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103:地下牢にて(2)

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「……ここは、どこだ?」
 子どもの姿になったため自然と声も高くなり、自分でも変な感じがした。
 とにかく情報が欲しい。
 いま何日か、あれからどうなったのか。
 フィーネは無事に逃げ切れたのか。
 服の礼を言うつもりはなかった。
 そもそも服のサイズが合わなくなったのはこいつのせいだ。

「教えてあげる義理はないわね。それに、知ってもしょうがないわよ。どうせあなたはあさって死ぬから」
 ということは、あさってが満月。今日は襲撃された日の翌日。
 いまは夜なのか、朝なのか。
 首が動く範囲で見回しても、窓がないため判断できない。

「……じゃあ、せめて時間だけでも教えてくれ」
「そうね。とっくに昼を回ったわ。よく寝てたわよ、あなた。時々酷く魘されてたけど。怖い夢でも見てたの? だとしたらどうしてかしらね? こんな可愛らしい子どもになって。可哀想に」
 ミレーヌは顎に指を当て、くすくす笑った。

(……悪趣味な女だ)
 ここまで腹立たしい人間には久しぶりに会った。
 この女と喋っていると嫌悪感しか生まれない。

 ミレーヌは急にハクアの左手、壁際の燭台に手を伸ばし、取り上げた。
 何をするつもりなのだろう。ハクアは動けない。
 嫌な予感に、身が強張った。

 ミレーヌは身構えたハクアの目に蝋燭を近づけた。
 目を焼く光が飛び込んで来る。
「!」
 眩しさのあまり顔を逸らそうとすると、逃がさないとばかりに首を鷲掴みにされた。
「ああ――昨日は暗くてよくわからなかったけれど、こうして光の下で見る目のなんと美しいこと! これがもうすぐ私のものになると思うと堪らないわ」
 蝋燭の光が眩しい。
 細い指が首に食い込む。皮膚に爪が刺さる。
 喉元を押さえつけられ、反射的に咳が出そうになったが、それすらも圧迫されて許されない。
 
「《月光宝珠》に比べれば、ダイヤモンドもサファイアもただの石くれよ。もう要らない。私、あなたの目さえあれば何も要らないわ」
 ミレーヌは恍惚の表情を浮かべ、その手をハクアの首から顔へと移動させた。
 白い繊手、その整えられたピンクの爪先が、ハクアの目じりを強く押す。
 力を込めれば抉ることだってできる――考えて総毛だった。
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