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31:ちょっと可愛い、なんて
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「なるほど駆は僕のために行動してくれたのかもしれない。でもな、なんで対話を試みるより先に、いきなりお茶会に乱入して暴れようと思った? 僕には駆の思考回路が全く理解できないんだけど」
古上先輩が駆先輩を睨みつける。
子どもが見たら泣き出してしまいそうな凶悪な形相だというのに、駆先輩は怯まない。
「えーだって、お前の話を聞く限り、とても話が通じる人種じゃねーと思ったから。行動で示さなきゃダメかなって」
「それにしたって限度ってものがあるだろ!? 駆の行為はまるっきりドキュンそのものだろーが!!」
古上先輩が張り上げた大声に、中年女性が怯えている。
「まあっ、ドキュンなんてスラング、誰から教わったんですかっ?」
わざとらしく1オクターブ高い声を出す駆先輩。
胸倉を掴まれている状態だというのに、全く危機感はないらしい。
「お前だよ!!!」
全力で突っ込む古上先輩。
「ダメですよ誠一郎クンっ、古上本家の跡取りともあろう者がそんな下品な言葉使っちゃいけませんっ」
駆先輩がわざとらしく頬を膨らませる。
ぷちん――と、何かが切れる音が聞こえた。
「ああああ古上先輩!! ダメです!! 首はダメです!! 死んじゃいます!!」
「落ち着いてください古上くん!!」
「け、警察……」
「すみません大丈夫ですなんでもありませんから通報しないでください!!」
私はスマホを取り出した中年女性にペコペコ頭を下げ、どうにか大ごとになるのを防いだ。
それから約十分後、私たちは影山くんのアパートに到着した。
アパートの最上階である三階、302号室のインターホンを鳴らすと、彼はすぐ玄関まで迎えに出てくれた。
服装はTシャツとジーパン。
バイト先で見る私服とほとんど変わらない格好だ。
「いらっしゃい」
「お邪魔します……」
「……どうかしたのか?」
疲れ切っている私たちを見て、影山くんは怪訝そう。
「いや、別に」
「何も」
「ねえ?」
「……ごめんなさい」
皆の視線の交差点で、赤く染まった頬を隠すように項垂れる古上先輩の姿は超レアで、実はほんのちょっとだけ可愛いなんて思ってしまったんだけれど、それは内緒。
古上先輩が駆先輩を睨みつける。
子どもが見たら泣き出してしまいそうな凶悪な形相だというのに、駆先輩は怯まない。
「えーだって、お前の話を聞く限り、とても話が通じる人種じゃねーと思ったから。行動で示さなきゃダメかなって」
「それにしたって限度ってものがあるだろ!? 駆の行為はまるっきりドキュンそのものだろーが!!」
古上先輩が張り上げた大声に、中年女性が怯えている。
「まあっ、ドキュンなんてスラング、誰から教わったんですかっ?」
わざとらしく1オクターブ高い声を出す駆先輩。
胸倉を掴まれている状態だというのに、全く危機感はないらしい。
「お前だよ!!!」
全力で突っ込む古上先輩。
「ダメですよ誠一郎クンっ、古上本家の跡取りともあろう者がそんな下品な言葉使っちゃいけませんっ」
駆先輩がわざとらしく頬を膨らませる。
ぷちん――と、何かが切れる音が聞こえた。
「ああああ古上先輩!! ダメです!! 首はダメです!! 死んじゃいます!!」
「落ち着いてください古上くん!!」
「け、警察……」
「すみません大丈夫ですなんでもありませんから通報しないでください!!」
私はスマホを取り出した中年女性にペコペコ頭を下げ、どうにか大ごとになるのを防いだ。
それから約十分後、私たちは影山くんのアパートに到着した。
アパートの最上階である三階、302号室のインターホンを鳴らすと、彼はすぐ玄関まで迎えに出てくれた。
服装はTシャツとジーパン。
バイト先で見る私服とほとんど変わらない格好だ。
「いらっしゃい」
「お邪魔します……」
「……どうかしたのか?」
疲れ切っている私たちを見て、影山くんは怪訝そう。
「いや、別に」
「何も」
「ねえ?」
「……ごめんなさい」
皆の視線の交差点で、赤く染まった頬を隠すように項垂れる古上先輩の姿は超レアで、実はほんのちょっとだけ可愛いなんて思ってしまったんだけれど、それは内緒。
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