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66:歓迎会(5)

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「頑張ってる千影くんはさておき、オレからもプレゼントでーす」
 大河はソファから立ち上がって箱を手に取り、差し出してきた。
 許可を得て開けてみると、白い帽子が入っている。
 ピンクのリボンが華やかだ。

「わあ、今日有紗に買ってもらった服に似合いそう……。……? もしかして」
 ぴんと来て、有紗と大河を交互に見ると、有紗は笑って頷いた。

「あのとき撮った写真は先輩たちに送っていたのよ。乾先輩はそれを見て、この帽子を買ったってわけ」
「ありがとうございます。大事にします」
 帽子の入った箱を胸に抱きしめる。

「はい。ぼくはこれ」
 総司に渡された箱の中にはストラップ付きのパンプスが入っていた。
 これもまた有紗が買ってくれた服に似合いそうなデザインだ。

 菜乃花がヒールに慣れていないことを杏から教わったのか、靴底はほとんどぺたんこで、生地にはそれなりに伸縮性があり、履きやすそうだった。

「凄い、ぴったり……」
 試しに履いてみて、菜乃花は感嘆した。

「園田さんの足のサイズは伏見さんから聞いてたからね」
「できた」
 一連のやり取りの間、ひたすら菜乃花の髪を弄っていた千影が手を放した。

「どうぞ」
 杏がすっと進み出て、菜乃花に手鏡を渡してきた。
 手鏡で自分の姿を確認してみると、不格好ではあるが、一応髪はポニーテイルになっている。

「……髪、全部結えてないな」
「うん。まとめ方が甘くて、左側が瘤みたいに膨らんでるし」
「リボンが傾いてるわね」
 それなりに千影とは付き合いが長いからか、寮生たちの評価は手厳しい。

「だから俺にやらせるなって言ったんだ……」
 千影は頬を朱に染めた。
 その隙に、千影の手からは用済みになった櫛を、菜乃花の手からは手鏡を回収し、杏が速やかに下がる。

「ケーキだって、無難に店で買おうって言ったのに。手作りの方がいいって強引に押し切っておいて、仕上げは全部俺に押し付けて。結局大惨事になっただろ。兄貴がやったほうが絶対良かった」
 千影は拗ねたような目で総司を見たが、総司はソファの対面で足を組み、知らん顔をしている。

「ケーキ? ケーキまで用意してくれてるの?」
「ああ、うん。園田さんたちが出かけてる間に、兄貴たちと三人で作ったんだ。でも、出来は期待しないで。仕上げのデコレーション作業は兄貴が手伝ってくれなかった。大河だって『お前がやることに意義があるんだ』とかなんとか言って、逃げたし……」

 空気を読んだ守屋が退室し、ケーキを載せた盆を両手に持って戻ってきた。

 菜乃花が好きなイチゴをふんだんに使ったホールケーキは、幼稚園児が製作者だと言われても納得してしまいそうな出来栄えだった。

 塗られたクリームの層は各所で厚みが違うし、本来縁に沿って等間隔に絞り出されるはずのホイップクリームは間隔も大きさも見事にばらばらだ。

「あの……味はまともだから。仕上げ以外の作業は兄貴たちが手伝ってくれたから」
 ますます顔を赤くし、千影が小さな声で言った。
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