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村と魔物と泣き虫戦士
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ハインツさんには道中で作戦を説明して、目的の開けた場所へ辿り着いた。
私は囮をしつつシルフィの召喚のサポートをする。ハインツさんは私とシルフィの傍で待機することになった。何かあった時の保険のようなものだ。
ハインツさんは不格好に剣を構えた。
「お、俺、頑張ります!」
「お、う、うん。お願いします……?」
何を頑張るか分からないけど頑張って欲しい。私も頑張る。
「じゃあ外しますね」私は腕輪を外した。
地面に置かれたランプがぼんやり周囲を照らしているけれど遠くまでは見えない。私はシルフィから離れないようじっとしていた。
「……来るぞ」
ユリスが呟く。翼の音が聞こえ始めた。緊張感が高まる。怖い。いきなり後ろからきてワーッ、とかはないはずだけど、姿が見えないと嫌な想像をしてしまう。
「ち、ちち近付いてくる……! はあ、はあ、だ、だ、大丈夫、俺ならやれる俺なら」
ハインツさんが震える声で独り言を言っている。お陰で私は冷静になった。彼、大丈夫だろうか。私より心配だ。
翼の音だけでは距離感が掴めない。暗闇が蠢いている。私は目を凝らした。しかし私が見ていたのは暗闇の空間ではなく、巨大コウモリの体だった。初めて目の当たりにしたその大きさに血の気が引いた。優に三メートルはある。人一人攫うくらいは容易だろう。
コウモリは巨体を揺らしながら私の方を目指して飛んでくる。
「エコ、いくよ!」
シルフィの勇ましい声が聞こえて私は気を取り直した。シルフィの体をぎゅっと抱きしめる。
「いつでもいいよ!」
召喚の本が光る。魔力が持っていかれる感覚がして、シルフィは叫んだ。
「でっかい足!」
「足ー!」
私も一緒になって言うと、本から猫の手……もとい猫の足がぴょこっと出てきて、一瞬で巨大化した。コウモリにも負けないくらいの大きさだ。猫の爪と肉球が、蚊でも潰すように巨大コウモリを上から押し潰す。
「出来た! よっしゃー!」
「さすがシルフィ!」
猫の足が小さくなって本の中へ戻ると、すかさずラウロが巨大コウモリの片翼へと三又の槍を突き刺した。
「む。かなり固いですね。これは、長時間抑えておくのは難しい」
コウモリは少しもがいたものの大人しくしている。と、キィーンと耳鳴りのような音が響いた。超音波だろうか、コウモリが発したらしい。頭の中で響いてすごく痛い。私は呻いた。
視界がぐらつく。ただでさえ暗くて見えないのに目の前の景色が歪んで、自分が立っているのか座っているのかも分からない。痛みから逃げようと体が勝手に動く。
「痛い……きつい……」
「エコ、こっちだよ。僕にくっついて」
シルフィが手を引いてくれた。言われた通り手探りでくっつくと、シルフィは集中した様子でぶつぶつと呟き始めた。何かしてくれているのか、少し痛みがマシになる。
ユリスがコウモリへと近付いて行く。今の超音波にも動じていないのはさすがだ。そうして頭部へ向けて刃を振り下ろす……寸前にコウモリは私の方へ何かを飛ばした。気付いたシルフィがすかさず召喚の本を光らせる。そこへ、
「たっ、たあーっ!!」
ハインツさんが私とシルフィの前に立った。飛んできた物は彼の盾に弾かれ地面に落ちる。私もシルフィも予想外のことに呆けてしまった。
私は囮をしつつシルフィの召喚のサポートをする。ハインツさんは私とシルフィの傍で待機することになった。何かあった時の保険のようなものだ。
ハインツさんは不格好に剣を構えた。
「お、俺、頑張ります!」
「お、う、うん。お願いします……?」
何を頑張るか分からないけど頑張って欲しい。私も頑張る。
「じゃあ外しますね」私は腕輪を外した。
地面に置かれたランプがぼんやり周囲を照らしているけれど遠くまでは見えない。私はシルフィから離れないようじっとしていた。
「……来るぞ」
ユリスが呟く。翼の音が聞こえ始めた。緊張感が高まる。怖い。いきなり後ろからきてワーッ、とかはないはずだけど、姿が見えないと嫌な想像をしてしまう。
「ち、ちち近付いてくる……! はあ、はあ、だ、だ、大丈夫、俺ならやれる俺なら」
ハインツさんが震える声で独り言を言っている。お陰で私は冷静になった。彼、大丈夫だろうか。私より心配だ。
翼の音だけでは距離感が掴めない。暗闇が蠢いている。私は目を凝らした。しかし私が見ていたのは暗闇の空間ではなく、巨大コウモリの体だった。初めて目の当たりにしたその大きさに血の気が引いた。優に三メートルはある。人一人攫うくらいは容易だろう。
コウモリは巨体を揺らしながら私の方を目指して飛んでくる。
「エコ、いくよ!」
シルフィの勇ましい声が聞こえて私は気を取り直した。シルフィの体をぎゅっと抱きしめる。
「いつでもいいよ!」
召喚の本が光る。魔力が持っていかれる感覚がして、シルフィは叫んだ。
「でっかい足!」
「足ー!」
私も一緒になって言うと、本から猫の手……もとい猫の足がぴょこっと出てきて、一瞬で巨大化した。コウモリにも負けないくらいの大きさだ。猫の爪と肉球が、蚊でも潰すように巨大コウモリを上から押し潰す。
「出来た! よっしゃー!」
「さすがシルフィ!」
猫の足が小さくなって本の中へ戻ると、すかさずラウロが巨大コウモリの片翼へと三又の槍を突き刺した。
「む。かなり固いですね。これは、長時間抑えておくのは難しい」
コウモリは少しもがいたものの大人しくしている。と、キィーンと耳鳴りのような音が響いた。超音波だろうか、コウモリが発したらしい。頭の中で響いてすごく痛い。私は呻いた。
視界がぐらつく。ただでさえ暗くて見えないのに目の前の景色が歪んで、自分が立っているのか座っているのかも分からない。痛みから逃げようと体が勝手に動く。
「痛い……きつい……」
「エコ、こっちだよ。僕にくっついて」
シルフィが手を引いてくれた。言われた通り手探りでくっつくと、シルフィは集中した様子でぶつぶつと呟き始めた。何かしてくれているのか、少し痛みがマシになる。
ユリスがコウモリへと近付いて行く。今の超音波にも動じていないのはさすがだ。そうして頭部へ向けて刃を振り下ろす……寸前にコウモリは私の方へ何かを飛ばした。気付いたシルフィがすかさず召喚の本を光らせる。そこへ、
「たっ、たあーっ!!」
ハインツさんが私とシルフィの前に立った。飛んできた物は彼の盾に弾かれ地面に落ちる。私もシルフィも予想外のことに呆けてしまった。
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