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48:憂鬱な朝(1)

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 制服に着替えて食堂へ行くと、既に四人の寮生全員が着席していた。
 彼らの傍で三人の使用人が給仕している。

 今日の朝食はエッグベネディクトだ。
 パンとハムの焼けた良い香りが鼻腔をくすぐり、空っぽの胃が小さく鳴る。

 大きな長方形のテーブルの中央には青を基調としたアジサイとデルフィニュウムの花が活けられ、食卓を華やかに彩っていた。

「おはよう」
「はよー」
「おはよう」
「……おはよう」
 四人がそれぞれ挨拶してくる。

 一番元気がいいのが大河で、もっともテンションが低いのが千影だ。
 朝に弱い彼は眠たそうな半眼で、リスのように頬を軽く膨らませ、エッグベネディクトを食べている。

「おはようございます」
 先輩がいるため敬語を使って挨拶し、菜乃花は有紗の隣に座った。

「お飲み物は何に致しましょう?」
 0号館に住み込みで働く守屋《もりや》が訊いてきた。
 彼は使用人の長で、年齢は四十代くらい。
 笑顔の素敵な紳士である。

「カフェオレでお願いします」
「かしこまりました」
 会釈して、守屋は厨房へと引っ込んだ。

「リボン、可愛いわね。似合ってるわ」
 ブラックのコーヒーを一口飲んで、有紗が微笑んだ。

「ありがとう」
 照れくさくなり、逃げるように視線を逸らす。
 逃げた視線の先には千影がいたが、彼はこちらを見ていない。

「ねえ、天坂くんもそう思わない? リボンつけてる菜乃花、可愛いわよね」
 菜乃花の気持ちを知る有紗が話を振った。

「ちょっと! いいって!」
 菜乃花は赤面して有紗の腕を引っ張ったが、時すでに遅し。
 千影がこちらを向き、仄かな期待にドキリとする。

「……ああ。珍しいな」
「違ぇだろ」
 横からすかさず大河がツッコんだ。

「女子がお洒落したら褒めるのが紳士ってもんだ。そんなんだから千影はモテねーんだよ、ほらやり直し」
「……可愛いですね?」
 これで良いのか、という顔で千影が大河を見る。
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