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第1章 俺の勘違い

第5話 体育

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その後、来斗と玲衣以外の何人かにも凜のことを聞いてみたが、凜のことを女子だと思ってる人は1人もいなかった。どうやら凜は本当に男で、それを知らなかったのは俺だけだったらしい。

3時間目は体育だった。中学に上がって初めての体育だから、今日は軽い運動をして身体を慣らすだけらしい。うちの中学校は指定のジャージでの登校が許されていたため、体育の度に体操服に着替える必要がなかった。着替えのときに凜が本当に男なのか自分の眼で見て確かめようと思っていたが、それは叶わず体育館へ直行するしかなかった。

準備体操をした後ドッジボールをすることになり、クラス全員、合計36人を12人ずつ3チームに分けて戦った。チームはくじ引きで割り振られ、俺と凜は同じチームになった。

試合が始まって数分、チームメイトが何人もボールに当たり、段々と外野の人数が増えてきた。内野には俺と凜を含めあと3人という状況だが、ここにきて俺にボールが集中して飛んでくるようになった。この3人の中では俺が一番弱いからだ。最初は難なく躱すことができていたが、途中で足を滑らせて反応が遅れてしまった。当然相手はそれを逃すはずもなく、俺めがけて全力でボールを投げてきた。
(しまった!この体勢じゃ躱せない!!)
そう思った瞬間、何かが俺の前に立ち塞がった。俺が当たりそうなのを見た凜がとっさに前に出てくれたのだ。一瞬のことだったが、俺はその光景に思わず見惚れてしまった。凜は難なくボールを取ると、何事もなかったかのように外野の味方に向かってボールを投げた。そこから外野の味方が内野の敵に向かってボールを投げたのだが、あと少しの所で敵に取られてしまった。そしてその敵のすぐ近くに凜がいたため、瞬時に標的となり至近距離からボールを投げられた。さすがの凜でも反応ができず、ボールは凜の腕に当たって斜め上へと跳ね返った。俺は咄嗟にそのボールを取ろうと走った。あと少しでボールが取れると思ったとき、視界の横から凜が飛び出してきた。凜も自分に当たったボールを取ろうとしていたのだ。そしてお互いが気づいたときには手遅れで、俺たちはそのままぶつかって鈍い音と共に倒れ込んだ。

先生「永月!常盤!大丈夫か??」

奏太「は、はい。大丈夫です....」

凜「....僕も大丈夫です。」

先生「そうか、それならいいけど....念のため2人とも保健室行ってきなさい。」

そして俺たちはそのまま2人で保健室へと向かうことになった。

6話へつづく
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