるだろう。
「目を閉じていても構いません。なるべく早く終わらせます」
「……目を閉じるなんて、そんなことはしません」
「ですが、俺の体は傷痕が多いので、あまり見ていて気分の良いものではないかと」
いかにも心外だと言いたげな顔をするクロードにそう言いながら、ヴィンセントは自身の寝衣の結び目を解いた。
すると、寝衣の前が自然と開き、首筋から臍の下まで、ヴィンセントの素肌が無防備に晒される。
下着は履いたままなのでさほど羞恥心はないが、それを見せられたクロードは途端に顔を真っ赤にして口をはくはくとさせた。
「そっ、そんな突然っ……!」
「失礼しました。体の傷に関しては、見ていただいた方が早いかと思いまして」
「傷がどうとかっ、そんな問題じゃないですっ!」
「そ、そうですか……」
確かに、傷のことは以前のクロードもあまり気にしていなかった。いや、あれは気にしていたといえば気にしていたのだろうか──
「あの……」
ヴィンセントが以前のクロードのことを思い出していたところで、赤面したままのクロードから控えめな声がかけられる。
「はい、なんでしょうか?」
「父上から、ヴィンセントさんは僕の命の恩人だと聞きました。盗賊から襲われていたところを助けていただいたと」
「…………まあ、そうですね」
歯切れの悪い返答になったのは、あのとき、最後の最後でヴィンセントは背中を切りつけられて気を失ってしまったからだ。
その直後、助けを呼びに行っていたクロードの従者のひとりが応援を引き連れて戻って来たのでなんとかなったが、それがなければヴィンセントどころか、クロードの命もなかったのかもしれない。
実際のところ、ヴィンセントよりも従者の彼のほうがよっぽどクロードの命の恩人なのではないかとヴィンセントは思うこともあるが、クロードたちの中ではそうではないらしい。
たまたま通りかかっただけの見ず知らずの男が命懸けで助けてくれたから……ということもきっと大きいのだろう。
あれがきっかけで、ヴィンセントはクロードの妻になった。
不相応ではあるが、クロードを愛していることを自覚したいまとなっては、まるで運命のようにも思える。きっと、いまのクロードのも、以前のクロードも、そんな風には思わないだろうが。
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▼【作品集】
▽【連載中】
学院の魔女の日常的非日常
ミアという少女を中心に物語は徐々に進んでいくお話。
※最初のほうは読み難いかもしれません。
それなりに怖い話。
さっくり読める。
絶対少女議事録
少女と少女が出会い運命が動き出した結果、足を舐めるお話。
▽【完結済み】
一般人ですけどコスプレしてバイト感覚で魔法少女やってます
十一万字程度、三十三話
五人の魔法少女の物語。
最初から最後までコメディ。
四十二歳の冴えない男が、恋をして、愛を知る。
八万字程度、四十一話
田沼という男が恋を知り、そしてやがて愛を知る。
竜狩り奇譚
八万字程度、十六話
見どころは、最後の竜戦。
幼馴染が俺以外の奴と同棲を始めていた
タイトルの通り。
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