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13:また増えた!
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一年生三人組の心が通じ合ったそのとき、廊下から騒々しい足音が聞こえた。
足音は階段を駆け上ってきて、何事かと思っている間に音楽室の扉が勢いよく開かれた。
「失礼しますっ! ……よ、良かった、まだいてくれたっ……」
息を切らしながら部屋の中に入ってきたのは、中性的な顔立ちをした美少年だった。
男子用の制服を着ていなければ女性と見間違えていた可能性は十分にある。
癖の強い、柔らかそうな栗色の髪。くりっとした大きな瞳。
身長はここにいる男性陣と比べると一番低い。
162センチの私よりも、ひょっとしたら彼のほうが低いかもしれない。
在学中に身長が伸びることを親が期待したのか、彼の制服は身体に比べて少し大きめだった。
「わーなんかまた増えたー」
「茅島さんのピアノが上手だった証拠だな」
光畑くんは面白がり、影山くんは闖入者にも動じていない。
「おやまあ、キミもゲーマーの血が騒いでやってきたお仲間さんかしら? 入口《そんなとこ》に突っ立ってないでおいでおいでー。何年生か知らないけど、同じ学生同士、遠慮は無用だよ」
真渕先輩が手招きすると、彼は私たちが集まっているピアノの近くまでやってきた。
「突然すみません。教室で弁当を食べていたら風に乗って聞き覚えのあるフレーズが耳に届いて。何か聞いたことがあるなー、なんだっけなー……そうだ、『限界突破』だ!! 呑気に弁当食べてる場合じゃない!! って、居ても立ってもいられず飛び出してきました」
彼は興奮気味に、身振り手振りを交えて説明した。
「あの難曲をここまで弾きこなせる人がいるなんて、これはもう是非お会いしてみたいと思いまして。演奏されていたのはどなたですか?」
「はい」
私が右手を上げると同時、私の左右にいた光畑くんと影山くんは手のひら全体で私を示した。
「あなたが! 凄いですね、ぼく、本当に感動しました! いえ、感動なんて言葉ではとても言い表せません。聴いていて心が震えました!」
「ありがとうございます」
両手を掴まれて、私ははにかみながら笑った。
「そんなに気に入っていただけて光栄です。私、1年2組の茅島日菜子っていうんですけど、あなたは?」
「あ、名乗りもせず失礼しました。3年4組の御厨由記《みくりやゆき》です」
『年上ーーーッ!!?』
光畑くんと真渕先輩の驚愕は合唱となり、音楽室全体を揺るがした。
足音は階段を駆け上ってきて、何事かと思っている間に音楽室の扉が勢いよく開かれた。
「失礼しますっ! ……よ、良かった、まだいてくれたっ……」
息を切らしながら部屋の中に入ってきたのは、中性的な顔立ちをした美少年だった。
男子用の制服を着ていなければ女性と見間違えていた可能性は十分にある。
癖の強い、柔らかそうな栗色の髪。くりっとした大きな瞳。
身長はここにいる男性陣と比べると一番低い。
162センチの私よりも、ひょっとしたら彼のほうが低いかもしれない。
在学中に身長が伸びることを親が期待したのか、彼の制服は身体に比べて少し大きめだった。
「わーなんかまた増えたー」
「茅島さんのピアノが上手だった証拠だな」
光畑くんは面白がり、影山くんは闖入者にも動じていない。
「おやまあ、キミもゲーマーの血が騒いでやってきたお仲間さんかしら? 入口《そんなとこ》に突っ立ってないでおいでおいでー。何年生か知らないけど、同じ学生同士、遠慮は無用だよ」
真渕先輩が手招きすると、彼は私たちが集まっているピアノの近くまでやってきた。
「突然すみません。教室で弁当を食べていたら風に乗って聞き覚えのあるフレーズが耳に届いて。何か聞いたことがあるなー、なんだっけなー……そうだ、『限界突破』だ!! 呑気に弁当食べてる場合じゃない!! って、居ても立ってもいられず飛び出してきました」
彼は興奮気味に、身振り手振りを交えて説明した。
「あの難曲をここまで弾きこなせる人がいるなんて、これはもう是非お会いしてみたいと思いまして。演奏されていたのはどなたですか?」
「はい」
私が右手を上げると同時、私の左右にいた光畑くんと影山くんは手のひら全体で私を示した。
「あなたが! 凄いですね、ぼく、本当に感動しました! いえ、感動なんて言葉ではとても言い表せません。聴いていて心が震えました!」
「ありがとうございます」
両手を掴まれて、私ははにかみながら笑った。
「そんなに気に入っていただけて光栄です。私、1年2組の茅島日菜子っていうんですけど、あなたは?」
「あ、名乗りもせず失礼しました。3年4組の御厨由記《みくりやゆき》です」
『年上ーーーッ!!?』
光畑くんと真渕先輩の驚愕は合唱となり、音楽室全体を揺るがした。
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