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15:嘘みたいな食事風景(2)
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「伊織は見るからに陰気で、人付き合い苦手そうだもんなー。景都がカバーしてくれてるからどーにかやっていけてるんだろうけど、そんな有様じゃ卒業した後苦労するよ?」
真渕先輩は両手を広げ、肩を竦めた。
「俺らにはゲーム好きっていう共通項があるんだよ? 学年を越えた友達を作る絶好のチャンスだってのに、なーんで石みたく黙ってんだよ。いまこそ人脈作りに励むべき時だろ。心の殻を突き破ろうぜ!」
白い歯を煌めかせ、真渕先輩は親指を立てた。
「いえ、結構です。卒業した後のことはそのときに考えます。ですからおれのことは放っといてください」
「だが断る」
真渕先輩は間髪入れずに答えた。
「……なんでですか。おれに構う理由がわかりません。話し相手なら他に五人もいるでしょう」
「わかってないなー、俺は伊織に興味があるって言ってんの。んで、伊織みたいなタイプはこっちから近づいて壁をぶち破らないと、いつまで経っても距離が縮まらないでしょ?」
ぱちん、とウィンクする真渕先輩。
「失礼ですけど、おれには先輩に対する興味が全くありません」
「はははは。残念でした、お前の気持ちなんかどーでもいいんだよ。俺はお前を放っとかないから覚悟しとけ。言っとくけど俺、めちゃくちゃしつこいから」
「みたいですね……もういいです。先輩の好きにしてください」
言い争うのも面倒になったのか、影山くんは手元の弁当を見下ろしてため息をついた。
基本的に無表情の彼が、目に見えてうんざりしている。
私は光畑くんにアイコンタクトを送った。
――影山くんがうんざりしてるなんて、珍しくない?
光畑くんは二度、首を縦に振った。
レアだよ超レアだよ、と言っているようだ。
「……真渕先輩!」
光畑くんは真渕先輩に身体ごと向き直り、真渕先輩の手を握った。
「お、なになに? 愛の告白? ごめん、俺にはマユミちゃんとカエデちゃんとサキちゃんとシオリちゃんとリミちゃんとその他諸々の女の子が」
「彼女多ッ!? いやそんなことよりですね、どうか影山伊織をよろしくお願いします!」
「え、何これ、選挙? 選挙なの? 生徒会選挙終わったよね?」
頭を下げられ、真渕先輩は目をぱちくりしながら首を傾げた。
「伊織はこの通り、極度のコミュ障で人見知りで、おまけに雨男で、取柄はゲームの腕しかないっていう、もーほんっと、どーっしよーっもない奴なんですけど!」
光畑くんは大きく頭を振った。
影山くんがもの言いたげな目で見ていることに、彼は気づいているのだろうか。
「中学の一件で女性不信まで併発しちゃって、幼馴染としては超大変なんですけど! 頼まなくてもそっちからグイグイ来る先輩なら伊織を変えられる気がする! どうか先輩の愛の力で伊織を真人間にしてやってください!」
「真人間て。」
とうとう影山くんがツッコんだ!
「おう! 景都の頼みなら仕方ない、俺に任せておけ!」
ドンと自分の胸を拳で叩き、再び白い歯を煌めかせる真渕先輩。
「真渕先輩ー!」
「景都ー!」
あはははは……と、二人は爽やかに笑いながら抱き合い、そのまま夢の世界へと突入してしまった。
「…………なんなんだあれは?」
踊る二人を見て、影山くんが真顔で呟く。
「さあ……私も聞きたい」
そう答えるしかなかった。
食べ終えたお弁当をランチバッグに入れ、お茶を飲む。
「楽しそうだなあ、駆。あのノリは正直キツイなって、たまに、いや、結構頻繁に思うんだけど、そうか。光畑くんは駆と思考レベルが一緒なんだな。これからは何かあったら彼を呼ぶことにしよう」
古上先輩は私を見て微笑んだ。
私に話を振ってくれていると判断し、口を開く。
真渕先輩は両手を広げ、肩を竦めた。
「俺らにはゲーム好きっていう共通項があるんだよ? 学年を越えた友達を作る絶好のチャンスだってのに、なーんで石みたく黙ってんだよ。いまこそ人脈作りに励むべき時だろ。心の殻を突き破ろうぜ!」
白い歯を煌めかせ、真渕先輩は親指を立てた。
「いえ、結構です。卒業した後のことはそのときに考えます。ですからおれのことは放っといてください」
「だが断る」
真渕先輩は間髪入れずに答えた。
「……なんでですか。おれに構う理由がわかりません。話し相手なら他に五人もいるでしょう」
「わかってないなー、俺は伊織に興味があるって言ってんの。んで、伊織みたいなタイプはこっちから近づいて壁をぶち破らないと、いつまで経っても距離が縮まらないでしょ?」
ぱちん、とウィンクする真渕先輩。
「失礼ですけど、おれには先輩に対する興味が全くありません」
「はははは。残念でした、お前の気持ちなんかどーでもいいんだよ。俺はお前を放っとかないから覚悟しとけ。言っとくけど俺、めちゃくちゃしつこいから」
「みたいですね……もういいです。先輩の好きにしてください」
言い争うのも面倒になったのか、影山くんは手元の弁当を見下ろしてため息をついた。
基本的に無表情の彼が、目に見えてうんざりしている。
私は光畑くんにアイコンタクトを送った。
――影山くんがうんざりしてるなんて、珍しくない?
光畑くんは二度、首を縦に振った。
レアだよ超レアだよ、と言っているようだ。
「……真渕先輩!」
光畑くんは真渕先輩に身体ごと向き直り、真渕先輩の手を握った。
「お、なになに? 愛の告白? ごめん、俺にはマユミちゃんとカエデちゃんとサキちゃんとシオリちゃんとリミちゃんとその他諸々の女の子が」
「彼女多ッ!? いやそんなことよりですね、どうか影山伊織をよろしくお願いします!」
「え、何これ、選挙? 選挙なの? 生徒会選挙終わったよね?」
頭を下げられ、真渕先輩は目をぱちくりしながら首を傾げた。
「伊織はこの通り、極度のコミュ障で人見知りで、おまけに雨男で、取柄はゲームの腕しかないっていう、もーほんっと、どーっしよーっもない奴なんですけど!」
光畑くんは大きく頭を振った。
影山くんがもの言いたげな目で見ていることに、彼は気づいているのだろうか。
「中学の一件で女性不信まで併発しちゃって、幼馴染としては超大変なんですけど! 頼まなくてもそっちからグイグイ来る先輩なら伊織を変えられる気がする! どうか先輩の愛の力で伊織を真人間にしてやってください!」
「真人間て。」
とうとう影山くんがツッコんだ!
「おう! 景都の頼みなら仕方ない、俺に任せておけ!」
ドンと自分の胸を拳で叩き、再び白い歯を煌めかせる真渕先輩。
「真渕先輩ー!」
「景都ー!」
あはははは……と、二人は爽やかに笑いながら抱き合い、そのまま夢の世界へと突入してしまった。
「…………なんなんだあれは?」
踊る二人を見て、影山くんが真顔で呟く。
「さあ……私も聞きたい」
そう答えるしかなかった。
食べ終えたお弁当をランチバッグに入れ、お茶を飲む。
「楽しそうだなあ、駆。あのノリは正直キツイなって、たまに、いや、結構頻繁に思うんだけど、そうか。光畑くんは駆と思考レベルが一緒なんだな。これからは何かあったら彼を呼ぶことにしよう」
古上先輩は私を見て微笑んだ。
私に話を振ってくれていると判断し、口を開く。
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