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第4章 秋山の過去
繋がる事件
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『はい、こちら〇〇会社編集部』と男性の声がスマートフォンから聞こえてくる。
「もしもし、ちょっとお話をお聞きしたいんですけど」
『はい』と不信感が半分、期待が半分といったような声で返事が返ってくる。私が何か特ダネを提供してくれる、と期待しているのだろうか。
「3年前に起きたショッピングモール放火事件の被害者の秋山美香さんを取材された方のお話を聞きたいんですが」
明らかに向こうの空気が変わったと、スマートフォン越しで伝わった。
「おたく、どういった人」かなり曖昧とした聞き方だが、その声には警戒が滲んでいた。
「私、秋山美香さんの知り合いだったんですが、秋山さんが亡くなる前、まったく会うことができなくて。今になってそれが心残りで、それで調べているうちにそちらの会社の記者の方が秋山さんと取材を取れそうだった、と聞いてお話を聞いてみたかったんです」と咄嗟に嘘をついた。世間的には、その記者が秋山美香を脅し自殺させた、という情報は無いのだから私の嘘におかしなところはないはずだ。
少しの沈黙の後、『悪いけど無理だね』という言葉が返ってきた。
「そこをなんとか、お願いできませんか」
『無理だよ』
教えてくれないだろうな、とは思っていたが、こうもきっぱり断られるとは予想外だった。
ここで引こうと思ったが、ある考えが頭に浮かんだ。交換条件として、明美との交友関係を打ち明けてみたらどうだろうか。最近、少しだがニュースや雑誌を目にするがあの事件は未だに進展はない。だとすれば、私のこの情報を少しは欲しいのではないか、と思ったのだ。
「じゃあ、交換条件でどうですか?」
『はぁ?』と明らかに苛立ち始めた声が返ってくる。だかその声には、やはりどこか期待感が含まれているように感じる。職業柄、どんな些細な情報でも見逃すまいという姿勢からだろうか。
「少し前に、足柄山で男女の遺体が見つかった事件ありましたよね」
そう言うと相手は押し黙った。私が話の続きをするのを待っているようだった。
「それから行方不明になった明美…、宮本慎吾の恋人の緑川明美と私は親友なんです。いろいろとお話しできると思います」明美の情報を売るような真似はしたくなかったが、どうしても秋山美香の話を聞きたかった。それに、明美の話をする時に上手いこといけばまだ報道されていないような情報を聞き出せるかもしれない。
『ククク』とスマートフォンから笑い声が漏れてくる。馬鹿にされたような少し不快な笑い声だった。
「な、なにが可笑しいんですか?」
『おたく、俺をおちょくってんのか? それとも、本当に偶然あの記者とその事件が結びついたのか?』
相手の言っている意味がよくわからず、私は返事が出来ないでいた。
『あのね、こっちは秋山美香を取材した記者の話を聞くことはだめだ、なんか言ってないのよ』
「言ってましたよ」と反論する。
『無理だって言ったの。物理的に無理なんだよ』その声には笑いが含まれていた。
「もう、会社に勤めていないんですか? だったら、電話番号とかでも…」
『死んだよ』
「は?」
ククク、と、また笑みが漏れて聞こえてきた。
『だからその記者はもう死んだの』
「そんな、いつですか」
『おたく、本当に偶然なの?』と相手が驚いた声を上げる。
「なにがですか?」
『その記者の名前は宮本慎吾。おたくの親友だとか言ってた緑川明美の恋人で、足柄山で死体で見つかった奴だよ』
「もしもし、ちょっとお話をお聞きしたいんですけど」
『はい』と不信感が半分、期待が半分といったような声で返事が返ってくる。私が何か特ダネを提供してくれる、と期待しているのだろうか。
「3年前に起きたショッピングモール放火事件の被害者の秋山美香さんを取材された方のお話を聞きたいんですが」
明らかに向こうの空気が変わったと、スマートフォン越しで伝わった。
「おたく、どういった人」かなり曖昧とした聞き方だが、その声には警戒が滲んでいた。
「私、秋山美香さんの知り合いだったんですが、秋山さんが亡くなる前、まったく会うことができなくて。今になってそれが心残りで、それで調べているうちにそちらの会社の記者の方が秋山さんと取材を取れそうだった、と聞いてお話を聞いてみたかったんです」と咄嗟に嘘をついた。世間的には、その記者が秋山美香を脅し自殺させた、という情報は無いのだから私の嘘におかしなところはないはずだ。
少しの沈黙の後、『悪いけど無理だね』という言葉が返ってきた。
「そこをなんとか、お願いできませんか」
『無理だよ』
教えてくれないだろうな、とは思っていたが、こうもきっぱり断られるとは予想外だった。
ここで引こうと思ったが、ある考えが頭に浮かんだ。交換条件として、明美との交友関係を打ち明けてみたらどうだろうか。最近、少しだがニュースや雑誌を目にするがあの事件は未だに進展はない。だとすれば、私のこの情報を少しは欲しいのではないか、と思ったのだ。
「じゃあ、交換条件でどうですか?」
『はぁ?』と明らかに苛立ち始めた声が返ってくる。だかその声には、やはりどこか期待感が含まれているように感じる。職業柄、どんな些細な情報でも見逃すまいという姿勢からだろうか。
「少し前に、足柄山で男女の遺体が見つかった事件ありましたよね」
そう言うと相手は押し黙った。私が話の続きをするのを待っているようだった。
「それから行方不明になった明美…、宮本慎吾の恋人の緑川明美と私は親友なんです。いろいろとお話しできると思います」明美の情報を売るような真似はしたくなかったが、どうしても秋山美香の話を聞きたかった。それに、明美の話をする時に上手いこといけばまだ報道されていないような情報を聞き出せるかもしれない。
『ククク』とスマートフォンから笑い声が漏れてくる。馬鹿にされたような少し不快な笑い声だった。
「な、なにが可笑しいんですか?」
『おたく、俺をおちょくってんのか? それとも、本当に偶然あの記者とその事件が結びついたのか?』
相手の言っている意味がよくわからず、私は返事が出来ないでいた。
『あのね、こっちは秋山美香を取材した記者の話を聞くことはだめだ、なんか言ってないのよ』
「言ってましたよ」と反論する。
『無理だって言ったの。物理的に無理なんだよ』その声には笑いが含まれていた。
「もう、会社に勤めていないんですか? だったら、電話番号とかでも…」
『死んだよ』
「は?」
ククク、と、また笑みが漏れて聞こえてきた。
『だからその記者はもう死んだの』
「そんな、いつですか」
『おたく、本当に偶然なの?』と相手が驚いた声を上げる。
「なにがですか?」
『その記者の名前は宮本慎吾。おたくの親友だとか言ってた緑川明美の恋人で、足柄山で死体で見つかった奴だよ』
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