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54:クリーンヒット
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(……諦めよう)
菜乃花は腹を括った。
胸の中では膨大な感情が渦巻いているが、自分自身で処理するしかない。
元より、菜乃花の感情など総司には関係ないのだから。
「……わかりま――」
「兄貴」
菜乃花の台詞を遮って、千影が総司に呼びかけた。
「俺、数学の抜き打ちテストで20点だった」
「……悲惨だね」
総司は憐れむような目で弟を見た。
「ああ。100点が当然の兄貴にとっては悲惨でしかないだろうけど、前のテストじゃ9点だったんだ。これでも倍以上の点数だったんだよ。そしてそれを、園田さんは凄いって褒めてくれた。20点取れたのは園田さんのおかげなんだ」
千影は菜乃花に顔を向けてから、再び総司に目を戻した。
「俺は毎日園田さんに勉強を教えてもらってる。中間は赤点を三つも取ってしまったけど、期末は頑張ろうと思ってる。そのためにも、園田さんがいなくなったら困るんだ」
「千影が園田さんに勉強を教わってるのは知ってるよ。で?」
問い詰める総司の視線は氷のように冷ややかだ。
「怪我が治っても家庭教師として引き続き園田さんを0号館に住まわせたい。だからおれに矢面に立て、園田さんの寮費その他一切を負担しろと?」
「ああ。兄貴ならできる。多少の無理でも通せるだろ?」
「はっ。なんでおれがお前のためにわざわざそんなこと――」
あくまで優位の姿勢を崩すことなく、鼻で笑った総司だが――
「お願い、おにーちゃん」
千影が胸の前で両手を組み、棒読みでそう言った瞬間、
「…………っ!!」
総司はクリーンヒットを喰らったかのように仰け反った。
(あ、いまの台詞、多分『スウィート・マイ・ガール』の妹尾《せのお》ねねこの真似だ)
妹キャラとして、ねねこはプレイヤーを「おにーちゃん」と慕うのだ。
「ちょ、な、いきなり何……っ、誰に吹き込まれた!? 要か!? 大河か!?」
頬を紅潮させて狼狽する総司に、千影は畳みかけた。
菜乃花は腹を括った。
胸の中では膨大な感情が渦巻いているが、自分自身で処理するしかない。
元より、菜乃花の感情など総司には関係ないのだから。
「……わかりま――」
「兄貴」
菜乃花の台詞を遮って、千影が総司に呼びかけた。
「俺、数学の抜き打ちテストで20点だった」
「……悲惨だね」
総司は憐れむような目で弟を見た。
「ああ。100点が当然の兄貴にとっては悲惨でしかないだろうけど、前のテストじゃ9点だったんだ。これでも倍以上の点数だったんだよ。そしてそれを、園田さんは凄いって褒めてくれた。20点取れたのは園田さんのおかげなんだ」
千影は菜乃花に顔を向けてから、再び総司に目を戻した。
「俺は毎日園田さんに勉強を教えてもらってる。中間は赤点を三つも取ってしまったけど、期末は頑張ろうと思ってる。そのためにも、園田さんがいなくなったら困るんだ」
「千影が園田さんに勉強を教わってるのは知ってるよ。で?」
問い詰める総司の視線は氷のように冷ややかだ。
「怪我が治っても家庭教師として引き続き園田さんを0号館に住まわせたい。だからおれに矢面に立て、園田さんの寮費その他一切を負担しろと?」
「ああ。兄貴ならできる。多少の無理でも通せるだろ?」
「はっ。なんでおれがお前のためにわざわざそんなこと――」
あくまで優位の姿勢を崩すことなく、鼻で笑った総司だが――
「お願い、おにーちゃん」
千影が胸の前で両手を組み、棒読みでそう言った瞬間、
「…………っ!!」
総司はクリーンヒットを喰らったかのように仰け反った。
(あ、いまの台詞、多分『スウィート・マイ・ガール』の妹尾《せのお》ねねこの真似だ)
妹キャラとして、ねねこはプレイヤーを「おにーちゃん」と慕うのだ。
「ちょ、な、いきなり何……っ、誰に吹き込まれた!? 要か!? 大河か!?」
頬を紅潮させて狼狽する総司に、千影は畳みかけた。
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