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24:ゲーセンにて
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陽が傾きかけている夕方。
本屋に行くという有紗ちゃんと駅前で別れ、歩いていると大きなゲームセンターの前を通りかかった。
このゲームセンターは一面ガラスになっていて、外からでも中の様子が知れる。
もっとも、人の顔の高さにあたる位置にはポスターがたくさん貼ってあるし、外にはゲームセンターを囲むようにずらりと自転車が並んでいるから見づらいけれど。
際どい服装をした美少女がファイティングポーズを決めているポスターとポスターの隙間から、見知っている人の横顔が見えた。
あそこでクレーンゲームしてるの光畑くんじゃない?
傍にいるのは駆先輩? 御厨先輩もいる!
視線に敏感なのか、それとも動物的第六感が働いたのか、クレーンゲームの前にいた駆先輩が急に振り返った。
光畑くんの肩を叩いて、私を指さす。
すると、光畑くんも御厨先輩もこちらを振り返った。
光畑くんが驚いた顔をしてから、両手を大きく左右に振る。百点満点をあげたいくらいの笑顔で。
ここまで大げさに歓迎されると恥ずかしい。でも嬉しかった。
先輩と御厨先輩は同じ塾の夏期講習に通っている。
今日はたまたま終わる時間が一緒だったから、ゲームセンターで遊ぼうという話になり、その流れで光畑くんを誘ったらしい。
「伊織も誘ったけど断られた。『ワンダーツリー』のリセマラで忙しいんだってさ」
コーヒーの入ったカップを片手に駆先輩が言った。
ゲームセンターの隣にはコーヒーチェーン店がある。
私たちは混雑している店内の一角、窓際にある四人掛けテーブル席に座っていた。
駆先輩はブラックコーヒーで、私と御厨先輩は甘いフラッペ、光畑くんはミルクだけを入れたコーヒーを飲んでいる。
席順は私と光畑くんが隣同士、私の向かいが駆先輩、斜め前が御厨先輩だ。
「『ワンダーツリー』って、CMでやってるやつ?」
「いまなら10連ガチャ無料!」ってツインテールの金髪美少女がピースするやつだ。
「そうそう、新作のソシャゲ。どうしても最強キャラが欲しくて、もう四日もリセマラしてるんだとさ」
「いっそ清々しいくらいのゲーム馬鹿ですね」
御厨先輩が率直な感想を述べた。
男性陣の服装はTシャツにジーンズだ。
御厨先輩だけが水色の薄いパーカーを羽織っている。
「昔から伊織ってあんなん?」
「あんなんです」
駆先輩の問いに、光畑くんが大きく頷く。
「まあ、家庭環境が家庭環境だったんで現実逃避しなきゃやってらんなかったんだろうなとは思いますけど。でも、うちに遊びに来たときも放っとくとずーっとゲームしてるんで。腹が立ったらスマホ取り上げます」
「おかんみたいだなー景都。二次元に生きる男のお守りは大変だね」
「はい」
と、そこで光畑くんは私に顔を向けた。
「伊織がひなっちを誘って一緒に帰ったって聞いたときはほんと驚いたわ。あいつが他人、しかも女子に興味を持つなんて……ありがとう。ほんとありがとうひなっち」
感極まった様子で、光畑くんは私の手を握った。
夏休みの間、ライングループのメンバー同士で色々と話すうちに、光畑くんの私の呼び方は『茅島さん』→『日菜子ちゃん』→『ひなっち』と、どんどん砕けていった。
「ううん、お礼を言われることじゃないよ。私は何もしてないし」
光畑くんの手は私より温かい。
駆先輩はバイト先でよくスキンシップをしてくるけれど、光畑くんがこんなふうに私に触れるのは初めてなので、ちょっとドキドキした。
本屋に行くという有紗ちゃんと駅前で別れ、歩いていると大きなゲームセンターの前を通りかかった。
このゲームセンターは一面ガラスになっていて、外からでも中の様子が知れる。
もっとも、人の顔の高さにあたる位置にはポスターがたくさん貼ってあるし、外にはゲームセンターを囲むようにずらりと自転車が並んでいるから見づらいけれど。
際どい服装をした美少女がファイティングポーズを決めているポスターとポスターの隙間から、見知っている人の横顔が見えた。
あそこでクレーンゲームしてるの光畑くんじゃない?
傍にいるのは駆先輩? 御厨先輩もいる!
視線に敏感なのか、それとも動物的第六感が働いたのか、クレーンゲームの前にいた駆先輩が急に振り返った。
光畑くんの肩を叩いて、私を指さす。
すると、光畑くんも御厨先輩もこちらを振り返った。
光畑くんが驚いた顔をしてから、両手を大きく左右に振る。百点満点をあげたいくらいの笑顔で。
ここまで大げさに歓迎されると恥ずかしい。でも嬉しかった。
先輩と御厨先輩は同じ塾の夏期講習に通っている。
今日はたまたま終わる時間が一緒だったから、ゲームセンターで遊ぼうという話になり、その流れで光畑くんを誘ったらしい。
「伊織も誘ったけど断られた。『ワンダーツリー』のリセマラで忙しいんだってさ」
コーヒーの入ったカップを片手に駆先輩が言った。
ゲームセンターの隣にはコーヒーチェーン店がある。
私たちは混雑している店内の一角、窓際にある四人掛けテーブル席に座っていた。
駆先輩はブラックコーヒーで、私と御厨先輩は甘いフラッペ、光畑くんはミルクだけを入れたコーヒーを飲んでいる。
席順は私と光畑くんが隣同士、私の向かいが駆先輩、斜め前が御厨先輩だ。
「『ワンダーツリー』って、CMでやってるやつ?」
「いまなら10連ガチャ無料!」ってツインテールの金髪美少女がピースするやつだ。
「そうそう、新作のソシャゲ。どうしても最強キャラが欲しくて、もう四日もリセマラしてるんだとさ」
「いっそ清々しいくらいのゲーム馬鹿ですね」
御厨先輩が率直な感想を述べた。
男性陣の服装はTシャツにジーンズだ。
御厨先輩だけが水色の薄いパーカーを羽織っている。
「昔から伊織ってあんなん?」
「あんなんです」
駆先輩の問いに、光畑くんが大きく頷く。
「まあ、家庭環境が家庭環境だったんで現実逃避しなきゃやってらんなかったんだろうなとは思いますけど。でも、うちに遊びに来たときも放っとくとずーっとゲームしてるんで。腹が立ったらスマホ取り上げます」
「おかんみたいだなー景都。二次元に生きる男のお守りは大変だね」
「はい」
と、そこで光畑くんは私に顔を向けた。
「伊織がひなっちを誘って一緒に帰ったって聞いたときはほんと驚いたわ。あいつが他人、しかも女子に興味を持つなんて……ありがとう。ほんとありがとうひなっち」
感極まった様子で、光畑くんは私の手を握った。
夏休みの間、ライングループのメンバー同士で色々と話すうちに、光畑くんの私の呼び方は『茅島さん』→『日菜子ちゃん』→『ひなっち』と、どんどん砕けていった。
「ううん、お礼を言われることじゃないよ。私は何もしてないし」
光畑くんの手は私より温かい。
駆先輩はバイト先でよくスキンシップをしてくるけれど、光畑くんがこんなふうに私に触れるのは初めてなので、ちょっとドキドキした。
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