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「シェナ! 無事か! 意識は!?」
「う、ゴホッ……フレイド様……」

 フレイドはすぐに剣を捨て、シェナを助け起こした。シェナは苦しそうに呼吸を繰り返した後、首を振ってフレイドの体を押し返す。

「フレイド様、私から離れて、ください。私に近付くと不幸になります」
「そんなわけないだろう」
「リーゼロッテ様も、テオも、みんな優しくて良い人たちなのに、私の所為で、私の所為で……私がいるから悪いんです!!」
「考え過ぎだ。君は……」
「シェナ!!」

 呼びながら駆けてきたのはテオだった。シェナとフレイドを見下ろして、眉を顰める。

「またお前か。フレイド、お前がシェナに何かしたんだろ」
「違うよ。ねえテオ、もういいの。私のことは放って置いて。フレイド様も……。私がいるから全部悪いの、ごめんねテオ、私の所為でテオが不幸になっちゃった」
「何言ってるんだよシェナ……? ああそうか、そこの男が変なことを言ったんだな。気にしなくていい。そいつの言うことは全部デタラメだから……」

 テオが近付こうとするのをフレイドは手で制した。テオは反射的に足を止め訝しげな顔をする。

「テオ、シェナ、二人とも落ち着くんだ。冷静になれ」
「はあ? お前に僕たちの何が分かるって言うんだよ。いいからシェナから離れろよ」
「私から離れてください! テオも、フレイド様も、もう私のことは放って置いて!!」

 立ち上がろうとするシェナの両肩をフレイドが掴んで止めた。顔を覗き込んで、真っ直ぐ目を見つめる。シェナは息を呑んだ。

「シェナ、私の目を見て。ゆっくり深呼吸をするんだ」
「触るなよ、勝手に、触るな……! あああっ! 僕のシェナに触るなよぉっ!!」

 テオは駆け出した。手には抜き身のナイフが握られている。

「シェナッ!! これを使って、早く死になさい! 命令よ!!」

 リーゼロッテが叫んで寄越したのは、先ほどフレイドが捨てた剣だった。シェナは迷いなく剣を取ると自分の首筋に当てる。

「リーゼロッテ様、ご、ごめんなさい……! 私、最後くらいはちゃんと……」

 恐怖は少し。しかしシェナは躊躇わなかった。


 ――生きているだけで誰かを不幸にする私を、終わらせよう。


 足音が迫る、心臓の音が聞こえる。お終いだよ私。次の人生は要らない。私はこれきりで、もう――。

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