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伯爵令息視点5
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「あなた方が仰っている事の意味が全く分かりませんわ。ルフナー様はあなた方とは比べ物にならない程素敵な方ですの。大柄で筋肉質な体躯は頼りがいがあって素敵ですし、お顔だって少し強面な所はありますが笑顔は可愛くてずっと側で見ていたいと思う程魅力的ですの。性格だって、明るく素朴で思いやりがあって優しくて、ルフナー様は将来きっと素敵な旦那様になられますわ。あなた方とは天と地程の差がありますの。分かりましたら、もう私に声をかけないで下さいな。」
彼女は怒りを滲ませた声で彼女を囲んでいた令息達にそう言いきると、くるりと向きを変え歩き出そうとした。
その向きを変えた方向は俺のいた方向で、そこでようやく俺がいた事に気づいたようで俺と目が合うと顔を真っ赤にさせて固まってしまった。
俺には話の内容が分からず、何も言えず動けないでいた。
しかし、暫く固まっていた彼女だが、はっと我にかえったのか、慌てた様子で俺に話しかけてきた。
「ルフナー様!どこから聞いていらっしゃいましたの?!」
「申し訳ありません。立ち聞きするつもりはなかったんです。そこの令息達に、彼等の言っている意味が分からないと言っていた所から聞いていました。」
すると彼女はただでさえ真っ赤な顔を更に真っ赤にさせて、
「も、申し訳ありません!一度しか話した事のないルフナー様のことを勝手に話してしまい、さぞご不快に思われた事でしょう!けれど、あのように思っていた事は本当ですの!ルフナー様が魅力的であると思い、感情が昂りついあのように話してしまいましたの!私のことを気持ち悪いと思われるとは思いますが、どうか、嫌わないで下さいまし!」
と言われてしまった。
俺の頭の中では、彼女が令息達とした話の内容も分からずかなり混乱していたが、彼女が俺の事を魅力的だと言ってくれている事だけは理解できた。
そんな夢のような事があってもいいのかと思ったが、混乱した頭の中はただただ喜びの感情が溢れていた。
だからだろう。俺はあろうことか彼女の前に跪き、
「嫌うなんてとんでもないことです。フィスター様にそのように思っていただけて気持ち悪いなどと思う事はあり得ません。寧ろ、これ以上の喜びはないでしょう。私の方こそ、フィスター様の事をとても魅力的な女性だと思っているのです。フィスター様より身分も低く、田舎貴族の私ですが、フィスター様さえよければ、私と結婚して頂けないでしょうか。」
と求婚してしまった。
言ってしまってから、俺は酷く後悔した。いや、後悔はしていないか。
しかし、もう少し順序があったのではないだろうか。
彼女が俺の事を魅力的に思ってくれていたとしてもそれは恋愛的な意味ではなかっただろう。その気持ちが少しでも恋愛的な気持ちになるよう努力し、そこからやっと婚約の打診をして、了解を得てからお付き合いをして、やっと求婚できるのだろう。
その色々な間をすっ飛ばして俺は求婚してしまったのだ。しかも、学院の中庭で見知らぬ令息達の前で。
はっきり言って、ムードも何もあったものじゃない。むしろ、マイナスの要素しか思い浮かばない。何と滑稽な求婚であろうか。
しかし、言いたくなってしまったのは事実であり、言ってしまったものは取り消せない。
もうどうとでもなれ!と俺の頭の中は大混乱状態だった。
しかし、盛大に振られると思った俺の予想に反して彼女は声を震わせながら、
「ほ、本当ですか?ルフナー様!こんな私をお嫁さんにして下さるのですか?」
「本当です。私はフィスター様、いえ、エレーミア様と結婚したいのです。」
「ルフナー様、もう取り消せませんわよ?私、絶対にルフナー様と結婚いたしますわ!後からやはり嫌だと仰っても、絶対に取り消しませんわよ?絶対ですわよ!」
と言ってくれた。
俺は信じられないくらいに嬉しくて夢じゃないかと思った。
そして、これが夢ではないのだと確認したくて、
「エミーリア様、抱きしめさせてもらってもよろしいでしょうか。」
「も、もちろんですわ、未来の旦那様。」
と頬を赤らめながらも優しく微笑んでくれた彼女を、出来る限り優しく抱きしめた。
初めて触れた彼女は驚く程小柄でふわふわしていい匂いがした。
彼女は怒りを滲ませた声で彼女を囲んでいた令息達にそう言いきると、くるりと向きを変え歩き出そうとした。
その向きを変えた方向は俺のいた方向で、そこでようやく俺がいた事に気づいたようで俺と目が合うと顔を真っ赤にさせて固まってしまった。
俺には話の内容が分からず、何も言えず動けないでいた。
しかし、暫く固まっていた彼女だが、はっと我にかえったのか、慌てた様子で俺に話しかけてきた。
「ルフナー様!どこから聞いていらっしゃいましたの?!」
「申し訳ありません。立ち聞きするつもりはなかったんです。そこの令息達に、彼等の言っている意味が分からないと言っていた所から聞いていました。」
すると彼女はただでさえ真っ赤な顔を更に真っ赤にさせて、
「も、申し訳ありません!一度しか話した事のないルフナー様のことを勝手に話してしまい、さぞご不快に思われた事でしょう!けれど、あのように思っていた事は本当ですの!ルフナー様が魅力的であると思い、感情が昂りついあのように話してしまいましたの!私のことを気持ち悪いと思われるとは思いますが、どうか、嫌わないで下さいまし!」
と言われてしまった。
俺の頭の中では、彼女が令息達とした話の内容も分からずかなり混乱していたが、彼女が俺の事を魅力的だと言ってくれている事だけは理解できた。
そんな夢のような事があってもいいのかと思ったが、混乱した頭の中はただただ喜びの感情が溢れていた。
だからだろう。俺はあろうことか彼女の前に跪き、
「嫌うなんてとんでもないことです。フィスター様にそのように思っていただけて気持ち悪いなどと思う事はあり得ません。寧ろ、これ以上の喜びはないでしょう。私の方こそ、フィスター様の事をとても魅力的な女性だと思っているのです。フィスター様より身分も低く、田舎貴族の私ですが、フィスター様さえよければ、私と結婚して頂けないでしょうか。」
と求婚してしまった。
言ってしまってから、俺は酷く後悔した。いや、後悔はしていないか。
しかし、もう少し順序があったのではないだろうか。
彼女が俺の事を魅力的に思ってくれていたとしてもそれは恋愛的な意味ではなかっただろう。その気持ちが少しでも恋愛的な気持ちになるよう努力し、そこからやっと婚約の打診をして、了解を得てからお付き合いをして、やっと求婚できるのだろう。
その色々な間をすっ飛ばして俺は求婚してしまったのだ。しかも、学院の中庭で見知らぬ令息達の前で。
はっきり言って、ムードも何もあったものじゃない。むしろ、マイナスの要素しか思い浮かばない。何と滑稽な求婚であろうか。
しかし、言いたくなってしまったのは事実であり、言ってしまったものは取り消せない。
もうどうとでもなれ!と俺の頭の中は大混乱状態だった。
しかし、盛大に振られると思った俺の予想に反して彼女は声を震わせながら、
「ほ、本当ですか?ルフナー様!こんな私をお嫁さんにして下さるのですか?」
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「ルフナー様、もう取り消せませんわよ?私、絶対にルフナー様と結婚いたしますわ!後からやはり嫌だと仰っても、絶対に取り消しませんわよ?絶対ですわよ!」
と言ってくれた。
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そして、これが夢ではないのだと確認したくて、
「エミーリア様、抱きしめさせてもらってもよろしいでしょうか。」
「も、もちろんですわ、未来の旦那様。」
と頬を赤らめながらも優しく微笑んでくれた彼女を、出来る限り優しく抱きしめた。
初めて触れた彼女は驚く程小柄でふわふわしていい匂いがした。
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