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第十九話 やっぱり女の子なんだな

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 それから数日、俺たちは予定通り最低ランクの洞窟に通った。
「ほらな、言うた通り、大丈夫やろ? いつまでもビビってられんわ」
「そうなのか? 妙にキョロキョロしてないか?」

「す、するかいな!」
 言いながら、微妙に眼が泳ぐミスズ。
「無理をするなよ、ミスズさん? 俺たちは洞窟に挑んだばかりなんだ。死なないだけでも、確実に前進してるんだからな?」

「…うん、分かった」ミスズの素直な反応に、つい顔がほころぶ。それを見て憤るミスズ。「なんやその顔!」
「いや、なんでもないよ。はは」

 といった馬鹿話をしながらも、俺は周囲への注意を怠らなかった。ミスズが先に見つけると、パニックになって危ないからだ。

「…居た!」
 俺が発見したのは、”ヨートーク”という、頭が羊で胴体が犬のバケモノである。
 解説本によると頭突きが痛いらしい。

 早く駆け寄り、頸の皮を僅かに残した状態で切断する。
 もじゃもじゃした頭の毛に、お宝が紛れ込んでいることが多いため、指で梳ったところコロコロとアブリが転がり出た。

「…なぁおっちゃん?」
 ヨートークの頭を弄くっている俺を見ながら、ミスズが言った。
「なんだ?」

「首の皮一枚つながるって言葉あるけど、皮一枚じゃ手遅れよな?」
「…そうだな。もう死んでるな」
「そんだけなんやけどな。オチ無しなんや、ごめんな」

「いや、確かに変な言葉だな」
 馬鹿話をしている間に、ヨートークの死体は、以前ミスズが言っていた通り、煙のように消えた。
 昨日はミスズが赤い石で速攻爆殺していたから、普通に倒すのはこれが初めてだ。

「おぉ…、本当に消えたぞ」
「せや。なんで消えるんか、解説本に出てへん?」
 俺は赤い石で解説本を照らした。

「出てるぞ。これによるとだ、バケモノの心臓には”魔核”というものが入っていて、死んだバケモノは一定時間が経過すると、魔核心臓、略して核心としておこうか。これに繋がった部分は核心と一緒に消えてしまうそうだ」

「そういう原理やったんか。ほんで皮が欲しいときは、消える前に急いで核心から切り離したら、皮だけは消えんで済むわけなんか」
「ミスズさんは、知らずに経験則でそれをやっていたわけだな」

「けど、なんでそんなことになってんのやろ?」
「洞窟内で死体が消えないと腐るだろう? 腐ると空気が悪くなって、病気が発生したりして、環境が悪化してしまうからだろうな。この洞窟の主はキレイ好きなんだろう」

「主ってなんなん?」
「…いや、そこは俺の感想だ。建物や土地に主がいるみたいに、洞窟に居てもおかしくないだろう?」

 などという馬鹿話をしながら、ヨートークの頭から転がり出たアプリを拾い集めた。
「これって、消えるまで放っといたらアプリだけ残るんちゃう?」
「あっ…」

「ゴメン。今までのおっちゃんの苦労を台無しにするとこやった」
「いや、十分台無しになった。どうしてもっと早く言わない…」
 苦笑いのミスズ。

 アプリを集め終わって歩き出したが、バケモノはそれほど頻繁に出るものではない。なので、本当は危険なんだが、解説本を読みながら歩いたりもする。

「なお、魔核自体も高く売れるとミスズさんも言っていたが、核心から魔核を取り出すと死体が消えなくなるので、洞窟内での魔核取りは禁止されているそうだ。昨日から俺たちはこの洞窟をくまなく歩いたが、死体はひとつも残っていなかったから、このルールは守られているようだな」

「まぁ、臭かったり、病気になったりすんの嫌やもんな」
 言った後で気付いたことがあったらしく、続けて言った。
「あ、けど、トニカクみたいに全部持って帰るときは魔核取ってもええんやろ?」

「えーと。その通り、問題ないそうだ」
 戦闘と戦闘の間が空くと、どうしてもだらけた感じになる。
「探索者が少ないとは言え、続けて来ると流石に実入りが少ないな」
「せやな。…とか言うてる間に、ドンツキまで来たで」

 直径十メートルほどの円形のホール。
 ここがこの洞窟の、いくつかに枝分かれした最奥部のひとつである。
 俺たちは、こういった最奥部のひとつと入り口の間を、何回も往復していた。

「この洞窟はしばらく寝かした方がいいな。河岸を変えるか」
「んん? そろそろ洞窟の位を上げるときが来たってことかや?」
 ミスズがキラキラした眼を俺に向けた。

「まぁそういうわけなんだが、腹の空き具合からして、まだ昼前だ。今から別の洞窟に行くには微妙な時間だし、夕方までここで狩るのは徒労感半端ない。どうする? ミスズさんの判断に任せるが…」

「んー。ほな別のとこ行くことにしよか。冷やかしって言うん?」
「ははは、俺たちは初心者だし、冷やかせる立場じゃないからな。ここは謙虚に、様子見としておこうか」

「んじゃ様子見で! ゴー、ヨースミー!」
 腕を上げて前を指差し、率先してホールから出ようとして、自分が後衛だったことに気付くミスズ。

 照れくさげに振り返ったところ、何かを見てしまったらしい。
「んぎゃああぁ!」
 赤い石を一握り、ホールの天井に向けて投げる。

ダガガガァン!

「くっ!」
 素早く駅弁スタイルでミスズを抱き上げ、ホールから駆け出した。
 閃光が俺を追い抜き、目前の回廊に長い影を浮かび上がらせる。

 閃光を追いかけて来た爆風に背中を蹴られた俺は、ミスズに覆いかぶさるように地面に倒れ込んだ。天井が崩れ、岩石が落ちてきたが、対応が早かったお陰で埋もれずに済んだ。
 爆発をやり過ごしたのを確認し、ミスズに問いかけた。

「大丈夫か? ミスズさん?」
「う、うん。…あんがと、おっちゃん」
 ばつが悪いのか、赤い顔をして眼をそらすミスズ。

「ケガはないか?」
「だ、大丈夫やから、…はよどいて」
「ああ、悪い」

 ミスズを抱いたまま起き上がり、その場に下ろした。
 俺の体重はミスズの三倍はあるので、ミスズ分の荷重が増えたところで、ひとりで起き上がるのと大して変わらないのだ。

「背中は痛くないか?」
「…背中?」
「ここは地面がボコボコだが、背中を打ったりはしていないかと…」

「…あっ!」
 短く叫ぶと、素早く外套を脱ぎ、バサバサと埃を叩いた。
 その後、背中の金糸模様を穴があくほど見つめる。そして安堵の吐息をついて一言。

「…良かったわ、模様は壊れてない」
 俺はその姿を見てふっと笑ってしまった。
「服に必死になるなんて、やっぱり女の子なんだな」

「高かったんやで、このうわっぱり! 年代モンなんやからな!」
 ミスズが”うわっぱり”と呼んだ外套は、全体的に地味な色ではあるものの、肌触りの良い布地の各部は革で補強されており、そこには目立たないが、ミスズが“模様”と呼んだ意匠が凝らされている。

 特に袖から肩、更に僧帽筋にかけて金糸であしらわれた幾何学的な文様は、なにやら曰くありげである。
「確かに、よく見たら高そうな品だ。大魔法使いミスズ様には安物の服は似合わないな」

「おっちゃん、茶化しとらん?」
「滅相も無い」
 両手を振って否定した。

「それはそうと、何を見た? 何が居たんだ?」
「何か知らんけど、天井からじゅわーって、染み出るみたいに変なんが出てきたんよ」
「天井…?」

 恐る恐るホールに戻り、崩落した天井を見上げる。赤い石で照らすと、広い空間があることが分かった。
「これは…凄い発見だぞ、ミスズさん。ここに二階以上があるなんて、解説本にも載っていない情報だ!」

「これって怒られるやろか? 規約とかはなんて書いたぁるの?」
「元々洞窟は自然にできたものだし、今現在誰のものでもない。そもそも探索の結果壊れたものだから、責められる謂れもない」

「けど、互助会がシキってるやん?」
「それは互助会が力を持っているから、みんなそれに従っているだけだ。従ったほうが楽だし安全なだけで、強制力はない。ミスズさんだって便利だから互助会を使っていたのだし、エーリカも言っていただろう? はみ出すのは自由だけど、助けないよって」

 言葉を切り、瓦礫の山をよじ登る。
「まぁ、怒られたとしても、この発見でチャラだよ」
 元々ホールの天井には、何らかの方法で隠された出入り口があったようだが、赤い石の爆発で岩盤ごと崩落している。

 俺は懸命に背伸びして、赤い石の灯りで上を照らした。
「ミスズさん、上に通路があるみたいだ!」
 瓦礫の上でジャンプしたり背伸びしたりする。

「くそ、上に登れればいいんだが…」
「登れるで?」
 食い気味に答えるミスズ。

「どうやって…って、あぁ、緑の石か!」
「ご名答~」
 言うと、ミスズは瓦礫の上に緑の石を置いた。

「おっちゃん、これ、がいに踏んで」
「お、おう」
 えいやとばかり、緑の石を踏むと、足の裏から風が吹き出した。

「おおお、身体が浮くぞ!」
 前触れもなく俺に飛びついてくるミスズ。
「うぉ、ちょちょっ」

 慌てながらも、ミスズを抱きかかえ、片足でうまくバランスを取る。タコ踊りしながらも、ホール天井の穴を潜り抜け、上階に降り立った。
「おっとっとぉ」

「おっちゃんすごいやん。エエバランスしとる!」
「…危ないから遊ぶなよ?」
 怖すぎるためか、ミスズが変なテンションになっている。

「ここの洞窟で怖がる人が多い理由が分かったよ。ここまで来ると、俺でも分かる。なんだかゾクゾクするぜ」
「せやろ? ここまで来たら図太いおっちゃんでも分かるやろ?」

「……」
 今までは単にミスズが怖がりなだけだと思っていたが、ここに来るとミスズが言うことは本当らしいと分かった。実際自分は鈍いのかも知れない。いや、鈍いよな。
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