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21(最終話)
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本当の事を話してもいいのか。
頭がおかしいと、思われないだろうか。
言葉が出ないままストールを巻く動きを一瞬だけ止めた私に目敏く気付いたマリオ殿下は「……そう」と短く返事を返すと、扉に向かって進めていた歩みを止めた。
「……キースは、それを知っているのかな?」
何も答えなかったのに、まるでマリオ殿下の中では私が異世界から来た事をすんなりと受け入れられているような問いだ。
少なくとも嘘や妄想だと罵られる事はないのだと思うと、私も少しだけほっとして彼の問いに小さく頷いた。
「なるほど。遽には信じられないけど、キースが納得しているのなら、そうなんだろうね……」
マリオ殿下は腕を組み考えるような素振りを見せながら、ポツリとそう溢した。
しかし、その真摯な表情は次第に歪んだ笑顔に変わり、ドス黒い空気を纏わせ始める。
「ふ、ふふふ……キースの奴め……。子供のことといい、ワカメちゃんのことといい、隠しちゃいけないことを隠していた自覚はあるのかな? それともただの馬鹿なのかな? いやもうどっちでもいーや、とにかく謝らせたい。今すぐ俺にごめんなさいって言わせたい」
めちゃくちゃ早口でローガンへの不満が吐かれている。綺麗な笑顔のままなのがより恐ろしい。
顔と発言が結びつかないから、まるで変なアテレコをされているようだ。
「マ、マリオ殿下……?」
「だって、本来なら子供も貴女も国を挙げて保護すべきだったんだよ。なのにあの狼、何にも言わないからほんとムカつくよね。今更君の事を親父にどう報告しろっていうのさ。絶対怒られるし、しかも怒られるのはキースじゃなくて俺なんだから理不尽すぎる。それとも何? 俺が気づかなかったのが悪いのかな? いや気付かないでしょ、異世界なんて前例が100年以上前だし、それさえ本当かどうかも疑わしい。それにワカメちゃんの情報はずっとキースに隠されていて、未だに君が何者なのかを調べる隙を与えてくれないんだから」
「す、すみません……」
「ああ、キースに苛ついてるだけだから君が謝る事じゃないよ。けれど、君は素直で好ましいね。自分より能力が高い者がいないと謝ることなんてなくなってくるのは私も同じなんだけれど、謝れない大人ってかっこ悪いもんねぇ。でもこれからは新しい序列が出来たからワカメちゃんが最強だよ。キースは君には逆らえない。だから私がキースに謝って欲しい時は君にお願いするねぇ……ってことで、今すぐそこの狼に俺に謝るように言ってもらっていいかな?」
「なぜ、アリサがいる? マリオと何を話していた?」
「⁉︎」
いつの間にか、私の背後にローガンが立っていた。
声を掛けられるまで気配さえ感じなかったから、突如現れた事に驚いて肩を揺らした。
ローガンは遠征先からそのまま転移してきたのか、濃紺の外套を羽織ったままで銀髪碧眼の一般的な狼獣人の色合いに変化させている。
なんだか出会った頃を思い出すような懐かしい姿に一瞬見惚れていると、ガッシリと私の両肩を掴んで詰め寄ってきた。
「アリサがどうしてここにいる! 俺は何も聞いてないぞ!」
「それはこっちのセリフだよ。仕事ほっぽり出して帰ってくるんじゃないよ」
呆れたようにマリオ殿下がローガンを諫めるが、彼の視線の先は私しか見えていないかのように真っ直ぐに固定されたままだ。
マリオ殿下が隣で「無視しないで⁉︎」と激しく抗議している。
ローガンはありふれた狼獣人の色合いになっているとはいえ、顔面は変わらないから見詰められると美の圧が強い。
反射的についっと目を晒すと、それが更に怪しまれる要因となってしまった。
「アリサが王都に居るのがわかって急いで戻ってきたら、マリオと居るとはどういう事なんだ? まさかマリオと浮」
「思ったよりも早くバレたなぁ」
「……」
「ロ、ローガン‼︎ 違うからっ‼︎ その目やめて⁉︎」
ローガンがマリオ殿下を視線だけで射殺さんとばかりに睨みつけた。
ミドさんを半殺しにしかけたあの目と同じで、慌てて彼の外套を掴む。
「何が違うんだ。昨日まではモフルンに居たのに、どうして急に王都に? いくら王都も治安が良いと言ってもモフルンほど平和ではないんだ、ひとりじゃ危ないだろう。そういえば、以前も何度か俺が不在の時に王都に来ていたな? 短時間だったが、何かあるのか?」
「ワカメちゃん、ストーカーがまた君の動向を監視しているみたいだよ」
「……ローガン、まだその魔法使ってるの?」
「今は1日3回程度だ。ほとんど使っていない」
「1日3回⁉︎」
思った以上に多かった。
むしろ減らしてる風に言われると、以前がどうだったのか気になってしまうじゃないか。
「そんなに私は信用がないの⁉︎ 私が王都に来れるようにもう術は解くって言ってたじゃない!」
「解いただろう……一部だが。俺はアリサが心配なだけだ。また拐われたらどうする。それに、やましい事がないのなら別に構わないだろう。それとも何かあるのか? やっぱりマリオと」
「もう、しつこい‼︎」
「あはは‼︎ あははは‼︎ 一度捨てられかけてるから余裕がないんだねぇ。ざまあ‼︎」
マリオ殿下はローガンの切羽詰まる様子に溜飲が下がったのか、弾かれたように笑い出した。
ローガンはそんなマリオ殿下に少しだけ目を眇めたけれど、相変わらず無視している。
この二人は仲が良いのか悪いのか……。
「あーあ、もうこうなるとキースは言うこと聞かないから事情聴取は後日するとして、俺はもう退散しようかな」
「え!」
「ワカメちゃん、こんな面倒くさい狼に捕まっちゃってこれから大変だよー? ほんと同情する。でも、誰にもできないキースの手綱を握っているのは君だから、君がキースを捕まえてるって言った方が正しいのかな? まあ、しっかり頼んだよ」
「ええ⁉︎」
ちょ……、その面倒くさい状態のローガンを置いていかないでくださいー‼︎
マリオ殿下は笑いが収まると、丸投げ発言を残して大変良い笑顔で去っていってしまった。
縋るような視線をマリオ殿下の出て行った扉に向けていると、不機嫌なローガンの掌に両頬を挟まれ、強引に顔を背けさせられた。
「マリオの方ばかり見るな。目で追うな。あんなものは見る価値もない」
「な……っ、さすがに不敬で処罰されるよ!」
「やれるもんならやってみればいい。返り討ちにするだけだ」
「変な闘志燃やさないで! 何の対抗心⁉︎」
今のローガンに絵本や物語に描かれている品行方正な英雄キースの面影は皆無である。
「俺の知らない間にマリオとふたりでいるなんて……好きなわけじゃないよな? アリサは俺を愛しているんだよな?」
「もう、まだそんな事言ってるの?」
「大事なことだろう……」
そんな捨てられた子犬のような目で見ないで。
この部屋の扉は開かれていたし、廊下にはマリオ殿下の護衛の方もいた。
話していただけなのは明白なのに、何でこんなに必死なんだろうか。
……仕方のない人。
「……マリオ殿下にはお茶をご馳走になってただけだよ。あと、これから王都に来るときは必ずローガンに言うようにするから、それで許してくれる?」
「……ああ」
「だから、もうあまり変な魔法は使わないでね」
「変な魔法……」
ローガンは魔法についての返事はせずに、まだ少し不貞腐れながらも私を抱きしめ頬を寄せて甘えてくる。
まるで子供みたいだ。
私はこんな大きな身体の子を産んだ覚えはないんだけどなぁとため息を吐きながらも、その艶やかな髪を彼の気が済むまで黙って撫で続けた。
ところで、遠方のお仕事というのはちゃんと済ませてきたのだろうか……。
「アリサ……」
「なあに」
「子供達はどうした」
「オリエさんに預けてきたよ。今日はオリエさんの子供達が一緒に遊んでくれるんだって」
「……そうか。じゃあ今日は俺だけだな」
「そう、だね?」
なんだろう。
私をギュッと抱きしめる力が強まった。
嫌な予感がする。
「ち、ちょっと……ローガン?」
「……なんだ」
「なんで押し倒すの⁉︎」
「子供がいないからだ」
「意味がわからない」
「アリサは俺だけのものだと実感したい」
「ここ王宮だから‼︎ いや場所の問題じゃないけど‼︎」
「じゃあ結婚してくれ」
「は?」
「俺の妻となってくれるなら、今は離れてやってもいい」
だいぶ上からの、ドサクサ紛れのプロポーズ……だ。
ローガンの顔は至って真面目で、思わずその顔をじっと見返してしまう。
「王都に来るのはまだ先でも良いし、働きたいなら働いてもいい。全部、お前の好きにしたらいい。でも、頼むから、俺と結婚してくれないか」
「……」
「あの時お前を置いていった事を、今も死ぬほど後悔している。結婚くらいで何も変わらないと思っていたが、もうアリサを正式に妻として国中に俺のものだと示さないと落ち着かない」
国中っ⁉︎
ただでさえ美形のローガンの隣は気が引ける時があるのに、私の普通顔が国中に晒されるのは如何なものか。
正直かなり荷が重い。
「えっと、それは、ちょっと恥ずかしい、かも……」
「恥ずかしい⁉︎」
「ふふっ、……でも、ね」
出会った頃の彼は、まさに完全無欠の人だと思っていた。
でも、実は全然そんな事はなくて、子供達には懐かれないし、私に怒られたら不貞腐れるし、すごく子供っぽい時もあって、わがままで自分勝手で、いつも少しだけ言葉が足りなくて、何を考えているのかわからないのに耳と尻尾だけは正直で。
番なんて言われてもよくわからないけど、ローガンは私がいないと生きていけないと言う。
大袈裟なんだから。
ほんとうに、困った人。
でも、そんな彼だから、私も。
『英雄キースじゃなくて、ローガンとなら結婚してもいいよ』
って、そろそろ伝えてあげようかなって、思ってる。
頭がおかしいと、思われないだろうか。
言葉が出ないままストールを巻く動きを一瞬だけ止めた私に目敏く気付いたマリオ殿下は「……そう」と短く返事を返すと、扉に向かって進めていた歩みを止めた。
「……キースは、それを知っているのかな?」
何も答えなかったのに、まるでマリオ殿下の中では私が異世界から来た事をすんなりと受け入れられているような問いだ。
少なくとも嘘や妄想だと罵られる事はないのだと思うと、私も少しだけほっとして彼の問いに小さく頷いた。
「なるほど。遽には信じられないけど、キースが納得しているのなら、そうなんだろうね……」
マリオ殿下は腕を組み考えるような素振りを見せながら、ポツリとそう溢した。
しかし、その真摯な表情は次第に歪んだ笑顔に変わり、ドス黒い空気を纏わせ始める。
「ふ、ふふふ……キースの奴め……。子供のことといい、ワカメちゃんのことといい、隠しちゃいけないことを隠していた自覚はあるのかな? それともただの馬鹿なのかな? いやもうどっちでもいーや、とにかく謝らせたい。今すぐ俺にごめんなさいって言わせたい」
めちゃくちゃ早口でローガンへの不満が吐かれている。綺麗な笑顔のままなのがより恐ろしい。
顔と発言が結びつかないから、まるで変なアテレコをされているようだ。
「マ、マリオ殿下……?」
「だって、本来なら子供も貴女も国を挙げて保護すべきだったんだよ。なのにあの狼、何にも言わないからほんとムカつくよね。今更君の事を親父にどう報告しろっていうのさ。絶対怒られるし、しかも怒られるのはキースじゃなくて俺なんだから理不尽すぎる。それとも何? 俺が気づかなかったのが悪いのかな? いや気付かないでしょ、異世界なんて前例が100年以上前だし、それさえ本当かどうかも疑わしい。それにワカメちゃんの情報はずっとキースに隠されていて、未だに君が何者なのかを調べる隙を与えてくれないんだから」
「す、すみません……」
「ああ、キースに苛ついてるだけだから君が謝る事じゃないよ。けれど、君は素直で好ましいね。自分より能力が高い者がいないと謝ることなんてなくなってくるのは私も同じなんだけれど、謝れない大人ってかっこ悪いもんねぇ。でもこれからは新しい序列が出来たからワカメちゃんが最強だよ。キースは君には逆らえない。だから私がキースに謝って欲しい時は君にお願いするねぇ……ってことで、今すぐそこの狼に俺に謝るように言ってもらっていいかな?」
「なぜ、アリサがいる? マリオと何を話していた?」
「⁉︎」
いつの間にか、私の背後にローガンが立っていた。
声を掛けられるまで気配さえ感じなかったから、突如現れた事に驚いて肩を揺らした。
ローガンは遠征先からそのまま転移してきたのか、濃紺の外套を羽織ったままで銀髪碧眼の一般的な狼獣人の色合いに変化させている。
なんだか出会った頃を思い出すような懐かしい姿に一瞬見惚れていると、ガッシリと私の両肩を掴んで詰め寄ってきた。
「アリサがどうしてここにいる! 俺は何も聞いてないぞ!」
「それはこっちのセリフだよ。仕事ほっぽり出して帰ってくるんじゃないよ」
呆れたようにマリオ殿下がローガンを諫めるが、彼の視線の先は私しか見えていないかのように真っ直ぐに固定されたままだ。
マリオ殿下が隣で「無視しないで⁉︎」と激しく抗議している。
ローガンはありふれた狼獣人の色合いになっているとはいえ、顔面は変わらないから見詰められると美の圧が強い。
反射的についっと目を晒すと、それが更に怪しまれる要因となってしまった。
「アリサが王都に居るのがわかって急いで戻ってきたら、マリオと居るとはどういう事なんだ? まさかマリオと浮」
「思ったよりも早くバレたなぁ」
「……」
「ロ、ローガン‼︎ 違うからっ‼︎ その目やめて⁉︎」
ローガンがマリオ殿下を視線だけで射殺さんとばかりに睨みつけた。
ミドさんを半殺しにしかけたあの目と同じで、慌てて彼の外套を掴む。
「何が違うんだ。昨日まではモフルンに居たのに、どうして急に王都に? いくら王都も治安が良いと言ってもモフルンほど平和ではないんだ、ひとりじゃ危ないだろう。そういえば、以前も何度か俺が不在の時に王都に来ていたな? 短時間だったが、何かあるのか?」
「ワカメちゃん、ストーカーがまた君の動向を監視しているみたいだよ」
「……ローガン、まだその魔法使ってるの?」
「今は1日3回程度だ。ほとんど使っていない」
「1日3回⁉︎」
思った以上に多かった。
むしろ減らしてる風に言われると、以前がどうだったのか気になってしまうじゃないか。
「そんなに私は信用がないの⁉︎ 私が王都に来れるようにもう術は解くって言ってたじゃない!」
「解いただろう……一部だが。俺はアリサが心配なだけだ。また拐われたらどうする。それに、やましい事がないのなら別に構わないだろう。それとも何かあるのか? やっぱりマリオと」
「もう、しつこい‼︎」
「あはは‼︎ あははは‼︎ 一度捨てられかけてるから余裕がないんだねぇ。ざまあ‼︎」
マリオ殿下はローガンの切羽詰まる様子に溜飲が下がったのか、弾かれたように笑い出した。
ローガンはそんなマリオ殿下に少しだけ目を眇めたけれど、相変わらず無視している。
この二人は仲が良いのか悪いのか……。
「あーあ、もうこうなるとキースは言うこと聞かないから事情聴取は後日するとして、俺はもう退散しようかな」
「え!」
「ワカメちゃん、こんな面倒くさい狼に捕まっちゃってこれから大変だよー? ほんと同情する。でも、誰にもできないキースの手綱を握っているのは君だから、君がキースを捕まえてるって言った方が正しいのかな? まあ、しっかり頼んだよ」
「ええ⁉︎」
ちょ……、その面倒くさい状態のローガンを置いていかないでくださいー‼︎
マリオ殿下は笑いが収まると、丸投げ発言を残して大変良い笑顔で去っていってしまった。
縋るような視線をマリオ殿下の出て行った扉に向けていると、不機嫌なローガンの掌に両頬を挟まれ、強引に顔を背けさせられた。
「マリオの方ばかり見るな。目で追うな。あんなものは見る価値もない」
「な……っ、さすがに不敬で処罰されるよ!」
「やれるもんならやってみればいい。返り討ちにするだけだ」
「変な闘志燃やさないで! 何の対抗心⁉︎」
今のローガンに絵本や物語に描かれている品行方正な英雄キースの面影は皆無である。
「俺の知らない間にマリオとふたりでいるなんて……好きなわけじゃないよな? アリサは俺を愛しているんだよな?」
「もう、まだそんな事言ってるの?」
「大事なことだろう……」
そんな捨てられた子犬のような目で見ないで。
この部屋の扉は開かれていたし、廊下にはマリオ殿下の護衛の方もいた。
話していただけなのは明白なのに、何でこんなに必死なんだろうか。
……仕方のない人。
「……マリオ殿下にはお茶をご馳走になってただけだよ。あと、これから王都に来るときは必ずローガンに言うようにするから、それで許してくれる?」
「……ああ」
「だから、もうあまり変な魔法は使わないでね」
「変な魔法……」
ローガンは魔法についての返事はせずに、まだ少し不貞腐れながらも私を抱きしめ頬を寄せて甘えてくる。
まるで子供みたいだ。
私はこんな大きな身体の子を産んだ覚えはないんだけどなぁとため息を吐きながらも、その艶やかな髪を彼の気が済むまで黙って撫で続けた。
ところで、遠方のお仕事というのはちゃんと済ませてきたのだろうか……。
「アリサ……」
「なあに」
「子供達はどうした」
「オリエさんに預けてきたよ。今日はオリエさんの子供達が一緒に遊んでくれるんだって」
「……そうか。じゃあ今日は俺だけだな」
「そう、だね?」
なんだろう。
私をギュッと抱きしめる力が強まった。
嫌な予感がする。
「ち、ちょっと……ローガン?」
「……なんだ」
「なんで押し倒すの⁉︎」
「子供がいないからだ」
「意味がわからない」
「アリサは俺だけのものだと実感したい」
「ここ王宮だから‼︎ いや場所の問題じゃないけど‼︎」
「じゃあ結婚してくれ」
「は?」
「俺の妻となってくれるなら、今は離れてやってもいい」
だいぶ上からの、ドサクサ紛れのプロポーズ……だ。
ローガンの顔は至って真面目で、思わずその顔をじっと見返してしまう。
「王都に来るのはまだ先でも良いし、働きたいなら働いてもいい。全部、お前の好きにしたらいい。でも、頼むから、俺と結婚してくれないか」
「……」
「あの時お前を置いていった事を、今も死ぬほど後悔している。結婚くらいで何も変わらないと思っていたが、もうアリサを正式に妻として国中に俺のものだと示さないと落ち着かない」
国中っ⁉︎
ただでさえ美形のローガンの隣は気が引ける時があるのに、私の普通顔が国中に晒されるのは如何なものか。
正直かなり荷が重い。
「えっと、それは、ちょっと恥ずかしい、かも……」
「恥ずかしい⁉︎」
「ふふっ、……でも、ね」
出会った頃の彼は、まさに完全無欠の人だと思っていた。
でも、実は全然そんな事はなくて、子供達には懐かれないし、私に怒られたら不貞腐れるし、すごく子供っぽい時もあって、わがままで自分勝手で、いつも少しだけ言葉が足りなくて、何を考えているのかわからないのに耳と尻尾だけは正直で。
番なんて言われてもよくわからないけど、ローガンは私がいないと生きていけないと言う。
大袈裟なんだから。
ほんとうに、困った人。
でも、そんな彼だから、私も。
『英雄キースじゃなくて、ローガンとなら結婚してもいいよ』
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