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第1章 学園編
第1話 電車に乗って
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ゴオォォと、電車がトンネルを通過する音で、目を覚ます。いつの間にか、眠ってしまっていたみたいだ。
電車に乗ると、どうもあの心地のよい揺れ、ガタンゴトンと規則正しい音で眠りの世界へと落とされてしまう。
……もう少し、眠ったままの方がよかったのかもしれない。
まだ、降りるべき駅を過ぎてしまっていないことへの安堵と、現実へと引き戻されたことへの憂鬱とで、複雑な心境だ。
憂鬱……そう、憂鬱なのだ。
僕は窓から見える景色を、頬杖をつきながら眺めた。
もの凄い勢いで遠ざかっていく風景。今流れているこの時間も、同じように早く過ぎ去ってしまえばいいのに。
ポケットから、一枚の紙切れを取り出す。それがなくなっていないことを確認して、もう一度丁寧にポケットへ入れ直した。
車掌の、アナウンスが次の駅名を言う。
降りなければ。いつまでも、夢の中にはいられない。
席を立ち、人の流れに沿って電車を降りる。そのまま逆らわず、立ち止まらず、改札を抜け街へと出る。
人の、後を歩いていくのは楽だ。なにも考えずに、ただついて歩くだけで目的地へと着くのだから。
そうやって、生きてきた。そしてそれは、これからも変わらないのだろう。
そう、思っていた。なのに……。
思わず、足を止めてしまう。あまりにも異様な光景に、目が離せなくなってしまった。
年端もいかない女の子が一人、ボロボロの紙を精一杯持ち上げて主張している。
黒を基調としたドレスに、白い肌が特徴的な端正な顔立ち。その青い瞳は、真夏の海をそのまま切り取ってきたかのようだ。
きっと、どこか裕福な貴族の子なのだろう。
そんな子が一人で、なぜこんなことをやっているのだろうか。
こんな……拾ってくださいだなんて書かれた紙を、掲げているだなんて。
「…………」
声をかけるような人は誰もいない。みな、足早に通り過ぎるばかりである。
それもそうか。こんな、目に見えて面倒くさそうな地雷、誰が好き好んで踏みに行くのかという話だ。
僕だって、そうだ。こんなことに時間を割いている暇はない。行かないと。だけど――。
「……ねぇ、君。迷子かな? お父さんかお母さんは?」
こんな小さな子を放って置いて行ったのであれば、きっとこの先ずっとどうなったのか、気になってモヤモヤしたまま日々を過ごすことになる。
そんな生活は嫌だったし、何よりもやっぱり、こんな幼子を一人のまま放置するだなんて、出来なかった。
ここで声をかけたことによって、この後の人生が大きく変わることになることを、この時の僕はまだ知らない。
電車に乗ると、どうもあの心地のよい揺れ、ガタンゴトンと規則正しい音で眠りの世界へと落とされてしまう。
……もう少し、眠ったままの方がよかったのかもしれない。
まだ、降りるべき駅を過ぎてしまっていないことへの安堵と、現実へと引き戻されたことへの憂鬱とで、複雑な心境だ。
憂鬱……そう、憂鬱なのだ。
僕は窓から見える景色を、頬杖をつきながら眺めた。
もの凄い勢いで遠ざかっていく風景。今流れているこの時間も、同じように早く過ぎ去ってしまえばいいのに。
ポケットから、一枚の紙切れを取り出す。それがなくなっていないことを確認して、もう一度丁寧にポケットへ入れ直した。
車掌の、アナウンスが次の駅名を言う。
降りなければ。いつまでも、夢の中にはいられない。
席を立ち、人の流れに沿って電車を降りる。そのまま逆らわず、立ち止まらず、改札を抜け街へと出る。
人の、後を歩いていくのは楽だ。なにも考えずに、ただついて歩くだけで目的地へと着くのだから。
そうやって、生きてきた。そしてそれは、これからも変わらないのだろう。
そう、思っていた。なのに……。
思わず、足を止めてしまう。あまりにも異様な光景に、目が離せなくなってしまった。
年端もいかない女の子が一人、ボロボロの紙を精一杯持ち上げて主張している。
黒を基調としたドレスに、白い肌が特徴的な端正な顔立ち。その青い瞳は、真夏の海をそのまま切り取ってきたかのようだ。
きっと、どこか裕福な貴族の子なのだろう。
そんな子が一人で、なぜこんなことをやっているのだろうか。
こんな……拾ってくださいだなんて書かれた紙を、掲げているだなんて。
「…………」
声をかけるような人は誰もいない。みな、足早に通り過ぎるばかりである。
それもそうか。こんな、目に見えて面倒くさそうな地雷、誰が好き好んで踏みに行くのかという話だ。
僕だって、そうだ。こんなことに時間を割いている暇はない。行かないと。だけど――。
「……ねぇ、君。迷子かな? お父さんかお母さんは?」
こんな小さな子を放って置いて行ったのであれば、きっとこの先ずっとどうなったのか、気になってモヤモヤしたまま日々を過ごすことになる。
そんな生活は嫌だったし、何よりもやっぱり、こんな幼子を一人のまま放置するだなんて、出来なかった。
ここで声をかけたことによって、この後の人生が大きく変わることになることを、この時の僕はまだ知らない。
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