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5章
凶兆
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千絵の紹介で整体師の伯母が運営している整体院に通い出して1週間が経過した。
光もネットや本で調べた1人で簡易に出来るストレッチ法を試したりはしていたが、やはりプロの筋肉の扱いは凄く。1週間の計3回通っただけでも効果は出ていた。
ゴムで縛られた様な締め付けは弱まり、石が詰まったかの様な張りも緩み、筋肉が本来の形に戻ったかの様に順調に脚に回復の傾向が見られる。
勿論、油断は大敵は変わらず、無理をすれば怪我をぶり返す恐れもあるが、優香が考案した練習メニューと自宅で行えるストレッチ、そして食事メニューをしっかりすれば怪我は良くなるらしい。
それに、優香も過剰な無茶をしない限りは練習メニュー以外の練習も許可されているから、光も全盛期程では無くても、それに近い練習を組めるかもしれない。
優香もお金が払える様になったらと後払いを提案してくれたおかげで、光も学生ながら高額な治療費でも通える為に、今日も整体院に通うつもりだ。
優香の整体院は9時まで開いているので、8時に陸上の練習を終える計画を立てる。
そんな光は、学校ではその事を隠しており、誰も知らないのだが。
その事を知る人物が、珍しく1人外で昼食を食していた光の許に来る。
「光ちゃん、怪我の方は順調そう?」
「あ、千絵ちゃん。うん。怪我は前と比べるとかなり楽になったよ」
外のベンチに座り弁当に箸を付けていた光の隣に、弁当を片手にやって来た千絵が座る。
「なんだか、あの後は互いに忙しかったからあまり話せてなかったけど。優香おば……お姉さん、何か光ちゃんに失礼な事言ってない? あの人、人の心にグサグサ来る様なこと言うから……」
「うーん。色々と世間話はするけど、その事に関しては大丈夫かな? まあ、怪我の方で言い返せない程の正論は言われるけど……」
「それに関しては光ちゃんの自業自得。私も前から何度も言ってたのに」
「うぅ……面目ないな……」
光の隣で昼食の弁当を食べ始める千絵。
光も途中だった食事を進めると、光は千絵の伯母である優香の事を話す。
「そう言えば、千絵ちゃんの伯母さんの優香先生。あの人って私のお父さんと同級生だったんだね、大学の」
「え、そうなの? そんな話は聞いた事がないな」
千絵もその事実は初知りらしく箸を咥えながらに驚く。
「私もビックリしたよ。そんで、家に帰ってからお父さんに聞いてみたら『え!? あいつ、この街に住んでるのか!? 前の同窓会でそんな話は……やべぇ……って事はあいつらと会う事も……』って、なんか面倒事みたいに頭を抱えてたよ」
「……何をしたんだ優香おば……お姉さんは光ちゃんのお父さんに……。てか、あいつらって誰……?」
千絵はそこを疑問に思うと、千絵は苦笑いで千絵に確認する。
「そう言えば、千絵ちゃんって優香先生の恋バナって聞いた事があるのかな?」
「優香伯母さんの? うん。小さい頃に何度もね。昔の私は優香伯母さんの話が絵本みたいな感じだったから」
千絵がもう諦めたかの様に伯母さん呼びに変わっているのは流し、千絵が知っているなら説明を大きく省いて光は語る。
「なら、聞いているよね。優香先生が大学時代に恋をした男性の話」
「……まあね。今では笑って話してるけど、正直、私は聞いてて胸が裂けそうになる話だよね。人の失恋話でも」
光と千絵は優香の学生時代にあった恋愛話を聞いている。
優香にとっては戒めで、その後悔を知り合いにして欲しくないという気持ちで話しているのだろうが、今の2人にとってその話は堪えるものがある。
「その話に出て来る男性ってさ……もしかしたら、私たちの身近な人のお父さんかもしれないんだよね」
「身近な人って……そう言えば、優香伯母さんが光ちゃんのお父さんの同級生って事は……もしかして、太陽君のお父さん?」
千絵は光の父と太陽の父が旧知の仲だという事は知っている。
何処まで一緒だったかは知らないが、もし大学まで一緒なら必然的に太陽の父と千絵の伯母も同級生となる。
だが、千絵は有り得ないと失笑をして。
「それはないと思うな。だって太陽君のお父さんって失恋を94回もしてた人だよ? そんな人に恋をするなんて、優香伯母さんは相当なもの好きになるよ」
「……さりげなく千絵ちゃん酷い事言ってない? けど、そうなの? 太陽のお父さんが94回も失恋してたなんて、初めて知ったな」
「…………うん。昔に、ね。太陽君から教えて貰ったんだ」
自分の発言を思い返した千絵は何処か儚げに笑って答える。
そして千絵は会話しながらに食べていた弁当も全て食べ終え、弁当を袋に包んでから立ち上がり。
「まあ、優香伯母さんと仲良くしてるなら私は安心かな。あの人は何処か難しい部分もあったからね。それじゃあ、私は自分の教室に戻るよ」
「うん。ありがとね千絵ちゃん。良い整体師を教えてくれて」
「どう致しまして。けど、本当に無茶しないでよ光ちゃん」
「分かってる。本当に、千絵ちゃんって将来、良いお母さんになれるかもね。そのお節介さは…………」
「それは誉め言葉として受け取って……って、今、大きな欠伸したけど、眠いの?」
千絵は会話中に手で押さえても分かる程に大きく口を開き欠伸をする光を訝しむ。
光はハッと口を閉じて、慌てた様に両手を振り。
「ハハハッ。今日は良い天気で心地よかったからかな。あぁー午後の授業が心配だよ。寝ない様に心掛けないといけないな……」
何処か棒読みで顔を逸らす光を半眼で睨む千絵だが、それ以上は何も言わず。
「授業は寝ないようにね。まあ、光ちゃんの成績なら多少怠けても赤点は取らないだろうけど」
千絵が最後の小言を残して去った後に、1人ベンチに残った光は顔を俯かせて目頭を押さえる。
「流石にちょっと、寝不足かな……最近」
光もネットや本で調べた1人で簡易に出来るストレッチ法を試したりはしていたが、やはりプロの筋肉の扱いは凄く。1週間の計3回通っただけでも効果は出ていた。
ゴムで縛られた様な締め付けは弱まり、石が詰まったかの様な張りも緩み、筋肉が本来の形に戻ったかの様に順調に脚に回復の傾向が見られる。
勿論、油断は大敵は変わらず、無理をすれば怪我をぶり返す恐れもあるが、優香が考案した練習メニューと自宅で行えるストレッチ、そして食事メニューをしっかりすれば怪我は良くなるらしい。
それに、優香も過剰な無茶をしない限りは練習メニュー以外の練習も許可されているから、光も全盛期程では無くても、それに近い練習を組めるかもしれない。
優香もお金が払える様になったらと後払いを提案してくれたおかげで、光も学生ながら高額な治療費でも通える為に、今日も整体院に通うつもりだ。
優香の整体院は9時まで開いているので、8時に陸上の練習を終える計画を立てる。
そんな光は、学校ではその事を隠しており、誰も知らないのだが。
その事を知る人物が、珍しく1人外で昼食を食していた光の許に来る。
「光ちゃん、怪我の方は順調そう?」
「あ、千絵ちゃん。うん。怪我は前と比べるとかなり楽になったよ」
外のベンチに座り弁当に箸を付けていた光の隣に、弁当を片手にやって来た千絵が座る。
「なんだか、あの後は互いに忙しかったからあまり話せてなかったけど。優香おば……お姉さん、何か光ちゃんに失礼な事言ってない? あの人、人の心にグサグサ来る様なこと言うから……」
「うーん。色々と世間話はするけど、その事に関しては大丈夫かな? まあ、怪我の方で言い返せない程の正論は言われるけど……」
「それに関しては光ちゃんの自業自得。私も前から何度も言ってたのに」
「うぅ……面目ないな……」
光の隣で昼食の弁当を食べ始める千絵。
光も途中だった食事を進めると、光は千絵の伯母である優香の事を話す。
「そう言えば、千絵ちゃんの伯母さんの優香先生。あの人って私のお父さんと同級生だったんだね、大学の」
「え、そうなの? そんな話は聞いた事がないな」
千絵もその事実は初知りらしく箸を咥えながらに驚く。
「私もビックリしたよ。そんで、家に帰ってからお父さんに聞いてみたら『え!? あいつ、この街に住んでるのか!? 前の同窓会でそんな話は……やべぇ……って事はあいつらと会う事も……』って、なんか面倒事みたいに頭を抱えてたよ」
「……何をしたんだ優香おば……お姉さんは光ちゃんのお父さんに……。てか、あいつらって誰……?」
千絵はそこを疑問に思うと、千絵は苦笑いで千絵に確認する。
「そう言えば、千絵ちゃんって優香先生の恋バナって聞いた事があるのかな?」
「優香伯母さんの? うん。小さい頃に何度もね。昔の私は優香伯母さんの話が絵本みたいな感じだったから」
千絵がもう諦めたかの様に伯母さん呼びに変わっているのは流し、千絵が知っているなら説明を大きく省いて光は語る。
「なら、聞いているよね。優香先生が大学時代に恋をした男性の話」
「……まあね。今では笑って話してるけど、正直、私は聞いてて胸が裂けそうになる話だよね。人の失恋話でも」
光と千絵は優香の学生時代にあった恋愛話を聞いている。
優香にとっては戒めで、その後悔を知り合いにして欲しくないという気持ちで話しているのだろうが、今の2人にとってその話は堪えるものがある。
「その話に出て来る男性ってさ……もしかしたら、私たちの身近な人のお父さんかもしれないんだよね」
「身近な人って……そう言えば、優香伯母さんが光ちゃんのお父さんの同級生って事は……もしかして、太陽君のお父さん?」
千絵は光の父と太陽の父が旧知の仲だという事は知っている。
何処まで一緒だったかは知らないが、もし大学まで一緒なら必然的に太陽の父と千絵の伯母も同級生となる。
だが、千絵は有り得ないと失笑をして。
「それはないと思うな。だって太陽君のお父さんって失恋を94回もしてた人だよ? そんな人に恋をするなんて、優香伯母さんは相当なもの好きになるよ」
「……さりげなく千絵ちゃん酷い事言ってない? けど、そうなの? 太陽のお父さんが94回も失恋してたなんて、初めて知ったな」
「…………うん。昔に、ね。太陽君から教えて貰ったんだ」
自分の発言を思い返した千絵は何処か儚げに笑って答える。
そして千絵は会話しながらに食べていた弁当も全て食べ終え、弁当を袋に包んでから立ち上がり。
「まあ、優香伯母さんと仲良くしてるなら私は安心かな。あの人は何処か難しい部分もあったからね。それじゃあ、私は自分の教室に戻るよ」
「うん。ありがとね千絵ちゃん。良い整体師を教えてくれて」
「どう致しまして。けど、本当に無茶しないでよ光ちゃん」
「分かってる。本当に、千絵ちゃんって将来、良いお母さんになれるかもね。そのお節介さは…………」
「それは誉め言葉として受け取って……って、今、大きな欠伸したけど、眠いの?」
千絵は会話中に手で押さえても分かる程に大きく口を開き欠伸をする光を訝しむ。
光はハッと口を閉じて、慌てた様に両手を振り。
「ハハハッ。今日は良い天気で心地よかったからかな。あぁー午後の授業が心配だよ。寝ない様に心掛けないといけないな……」
何処か棒読みで顔を逸らす光を半眼で睨む千絵だが、それ以上は何も言わず。
「授業は寝ないようにね。まあ、光ちゃんの成績なら多少怠けても赤点は取らないだろうけど」
千絵が最後の小言を残して去った後に、1人ベンチに残った光は顔を俯かせて目頭を押さえる。
「流石にちょっと、寝不足かな……最近」
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