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16:ただの知り合い
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「お待たせしました」
話が途切れたタイミングで、注文していたパンケーキとシナモンロールが届いた。
私が注文したシナモンロールは丸いお皿に載っていて、他のお店で出されるものと見た目に大きな違いはない。
けれど、パンケーキは衝撃的。
漣里くんの前に置かれた正方形のお皿には、四枚のパンケーキと、フルーツとホイップクリームがこれでもかと盛られている。
店員さんは四つのシロップを持ってきた。
二種類のメープルシロップと、ストロベリーとブルーベリーのシロップ。
「……確かにこれは凄いボリュームだな」
店員さんが立ち去った後で、漣里くんが呟いた。
「写真撮る?」
「いや、いい。インスタとかやってないし、写真を撮る趣味もない」
「私も。シナモンロールの味見してみない? このお店はシナモンロールも絶品なんだって」
「……食べる。パンケーキも切るから、味見して」
「うん」
私はシナモンロールを切り分け、漣里くんのお皿にのせた。
お返しとばかりに、漣里くんも小さく切ったパンケーキを私のお皿にのせた。
「おいしい」
漣里くんはシナモンロールを一口食べて、小さく笑った。
「そっか、良かった」
「…………」
漣里くんは何故か、じっと私を見つめた。
「どうかしたの?」
「先輩は俺が喜ぶと笑うな」
「? それって普通のことじゃないの?」
誰かが喜んでいるのを見ると、嬉しくなって自然に笑顔が浮かぶものじゃないんだろうか。
好意を抱いている相手ならなおさら――あ、いや、特別な『好き』という意味じゃなくて、あくまで友人として、ね。
漣里くんはシロップを見た。
どれにしようか迷った様子の後で、色が濃いほうのメープルシロップを手に取ってクリームにかけた。
ナイフとフォークを使ってパンケーキを切り、クリームをつけて一口。
うん、というように軽く頷いて、また食べる。
「………………」
やばい、何この人、可愛い。
無表情なのに、背後に花が咲いているのがわかって、私は必死で笑いをこらえた。
会話の合間にシナモンロールを口に運ぶ。
それからしばらくして、片手に水を持ったウェイトレスさんがやってきた。
「お水のお代わりはいかがでしょうか?」
「あ、お願いします。漣里くんは?」
「いい」
私の水を注ぎ足した後、ウェイトレスさんは私たちを交互に見て笑った。
「羨ましいですねぇ。夏休みにカップルでデートなんて」
「そんな……」
「カップルじゃないです。俺たちはただの知り合いなので」
頭を思いっきり殴られたようなショックを受けた。
ただの知り合い。
彼ははっきりとそう言った。
「あ、そう……なんですか」
私はいまどんな表情をしているんだろう。
わからないけれど、ウェイトレスさんは私を見て、困ったような愛想笑いを浮かべた。
「それでは、何かありましたらお呼びください」
ウェイトレスさんはそそくさと退散していった。
漣里くんは何事もなかったように、再びパンケーキを食べ始めた。
私もシナモンロールを口に運ぶ。
「…………」
どうしてだろう。
おいしいはずなのに、味を感じなかった。
話が途切れたタイミングで、注文していたパンケーキとシナモンロールが届いた。
私が注文したシナモンロールは丸いお皿に載っていて、他のお店で出されるものと見た目に大きな違いはない。
けれど、パンケーキは衝撃的。
漣里くんの前に置かれた正方形のお皿には、四枚のパンケーキと、フルーツとホイップクリームがこれでもかと盛られている。
店員さんは四つのシロップを持ってきた。
二種類のメープルシロップと、ストロベリーとブルーベリーのシロップ。
「……確かにこれは凄いボリュームだな」
店員さんが立ち去った後で、漣里くんが呟いた。
「写真撮る?」
「いや、いい。インスタとかやってないし、写真を撮る趣味もない」
「私も。シナモンロールの味見してみない? このお店はシナモンロールも絶品なんだって」
「……食べる。パンケーキも切るから、味見して」
「うん」
私はシナモンロールを切り分け、漣里くんのお皿にのせた。
お返しとばかりに、漣里くんも小さく切ったパンケーキを私のお皿にのせた。
「おいしい」
漣里くんはシナモンロールを一口食べて、小さく笑った。
「そっか、良かった」
「…………」
漣里くんは何故か、じっと私を見つめた。
「どうかしたの?」
「先輩は俺が喜ぶと笑うな」
「? それって普通のことじゃないの?」
誰かが喜んでいるのを見ると、嬉しくなって自然に笑顔が浮かぶものじゃないんだろうか。
好意を抱いている相手ならなおさら――あ、いや、特別な『好き』という意味じゃなくて、あくまで友人として、ね。
漣里くんはシロップを見た。
どれにしようか迷った様子の後で、色が濃いほうのメープルシロップを手に取ってクリームにかけた。
ナイフとフォークを使ってパンケーキを切り、クリームをつけて一口。
うん、というように軽く頷いて、また食べる。
「………………」
やばい、何この人、可愛い。
無表情なのに、背後に花が咲いているのがわかって、私は必死で笑いをこらえた。
会話の合間にシナモンロールを口に運ぶ。
それからしばらくして、片手に水を持ったウェイトレスさんがやってきた。
「お水のお代わりはいかがでしょうか?」
「あ、お願いします。漣里くんは?」
「いい」
私の水を注ぎ足した後、ウェイトレスさんは私たちを交互に見て笑った。
「羨ましいですねぇ。夏休みにカップルでデートなんて」
「そんな……」
「カップルじゃないです。俺たちはただの知り合いなので」
頭を思いっきり殴られたようなショックを受けた。
ただの知り合い。
彼ははっきりとそう言った。
「あ、そう……なんですか」
私はいまどんな表情をしているんだろう。
わからないけれど、ウェイトレスさんは私を見て、困ったような愛想笑いを浮かべた。
「それでは、何かありましたらお呼びください」
ウェイトレスさんはそそくさと退散していった。
漣里くんは何事もなかったように、再びパンケーキを食べ始めた。
私もシナモンロールを口に運ぶ。
「…………」
どうしてだろう。
おいしいはずなのに、味を感じなかった。
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