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新人の独り立ち
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私が中途採用で新しい会社に入社して3ヵ月が経過した。
この会社の新人は3ヵ月が試用期間でその間は教育係が付く規則となっている。
例外も無く、私にも教育係が付いたのだけど、その相手がまさかの幼馴染の古坂康太君、こーちゃんだった。
驚く事にこーちゃんは私が配属された営業課の課長をしているんだけど、課長が新人を教育するのかなって疑問には思った。
理由を聞いたら、急激な会社の成長に人員が足りなくて仕方なくらしい。
まあ、新卒が入る時期に中途採用を行うんだから人手不足なのは分かる
「そう言えば、今日からだよね、田邊さんが一人で仕事をするのって」
「そうだね。正直まだ完全に仕事に慣れたって堂々とは言えないけど、少し不安だな……」
そんなこーちゃんの許で3か月研修を行った私は、遂に今日から一人で仕事を行わないといけない。
と言っても、まだ新人だから無理に新規の契約をしてくるんじゃなくて、既存の契約する会社に訪問するのが主らしい。1年経ったぐらいの時から積極的に新規の契約を取って来いだとか……。
私、前の職場が保険の会社の契約社員だったけど、その時は契約ノルマだったりで厳しかったのに、この会社は新人には優しい会社だ。
まあ、上司が白雪部長とこーちゃんだからなのか。
「そんな硬くならなくて平気だよ。私もあまり営業は得意じゃないけど、5年もなんとかやって来てるんだから。失敗しても課長とかがサポートしてくれるし。当たって砕けろだね」
「いや、当たって砕けたら会社に大きな損害が発生するよ……」
「違う違う。そう言った精神でしろってこと。田邊さんは真面目だな~」
始業前に自動販売機前で購入したジュースを飲みながら談話する私たち。
相手は私よりも2歳年下だけど、会社としては先輩の結城さん。
私が入社してから良く話しかけて来てくれて、何かと世話になっている頼れる年下先輩だ。
ここで私のポケットから電子音が鳴る。今のはLI〇Eの通知音。
誰からだろ?と取り出すと、携帯に付いてあるキーホルダーが垂れ落ち、それに結城さんが反応。
「あれ? 田邊さんの携帯にキーホルダーなんて付いてたっけ?」
送り主は娘の鈴音だったことを確認した私は、結城さんの質問に答える。
キーホルダーは座ったパンダがボールを抱えているやつだ。
「ああ、これは昨日娘からプレゼントされた物だよ。バイトで貰った初めての給料で買ってくれたんだ」
鈴音曰く安物だけど母親としては嬉しい。
鈴音は先月からコンビニでバイトを始めた。
仕事経験が無い人にとってコンビニのバイトは入門書みたいな物だから身の丈にあって良いと思った。
仕事先の方と関係は良好だからか、疲れた……と仕事に対しての愚痴は言うが人間関係では愚痴は零さない。
そして娘が頑張って稼いだお金で貰ったプレゼント、これは私の一生の宝にしようと思う。
と、鈴音の照れ隠しな表情プレゼントを渡す表情を思い出して頬を緩ます私に、目を瞬かせる結城さんが言う。
「え、田邊さんの娘さん、帰って来てたの?」
「はい?」
私は目が点になった。その言葉の意味が分からなかったから。
だが、私はあ!と思い出す。
「……そう言えば言ってなかったね。私の娘、家出から帰って来てたの」
それは三カ月前の歓迎会の時に私は娘が家出している事を公言した。
その時は皆心配してくれたが、その後は私を気遣ってか娘の話題を出さずにいてくれた。
その事で私もすっかり頭の中から抜け落ちてて、娘が帰って来た事を報告するのを忘れていた。
「ごめんなさい! 皆心配してくれたのに、言うの忘れてて!」
「いや、別にそこまで謝らなくていいよ。そうか。良かったね、娘さん帰って来て。皆の方には私の方から伝えておくから気にしなくていいから」
そう言って貰えて有難いけど、改めて私の方からも報告と謝罪はしておこう。
「こーら。なに始業前にこんな所でお喋りしているの。こっちは最近営業成績が伸びなくて悩んでいるのに、お気楽な事だ」
若干八つ当たりに言って近づいて来たのは、こちらも先輩だが私よりも一個年上の下野目さん。
この人も新人の私に良くしてくれる優しい人だ。
「おはようございます下野目さん」
「おはようございます」
「おはよう、田邊さんに結城さん。んで。口だけな注意をしといてなんだけど、何の話をしていたの?」
緩んだ表情から察してたが、先程の注意は口先だけで本人は怒る気は皆無らしい。
「田邊さん所の娘さんが家出から帰って来てたって話をしてたんですよ」
「そうなの? 良かったじゃん田邊さん。同じ子持ちとして母親としての気苦労はしているから、私もホッとしたわ」
「ご心配をおかけして申し訳ございません……」
下野目さんは結婚していて子供が2人いるらしい。
家族仲も良好で最近は家族旅行でお土産を買って来てくれた事もある。
人の家庭を幸せを見て微笑ましいと思う反面、どこか劣等感を抱く時もあるけど……。
私の家庭の話は一旦区切って、途絶えていた仕事の話題へと結城さんが戻す。
「そうだ下野目さん。田邊さん今日から一人で営業周りをするそうだけど、先輩として何かアドバイスをあげてくださいよ」
「人に頼むんじゃなくて自分でしなさいよ……」
「いやー私って教えるのって上手くないのでお願いします」
「と言ってもね……営業なんて経験するしかないし、ケースバイケースが主だから何とも言えないわね。確か田邊さんの教育係は古坂課長だったわよね? なら、教えて貰った事を素直に実行するしかないわね」
アドバイスかどうかは分からないけど少し背中を押されたみたいで少し胸が楽になる。
する前から不安になるわけにはいかないからね。
そろそろ始業前のミーティングが始まる時間だと、私たちは飲み干した缶をゴミ箱に入れてオフィスに戻る。
「さあ、新人の実力を見せて貰うとしますか」
まあ、新人は最初は既存の契約元に出向だから実力云々は兎も角。
今後色々とお金が必要だから、生活の為に成績を出して給料を上げないといけないから頑張らないと。
私は意気込む様に小さく握りこぶしを作る。
この会社の新人は3ヵ月が試用期間でその間は教育係が付く規則となっている。
例外も無く、私にも教育係が付いたのだけど、その相手がまさかの幼馴染の古坂康太君、こーちゃんだった。
驚く事にこーちゃんは私が配属された営業課の課長をしているんだけど、課長が新人を教育するのかなって疑問には思った。
理由を聞いたら、急激な会社の成長に人員が足りなくて仕方なくらしい。
まあ、新卒が入る時期に中途採用を行うんだから人手不足なのは分かる
「そう言えば、今日からだよね、田邊さんが一人で仕事をするのって」
「そうだね。正直まだ完全に仕事に慣れたって堂々とは言えないけど、少し不安だな……」
そんなこーちゃんの許で3か月研修を行った私は、遂に今日から一人で仕事を行わないといけない。
と言っても、まだ新人だから無理に新規の契約をしてくるんじゃなくて、既存の契約する会社に訪問するのが主らしい。1年経ったぐらいの時から積極的に新規の契約を取って来いだとか……。
私、前の職場が保険の会社の契約社員だったけど、その時は契約ノルマだったりで厳しかったのに、この会社は新人には優しい会社だ。
まあ、上司が白雪部長とこーちゃんだからなのか。
「そんな硬くならなくて平気だよ。私もあまり営業は得意じゃないけど、5年もなんとかやって来てるんだから。失敗しても課長とかがサポートしてくれるし。当たって砕けろだね」
「いや、当たって砕けたら会社に大きな損害が発生するよ……」
「違う違う。そう言った精神でしろってこと。田邊さんは真面目だな~」
始業前に自動販売機前で購入したジュースを飲みながら談話する私たち。
相手は私よりも2歳年下だけど、会社としては先輩の結城さん。
私が入社してから良く話しかけて来てくれて、何かと世話になっている頼れる年下先輩だ。
ここで私のポケットから電子音が鳴る。今のはLI〇Eの通知音。
誰からだろ?と取り出すと、携帯に付いてあるキーホルダーが垂れ落ち、それに結城さんが反応。
「あれ? 田邊さんの携帯にキーホルダーなんて付いてたっけ?」
送り主は娘の鈴音だったことを確認した私は、結城さんの質問に答える。
キーホルダーは座ったパンダがボールを抱えているやつだ。
「ああ、これは昨日娘からプレゼントされた物だよ。バイトで貰った初めての給料で買ってくれたんだ」
鈴音曰く安物だけど母親としては嬉しい。
鈴音は先月からコンビニでバイトを始めた。
仕事経験が無い人にとってコンビニのバイトは入門書みたいな物だから身の丈にあって良いと思った。
仕事先の方と関係は良好だからか、疲れた……と仕事に対しての愚痴は言うが人間関係では愚痴は零さない。
そして娘が頑張って稼いだお金で貰ったプレゼント、これは私の一生の宝にしようと思う。
と、鈴音の照れ隠しな表情プレゼントを渡す表情を思い出して頬を緩ます私に、目を瞬かせる結城さんが言う。
「え、田邊さんの娘さん、帰って来てたの?」
「はい?」
私は目が点になった。その言葉の意味が分からなかったから。
だが、私はあ!と思い出す。
「……そう言えば言ってなかったね。私の娘、家出から帰って来てたの」
それは三カ月前の歓迎会の時に私は娘が家出している事を公言した。
その時は皆心配してくれたが、その後は私を気遣ってか娘の話題を出さずにいてくれた。
その事で私もすっかり頭の中から抜け落ちてて、娘が帰って来た事を報告するのを忘れていた。
「ごめんなさい! 皆心配してくれたのに、言うの忘れてて!」
「いや、別にそこまで謝らなくていいよ。そうか。良かったね、娘さん帰って来て。皆の方には私の方から伝えておくから気にしなくていいから」
そう言って貰えて有難いけど、改めて私の方からも報告と謝罪はしておこう。
「こーら。なに始業前にこんな所でお喋りしているの。こっちは最近営業成績が伸びなくて悩んでいるのに、お気楽な事だ」
若干八つ当たりに言って近づいて来たのは、こちらも先輩だが私よりも一個年上の下野目さん。
この人も新人の私に良くしてくれる優しい人だ。
「おはようございます下野目さん」
「おはようございます」
「おはよう、田邊さんに結城さん。んで。口だけな注意をしといてなんだけど、何の話をしていたの?」
緩んだ表情から察してたが、先程の注意は口先だけで本人は怒る気は皆無らしい。
「田邊さん所の娘さんが家出から帰って来てたって話をしてたんですよ」
「そうなの? 良かったじゃん田邊さん。同じ子持ちとして母親としての気苦労はしているから、私もホッとしたわ」
「ご心配をおかけして申し訳ございません……」
下野目さんは結婚していて子供が2人いるらしい。
家族仲も良好で最近は家族旅行でお土産を買って来てくれた事もある。
人の家庭を幸せを見て微笑ましいと思う反面、どこか劣等感を抱く時もあるけど……。
私の家庭の話は一旦区切って、途絶えていた仕事の話題へと結城さんが戻す。
「そうだ下野目さん。田邊さん今日から一人で営業周りをするそうだけど、先輩として何かアドバイスをあげてくださいよ」
「人に頼むんじゃなくて自分でしなさいよ……」
「いやー私って教えるのって上手くないのでお願いします」
「と言ってもね……営業なんて経験するしかないし、ケースバイケースが主だから何とも言えないわね。確か田邊さんの教育係は古坂課長だったわよね? なら、教えて貰った事を素直に実行するしかないわね」
アドバイスかどうかは分からないけど少し背中を押されたみたいで少し胸が楽になる。
する前から不安になるわけにはいかないからね。
そろそろ始業前のミーティングが始まる時間だと、私たちは飲み干した缶をゴミ箱に入れてオフィスに戻る。
「さあ、新人の実力を見せて貰うとしますか」
まあ、新人は最初は既存の契約元に出向だから実力云々は兎も角。
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