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11:さらに二人の先輩が釣られたようです(2)
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「ではいきます」
私は息を吐いてから、再び鍵盤に指を走らせた。
二曲続けての演奏が終わると、再び二人は拍手し、褒め称えてくれた。
「茅島さんって本当に凄いな。プロになれるんじゃね?」
「控えめに言って天才だと思う」
「あはは、それ全然控えめじゃないよ。でもありがとう。嬉しい」
興奮に上気した光畑くんの顔と、大真面目に私を讃える影山くんを見て、自然と頬が緩む。
大変だったけど、頑張って練習して良かった。
昨日なんて、お母さんに「近所迷惑になるからもう止めなさい」って言われるまでずーっとピアノに齧りついてたもんね。
ここまで練習したのって、中学の合唱コンクールで伴奏を任されたとき以来だわ。
晴れやかな気持ちで笑っていると、不意に影山くんが扉を見やった。
「?」
つられて扉を見るけれど、誰もいない。
窓ガラス部分からは廊下の風景が見えるだけだ。
でも、影山くんは何かが引っ掛かったらしく、無言でそちらへ行き、扉を引き開けた。
「何してるんですか」
扉の陰に向かって影山くんが言った。
誰かいるらしい。
光畑くんと顔を見合わせてから後を追うと、廊下に二人の男子生徒がいた。
二人とも抜群の美少年だった。
ただしタイプは真逆だ。清楚系とワイルド系。
ワイルド系の男子は知らないけれど、清楚系の男子には見覚えがある。
まさかこの高校で知らない生徒はいないだろう。
先日行われた生徒会選挙で、誰より多くの注目を浴びながら、凛と講堂の壇上に立っていた人なのだから。
「古上《こがみ》先輩?」
古上誠一郎。
一つ年上の先輩で、赤咲高校の理事長の孫。
イケメン好きの女子から聞いた情報によれば、家は大金持ちで、実家は豪邸だとかなんとか。
彼は生徒の模範たる生徒会長に相応しく、艶やかな髪を整え、夏服のシャツのボタンもきっちり締めていた。
そんな彼の隣にいるのは派手に制服を着崩した男子だ。
髪は無造作に跳ね、耳には校則違反のピアスまでつけている。
品行方正そうな古上先輩と、見るからに軽薄そうな先輩という正反対の組み合わせ……謎だ。
「邪魔してごめんねー? 上のパソコン室にいたんだけど、ゲームの曲が聞こえたからつられて来ちゃった。入っていーい?」
制服を着崩した男子が明るく言った。
「どうぞ」
何を考えているのか、何も考えていないのか判然としない無表情で、影山くんは上級生らしき男子と古上先輩を音楽室に招き入れ、後ろ手に扉を閉めた。
「君たち、1年?」
「はい」
「じゃあ自己紹介しよう。俺は2年3組の真渕駆《まぶちかける》、こっちはご存じ、我らが赤咲の生徒会長古上誠一郎くんです! ちなみに俺と同じクラスです!」
「……そうですか」
影山くんは静かに相槌を打った。
一拍間が空いたのは、真渕先輩のノリについていけないからかもしれない。
私は息を吐いてから、再び鍵盤に指を走らせた。
二曲続けての演奏が終わると、再び二人は拍手し、褒め称えてくれた。
「茅島さんって本当に凄いな。プロになれるんじゃね?」
「控えめに言って天才だと思う」
「あはは、それ全然控えめじゃないよ。でもありがとう。嬉しい」
興奮に上気した光畑くんの顔と、大真面目に私を讃える影山くんを見て、自然と頬が緩む。
大変だったけど、頑張って練習して良かった。
昨日なんて、お母さんに「近所迷惑になるからもう止めなさい」って言われるまでずーっとピアノに齧りついてたもんね。
ここまで練習したのって、中学の合唱コンクールで伴奏を任されたとき以来だわ。
晴れやかな気持ちで笑っていると、不意に影山くんが扉を見やった。
「?」
つられて扉を見るけれど、誰もいない。
窓ガラス部分からは廊下の風景が見えるだけだ。
でも、影山くんは何かが引っ掛かったらしく、無言でそちらへ行き、扉を引き開けた。
「何してるんですか」
扉の陰に向かって影山くんが言った。
誰かいるらしい。
光畑くんと顔を見合わせてから後を追うと、廊下に二人の男子生徒がいた。
二人とも抜群の美少年だった。
ただしタイプは真逆だ。清楚系とワイルド系。
ワイルド系の男子は知らないけれど、清楚系の男子には見覚えがある。
まさかこの高校で知らない生徒はいないだろう。
先日行われた生徒会選挙で、誰より多くの注目を浴びながら、凛と講堂の壇上に立っていた人なのだから。
「古上《こがみ》先輩?」
古上誠一郎。
一つ年上の先輩で、赤咲高校の理事長の孫。
イケメン好きの女子から聞いた情報によれば、家は大金持ちで、実家は豪邸だとかなんとか。
彼は生徒の模範たる生徒会長に相応しく、艶やかな髪を整え、夏服のシャツのボタンもきっちり締めていた。
そんな彼の隣にいるのは派手に制服を着崩した男子だ。
髪は無造作に跳ね、耳には校則違反のピアスまでつけている。
品行方正そうな古上先輩と、見るからに軽薄そうな先輩という正反対の組み合わせ……謎だ。
「邪魔してごめんねー? 上のパソコン室にいたんだけど、ゲームの曲が聞こえたからつられて来ちゃった。入っていーい?」
制服を着崩した男子が明るく言った。
「どうぞ」
何を考えているのか、何も考えていないのか判然としない無表情で、影山くんは上級生らしき男子と古上先輩を音楽室に招き入れ、後ろ手に扉を閉めた。
「君たち、1年?」
「はい」
「じゃあ自己紹介しよう。俺は2年3組の真渕駆《まぶちかける》、こっちはご存じ、我らが赤咲の生徒会長古上誠一郎くんです! ちなみに俺と同じクラスです!」
「……そうですか」
影山くんは静かに相槌を打った。
一拍間が空いたのは、真渕先輩のノリについていけないからかもしれない。
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