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エピローグの向こう側

240 最終話

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 仕事を再開しようと執務室に戻るも、いまいち集中出来ないでいた。申請書やら企画書を見ても目が滑る。
「うーん。今日はリジェナントから手紙が来て、ディキタニアからイゼク王子が来て、トゥーリエからカナンさん……メセイルからも誰か来ないかなー」
「来そうですけどね」
 ラウロは書類の山を素早くさばいている。さすがだ。ここでノック音がしたので少し期待しながら返事をした。入って来たのは、
「オレだ~」
「ミケかあ」
 少しがっかり。ミケは部屋に入りながら視線で後ろを示した。
「なんだその反応は。オレだけじゃないぞ」
「あっ、ユリス!」
 渋い顔をしたユリスが入って来た。大きく息を吐いてから言う。
「外でうるさい女に会った……ああだこうだと……」
「オレにも散々言って来たぞ。男でもいいからドレスを着て見せて欲しいとかなんとか」
 カナンさんは強し。
 ユリスは仕事の話で来たというので少し話をした。国や国民のことを考えて発言する様は以前より随分と王子らしくなっている。ユリスが王様になる時が今から楽しみでもあった。
 一段落して部屋の中を見ると改めて思う。
「シルフィもハインツも元気にしてるかなあ」
 二人とも忙しそうに国を行き来しているので滅多に会えない。たまに手紙が送られてくるので無事なのは分かるけどたまには顔を見たかった。
「あの二人の居場所は分かりませんからね」
「そうなんだよねー。こっちから手紙送ろうにもどうしようもないし……ん?」
 おや? 全員で耳を澄ませた。どたどたと激しい足音が聞こえる。まさか、噂をすれば!? ドアが大きく開かれ人が飛び込んできた。私は目を見張る。
「えっ、ハインツ!」
「もー! エコの仕事場なんだから静かにしないと駄目だってば!」
「シルフィも!」
 喜んで駆け寄るとハインツが覆い被さってきた。あまりの勢いに倒れかける。
「エコさん久しぶりー!! 元気だった? 俺は元気だったー!」
「く、くるしい……!」
 強すぎる抱擁に骨が悲鳴を上げている。ハインツは慌てて離れると申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん、つい!」
「大丈夫、大丈夫。二人とも久しぶりだねー! シルフィもまた大きくなった? 立派になったねえ」
 身長ももう少しで抜かれてしまうかもしれない。シルフィは大人びた雰囲気で、ハインツを見ながら言った。
「外で偶然ハインツに会ったから一緒に来たんだ」
「レドは元気にしてる?」
「師匠は今家に戻ってる。落ち着いて調べたいことがあるみたい」
 シルフィは魔法の研究に勤しんでいるようだ。魔物との共存についても考えているらしい。他にも話したいことはたくさんある。
「みんな揃ったし、お互いの近況報告会をしよう! というわけで応接室に集合ね! ハインツは一緒に椅子運ぶの手伝ってー」
「うん!」
 一番端の部屋に以前使っていた応接セットがあるはずだ。部屋を出て廊下を歩きながらハインツと話をした。ハインツは少しだけ魔法を使えるようになったらしい。羨ましいことだ。
「いいなあ、私も使えるようにならないかなあ……」
「一人で色々出来ると思ってたけど、やっぱり助けられてばっかりだよ。でもその分、俺もたくさんの人を助けられるといいなって思ってる」
 風の噂でハインツの名前を聞く。何でも、小さな村や国の目の行き届かないような遠い地域の人を手助けしているそうだ。そのお陰で変わったんじゃないかと思うことが度々ある。例えば医療とか。この世界の人たちは魔力が第一なので、過疎地域の人たちに魔力を溜めた魔法石を配布するとか、そういう制度も出来つつあるところだ。
「お互い頑張ろうね」
「うん!」
 ハインツの笑顔に私も笑顔を返した。

 みんなの力で世界がより良くなっていく。私に出来ることは多くないけど、出来る範囲で出来ることをやっていきたい。

「えー! ハインツ! そんなに一度に持ったら大変だよ!」
「俺、力はあるから! 大丈夫!」
「わ、すごい。僕も持つー!」

「騒がしいな」
「騒がしいのは嫌いですか?」
「そうだな。だが、エコが元気ならそれでいい」
「まるで父親だなユリス……」
「ユリス様に子育てが出来るとは思えませんね」
「ラウロは正直すぎる」
「下手に隠されるよりはいい。何でも言え」
「さすがユリス様。心が広い」
「心が広いんだか鈍いだけなのか分かんねぇな」



 ―――それでは報告会を始めます!
 ぱちぱちと拍手が上がった。これまでの話とこれからの話をしよう。私たちはずっと続いていく。物語の先へと。


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