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93:叫び(4)
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「…………っ!!」
悲鳴も上げられず柵の向こうへ転落する。
地面に身体の側面を打ち付けたが、左腕の痛みは遥かにそれを凌駕した。
空から降りしきる雨が全身を打ち、鮮血がじわりと袖を染める。
(痛い。痛いよお)
腕を抱えて歯を食いしばり、なんとか上体を起こす。
掠めただけでこんなに痛いなら、胸を刺されたハクアはどれほど痛かっただろう。
後悔と激痛で涙が溢れ、雨に混ざって頬をいくつも滑り落ちた。
砂利を踏む音がする。
降りしきる雨の中、五人の男女は次々と柵を越え、座り込んだままのフィーネを取り囲んだ。
(もうダメだ)
ぎゅっと目を閉じて身体を丸める。
ごめんなさいと思った。謝りたかった。ハクアに、トウカに、新菜に、侯爵家の皆に――
「疾風乱舞《ウィンドブレイズ》!」
絶望を切り裂くように、エルダの声がした。
驚いて目を開けると、突如起こった風が吹き荒れ、数人をまとめて吹き飛ばし、あるいはたたらを踏ませた。
(えっ)
一拍遅れてエルダとレイが柵を飛び越えてきた。
交戦が始まる。
身体を打ち、叩き、あるいは剣を打ち鳴らす騒々しい金属音がすぐ傍で何度も弾ける。いくつか悲鳴も交じった。
呆然と見ている間に、エルダとレイは次々に五人を叩きのめしていった。
(……凄い)
五人が地に伏す光景が信じられなかった。
最強の傭兵はここにはいないが、それでも彼らは精鋭だったはずなのに。
「ニナ、大丈夫!?」
エルダは息を弾ませてフィーネの前に膝をついた。
フィーネが押さえている腕を見て顔をしかめ、ポケットからハンカチを引っ張り出し、腕力で引き裂く。
「叫び声が聞こえたから駆けつけてみれば、何よこれどうなってるの!? ハクアさんはどうしたのよ!?」
まくしたてながら、エルダはハンカチでフィーネの左腕をきつく縛り上げた。
安堵で顔が大きく歪む。溜まった涙が飽和する。
「ニナ?」
レイがエルダの隣にしゃがみ、心配そうに名を呼んだ。
でも、フィーネは新菜ではない。嘘をついている。
その嘘により、フィーネはハクアを陥れた。
いまもハクアは苦しんでいる。
全て自分のせいだ。
「う、うう、うぅーっ」
堪らなくなって、フィーネは泣きじゃくり、エルダに縋りついて叫んだ。
「お願い、ハクア様を、ハクア様を助けて!!」
悲鳴も上げられず柵の向こうへ転落する。
地面に身体の側面を打ち付けたが、左腕の痛みは遥かにそれを凌駕した。
空から降りしきる雨が全身を打ち、鮮血がじわりと袖を染める。
(痛い。痛いよお)
腕を抱えて歯を食いしばり、なんとか上体を起こす。
掠めただけでこんなに痛いなら、胸を刺されたハクアはどれほど痛かっただろう。
後悔と激痛で涙が溢れ、雨に混ざって頬をいくつも滑り落ちた。
砂利を踏む音がする。
降りしきる雨の中、五人の男女は次々と柵を越え、座り込んだままのフィーネを取り囲んだ。
(もうダメだ)
ぎゅっと目を閉じて身体を丸める。
ごめんなさいと思った。謝りたかった。ハクアに、トウカに、新菜に、侯爵家の皆に――
「疾風乱舞《ウィンドブレイズ》!」
絶望を切り裂くように、エルダの声がした。
驚いて目を開けると、突如起こった風が吹き荒れ、数人をまとめて吹き飛ばし、あるいはたたらを踏ませた。
(えっ)
一拍遅れてエルダとレイが柵を飛び越えてきた。
交戦が始まる。
身体を打ち、叩き、あるいは剣を打ち鳴らす騒々しい金属音がすぐ傍で何度も弾ける。いくつか悲鳴も交じった。
呆然と見ている間に、エルダとレイは次々に五人を叩きのめしていった。
(……凄い)
五人が地に伏す光景が信じられなかった。
最強の傭兵はここにはいないが、それでも彼らは精鋭だったはずなのに。
「ニナ、大丈夫!?」
エルダは息を弾ませてフィーネの前に膝をついた。
フィーネが押さえている腕を見て顔をしかめ、ポケットからハンカチを引っ張り出し、腕力で引き裂く。
「叫び声が聞こえたから駆けつけてみれば、何よこれどうなってるの!? ハクアさんはどうしたのよ!?」
まくしたてながら、エルダはハンカチでフィーネの左腕をきつく縛り上げた。
安堵で顔が大きく歪む。溜まった涙が飽和する。
「ニナ?」
レイがエルダの隣にしゃがみ、心配そうに名を呼んだ。
でも、フィーネは新菜ではない。嘘をついている。
その嘘により、フィーネはハクアを陥れた。
いまもハクアは苦しんでいる。
全て自分のせいだ。
「う、うう、うぅーっ」
堪らなくなって、フィーネは泣きじゃくり、エルダに縋りついて叫んだ。
「お願い、ハクア様を、ハクア様を助けて!!」
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