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第3章 祖母
大きな後悔
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「また、とか言ったらダメですよ秋山さん」と小声で言ったがしんとしている病室内ではその声は筒抜けだったため、あ、すみませんと苦笑しながら伊藤渚を見る。
「いえ、私も名古屋さんに、この悩みはその相談屋さんが対応する悩みと少し違うんじゃないですか、って言ったんですが」と伊藤渚は申し訳なさそうに言うので私まで申し訳ない気持ちになる。悪いのは名古屋さんであって伊藤さんではないですよ、とフォローした。
「ただ、源さんはあまり貯えがなくて、興信所とかに頼むほどの予算もないのは事実なんです。それを考慮して、名古屋さんが勧めてくれて」
名古屋さんはもしかすると相談屋を便利屋と間違えているのかもしれない。
「でも、探してくれってどうゆうことなんですか?」
「実は…」
「喧嘩したんだよ。15年も前にね」声はベットの方からした。
驚いて顔を向けると源文枝が目を開け、顔だけをこちらに向けていた。私たちを見る目は力強かった。
「源さん、おはようございます。体調、どうですか? 辛いところはありますか?」と伊藤渚はすぐに源文枝に近寄り声をかけた。
「辛いも何も、もうすく死ぬんだからそんなこと気にするんじゃないよ。それともあんたは、私がここが辛いと言ったら治してくれるのかい? 死ぬのが辛いと言ったら死なないで済むようにしてくれるのかい」弱々しい声ではあったがはっきりと耳に届く大きさで言い方には棘があった。
「それは、できません」と苦痛の表情で飯塚香は言った。その表情に嘘はないように見えた。
「ですが、苦痛を和らげることはできるんです。なのでいつでも辛いところは、言ってください」
「それじゃあ、私は歩けないのが辛いよ」源文枝にはありありと悲しみが浮かんだ。自分で歩けなくなることは、どれほどの絶望なのだろう。
「15年前に喧嘩した、とはどうゆうことだ?」秋山さんはそんな源文枝に遠慮もなく話題を相談の方に戻した。
「あんたらは、恵を見つけてくれるのかい?」鋭い目つきで源文枝が私と秋山さんを睨んだ。本当に余命が近づいている患者なのか、と思うほどその目には生命力があった。
「見つける約束は出来ないが、探す約束は出来る」
源文枝と秋山さんはお互いの目を真っ直ぐに見つめている。例によって秋山さんは何を考えているか分からないが源文枝の方は秋山さんを値踏みしているように伺えた。
「は」と源文枝は笑った、ようにも思えたしただ息を吐き出しただけのようにも思えた。
「まぁ、必ず見つけてみせます、と意気込んで結局見つけられもせずにこんな奴らに頼ったどこかの看護師よりは説得力はあるね」伊藤渚がばつの悪そうな顔をし俯いたので私はその看護師が伊藤渚のことだと気づいた。
「喧嘩したんだよ」と先ほども口にした言葉から源文枝は説明を始めた。歩けないのが辛いよと言った時よりも悲痛な表情だったのが印象的だった。
「私は恵を産んですぐに旦那と離婚したのさ。女手一つで恵を一人前に育て上げた。だから女が1人で子育てする辛さはよく分かってんだよ。それなのに恵は勝手にどこぞの男と子供を作って、挙げ句の果てには男に逃げられた。子供が産まれる前にね」源文枝はそこで1つ咳をした。その咳は源文枝の辛さや悲しさや後悔が体の中に抱え切れなくなり溢れ出したかのように思えた。すぐさま伊藤渚が源文枝の体調を心配しおとなしく寝ているように促しかけたがそれを気にする事もなく続きを話し始めた。
「どうしようもない娘だよ。片親の辛さはあの子だってよく分かってる筈なのにね。だから私はその時に言ったんだ。1人で産んで育てるのなんか許さない、堕ろせ、って。それを聞いたあの子は怒ることもしなかったね。普段から喧嘩をしてた親子だったけどその時のあの子は怒りもしなかった。ただ、悲しい顔をしただけで、次の日にはもう、家を出て行ったよ」それっきりだよ、と言った。
その言葉が含んでいる様々な感情は重さを伴って源文枝の口から発せられた瞬間に下の方へ落ちていった。
言葉を発するごとに少しづつ息が切れていき、横になっている源文枝にかけられた布団が弱々しく上下しているのを見て、ふいにこの人はあと数週間で終わる今年を越せるかも分からないのだ、と気づく。今確実にここにある源文枝という意思があと数週間でなくなる。
「源さん、あとは私が説明しておくので、これ以上は休んでいてください。体に悪いですから」伊藤渚のその言葉に源文枝はいい返さずに大人しくなった。やはり、辛いのだろう。体なのか、心なのか、両方なのか、どれなのかは私には分からなかった。
エレベータ前にある相談室に私たちは来た。相談室と言ってもなにかに区切られているわけではなくソファが何脚か並べられているだけだ。私たちの他に人はいなかった。
「源さん、大丈夫なんですか」と言ってから、大丈夫という言葉が相応しいのかどうか気になった。
「普段は、一度にあんなにたくさん話すのは稀で。余命が数週間から数日になると見当識障害、と言って時間や場所、人の感覚などがあやふやになる症状があって、源さんは最近少しですがその症状が見られていたんです。今日は、しっかりとしていたので驚きました」
「源恵とは喧嘩別れてそれっきりということだが、それでどう探すんだ?」と秋山さんが言った。秋山さんの声はこの病院という場所に馴染んでいる。生と死が混同している場所だからなのだろうか。
「それっきり、と言っても音信不通というわけではなかったんです」と伊藤渚は言いながらポケットから数通の手紙を取りだし私たちに渡した。
「恵さんが出て行っても、手紙のやり取りで関係は続いてたみたいです。だから、子供が産まれたことも、その成長の様子も、写真とかで源さんは知ったって言ってました」
「お互いの住んでいる場所は知っていたわけか」秋山さんの手には元は白かったと思われる茶色がかった手紙が握られていた。15年という歳月をその手紙は物語っているように見えた。
「それでも、会わなかったみたいです。一度も」
「頑固というかなんというか」と私は呆れる。
「でも、源さんは自分が入院してることや癌のことも、手紙に書かなかったんです。知らせても癌が治るわけじゃないって言って」頑固ですよね、と伊藤渚は苦笑する。
「不安もあったんだろうな」
「不安?」
「見舞いに来てくれるかどうかの不安だ」
あぁ、と声を漏らした。確かにそうだ。手紙のやり取りは続いていた、とは、逆に言えば15年間手紙でしかやりとりをしなかったということだ。源文枝が、娘は今更会いに来てくれるのか、と考えるのも無理はない。
「私も、そう思ったんですよ。だから、お見舞いに来てくれって手紙を書いたらどうかってなんとか説得したんです」そう言う伊藤渚の表情は、喧嘩をしてそれっきり、と言った源文枝と同じだった。大きな後悔を抱えた表情だ。その後悔の本当の意味を、私たちはまだ知らなかった。
「その返事は?」
その手紙が1番新しいものです、と伊藤渚が私が手に持っている手紙を指差し、その手紙が入っていたであろう封筒を渡してきた。封筒には、神奈川県小田原市、となっておりそれに続く住所も見知ったものだった。
「中身を見てもいいんですか?」
「はい」
『手紙読みました。早く言ってくれればよかったのに。そうしたら、もっと早くに行きましたよ。病気がなくても、きっと。親子ですね。お互い頑固です。洋介も今月で中学生にあがりました。すぐにでも行きたいけど、洋介を連れて行くので来週の連休初日にそちらに行きます。待っていてください。
追伸
封筒に写真を入れておきました。入学式で撮った写真です。制服姿の洋介をまだ見せていなかったので』
写真は入っていなかった。おそらく源文枝が大事に閉まっているのだろう。
「その手紙が来たのが、9ヶ月前です」
源恵とその息子は、連休になっても来なかった。手紙もそれ以上は来なくなったのだと言う。
「源さん、手紙を見てすごく喜んでたんですよ。もちろん、ああいう性格ですから最初は、なんてことない、みたいな感じだったんですけど、入ってた写真は大事そうにしっかりと閉まって」
「だが、源恵は来なかった」希望を断つかのように秋山さんが言った。それっきり、という言葉が頭に浮かんだ。
「私、この住所に行ったんです。でも、恵さんはいなくて。代わりに別の人が住んでました。大家さんに聞いても引越し先は知らないの一点張りで」
「結局は」と秋山さんは手紙を封筒に入れながら言った。
「手掛かりはほとんどなしか」
「いえ、私も名古屋さんに、この悩みはその相談屋さんが対応する悩みと少し違うんじゃないですか、って言ったんですが」と伊藤渚は申し訳なさそうに言うので私まで申し訳ない気持ちになる。悪いのは名古屋さんであって伊藤さんではないですよ、とフォローした。
「ただ、源さんはあまり貯えがなくて、興信所とかに頼むほどの予算もないのは事実なんです。それを考慮して、名古屋さんが勧めてくれて」
名古屋さんはもしかすると相談屋を便利屋と間違えているのかもしれない。
「でも、探してくれってどうゆうことなんですか?」
「実は…」
「喧嘩したんだよ。15年も前にね」声はベットの方からした。
驚いて顔を向けると源文枝が目を開け、顔だけをこちらに向けていた。私たちを見る目は力強かった。
「源さん、おはようございます。体調、どうですか? 辛いところはありますか?」と伊藤渚はすぐに源文枝に近寄り声をかけた。
「辛いも何も、もうすく死ぬんだからそんなこと気にするんじゃないよ。それともあんたは、私がここが辛いと言ったら治してくれるのかい? 死ぬのが辛いと言ったら死なないで済むようにしてくれるのかい」弱々しい声ではあったがはっきりと耳に届く大きさで言い方には棘があった。
「それは、できません」と苦痛の表情で飯塚香は言った。その表情に嘘はないように見えた。
「ですが、苦痛を和らげることはできるんです。なのでいつでも辛いところは、言ってください」
「それじゃあ、私は歩けないのが辛いよ」源文枝にはありありと悲しみが浮かんだ。自分で歩けなくなることは、どれほどの絶望なのだろう。
「15年前に喧嘩した、とはどうゆうことだ?」秋山さんはそんな源文枝に遠慮もなく話題を相談の方に戻した。
「あんたらは、恵を見つけてくれるのかい?」鋭い目つきで源文枝が私と秋山さんを睨んだ。本当に余命が近づいている患者なのか、と思うほどその目には生命力があった。
「見つける約束は出来ないが、探す約束は出来る」
源文枝と秋山さんはお互いの目を真っ直ぐに見つめている。例によって秋山さんは何を考えているか分からないが源文枝の方は秋山さんを値踏みしているように伺えた。
「は」と源文枝は笑った、ようにも思えたしただ息を吐き出しただけのようにも思えた。
「まぁ、必ず見つけてみせます、と意気込んで結局見つけられもせずにこんな奴らに頼ったどこかの看護師よりは説得力はあるね」伊藤渚がばつの悪そうな顔をし俯いたので私はその看護師が伊藤渚のことだと気づいた。
「喧嘩したんだよ」と先ほども口にした言葉から源文枝は説明を始めた。歩けないのが辛いよと言った時よりも悲痛な表情だったのが印象的だった。
「私は恵を産んですぐに旦那と離婚したのさ。女手一つで恵を一人前に育て上げた。だから女が1人で子育てする辛さはよく分かってんだよ。それなのに恵は勝手にどこぞの男と子供を作って、挙げ句の果てには男に逃げられた。子供が産まれる前にね」源文枝はそこで1つ咳をした。その咳は源文枝の辛さや悲しさや後悔が体の中に抱え切れなくなり溢れ出したかのように思えた。すぐさま伊藤渚が源文枝の体調を心配しおとなしく寝ているように促しかけたがそれを気にする事もなく続きを話し始めた。
「どうしようもない娘だよ。片親の辛さはあの子だってよく分かってる筈なのにね。だから私はその時に言ったんだ。1人で産んで育てるのなんか許さない、堕ろせ、って。それを聞いたあの子は怒ることもしなかったね。普段から喧嘩をしてた親子だったけどその時のあの子は怒りもしなかった。ただ、悲しい顔をしただけで、次の日にはもう、家を出て行ったよ」それっきりだよ、と言った。
その言葉が含んでいる様々な感情は重さを伴って源文枝の口から発せられた瞬間に下の方へ落ちていった。
言葉を発するごとに少しづつ息が切れていき、横になっている源文枝にかけられた布団が弱々しく上下しているのを見て、ふいにこの人はあと数週間で終わる今年を越せるかも分からないのだ、と気づく。今確実にここにある源文枝という意思があと数週間でなくなる。
「源さん、あとは私が説明しておくので、これ以上は休んでいてください。体に悪いですから」伊藤渚のその言葉に源文枝はいい返さずに大人しくなった。やはり、辛いのだろう。体なのか、心なのか、両方なのか、どれなのかは私には分からなかった。
エレベータ前にある相談室に私たちは来た。相談室と言ってもなにかに区切られているわけではなくソファが何脚か並べられているだけだ。私たちの他に人はいなかった。
「源さん、大丈夫なんですか」と言ってから、大丈夫という言葉が相応しいのかどうか気になった。
「普段は、一度にあんなにたくさん話すのは稀で。余命が数週間から数日になると見当識障害、と言って時間や場所、人の感覚などがあやふやになる症状があって、源さんは最近少しですがその症状が見られていたんです。今日は、しっかりとしていたので驚きました」
「源恵とは喧嘩別れてそれっきりということだが、それでどう探すんだ?」と秋山さんが言った。秋山さんの声はこの病院という場所に馴染んでいる。生と死が混同している場所だからなのだろうか。
「それっきり、と言っても音信不通というわけではなかったんです」と伊藤渚は言いながらポケットから数通の手紙を取りだし私たちに渡した。
「恵さんが出て行っても、手紙のやり取りで関係は続いてたみたいです。だから、子供が産まれたことも、その成長の様子も、写真とかで源さんは知ったって言ってました」
「お互いの住んでいる場所は知っていたわけか」秋山さんの手には元は白かったと思われる茶色がかった手紙が握られていた。15年という歳月をその手紙は物語っているように見えた。
「それでも、会わなかったみたいです。一度も」
「頑固というかなんというか」と私は呆れる。
「でも、源さんは自分が入院してることや癌のことも、手紙に書かなかったんです。知らせても癌が治るわけじゃないって言って」頑固ですよね、と伊藤渚は苦笑する。
「不安もあったんだろうな」
「不安?」
「見舞いに来てくれるかどうかの不安だ」
あぁ、と声を漏らした。確かにそうだ。手紙のやり取りは続いていた、とは、逆に言えば15年間手紙でしかやりとりをしなかったということだ。源文枝が、娘は今更会いに来てくれるのか、と考えるのも無理はない。
「私も、そう思ったんですよ。だから、お見舞いに来てくれって手紙を書いたらどうかってなんとか説得したんです」そう言う伊藤渚の表情は、喧嘩をしてそれっきり、と言った源文枝と同じだった。大きな後悔を抱えた表情だ。その後悔の本当の意味を、私たちはまだ知らなかった。
「その返事は?」
その手紙が1番新しいものです、と伊藤渚が私が手に持っている手紙を指差し、その手紙が入っていたであろう封筒を渡してきた。封筒には、神奈川県小田原市、となっておりそれに続く住所も見知ったものだった。
「中身を見てもいいんですか?」
「はい」
『手紙読みました。早く言ってくれればよかったのに。そうしたら、もっと早くに行きましたよ。病気がなくても、きっと。親子ですね。お互い頑固です。洋介も今月で中学生にあがりました。すぐにでも行きたいけど、洋介を連れて行くので来週の連休初日にそちらに行きます。待っていてください。
追伸
封筒に写真を入れておきました。入学式で撮った写真です。制服姿の洋介をまだ見せていなかったので』
写真は入っていなかった。おそらく源文枝が大事に閉まっているのだろう。
「その手紙が来たのが、9ヶ月前です」
源恵とその息子は、連休になっても来なかった。手紙もそれ以上は来なくなったのだと言う。
「源さん、手紙を見てすごく喜んでたんですよ。もちろん、ああいう性格ですから最初は、なんてことない、みたいな感じだったんですけど、入ってた写真は大事そうにしっかりと閉まって」
「だが、源恵は来なかった」希望を断つかのように秋山さんが言った。それっきり、という言葉が頭に浮かんだ。
「私、この住所に行ったんです。でも、恵さんはいなくて。代わりに別の人が住んでました。大家さんに聞いても引越し先は知らないの一点張りで」
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