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51:守りたいと思っただけなんです(2)

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 新菜は銀色の髪に手を伸ばそうとして、引っ込めた。
 複数人の足音がする。話し声も。
(一人、二人……三人?)
「ああ、いたいた。すみませーん」
 玄関先から姿を表したのは、予想通り三人の若い男だった。
 いずれも軽装、一目見ただけで冒険者とわかる出で立ちだ。
 左右の茶髪と緑髪の二人は銅、真ん中にいる金髪の男は銀の徽章を服につけていた。
 仮にリーダー格らしき金髪を若者A、茶髪をB、緑髪をCとしよう。

「この家のメイドさんですか?」
「……そうですけど」
 一見すると好青年にしか見えない若者Aの質問に答えながら、新菜は背後を気にしていた。
 虹色の瞳を見ればハクアが人間でないのはすぐにわかることだ。
 この冒険者たちが《月の使者》の存在を知っていれば厄介なことになる。
 早急に場所を変えるべきだ。

「いま主人が寝ていますから、お静かに願います。とりあえずこちらへ――」
 案内しようとした新菜の脇をすり抜け、若者Bがハンモックへ向かった。
「ちょっと! 主人に近づかないで!!」
 つい声を荒らげてしまい、すぐに反省して声量を落とす。

「話なら向こうで聞くと言ってるでしょう」
 若者Bの前に立ち塞がり、睨みつける。
「わざわざ場所を移動するほどのことじゃないんですよ。竜を見なかったか聞きたいだけなんで」
「竜……?」
 ものすっごく嫌な予感がする。

「満月の夜にこの辺りの空を飛んでいたという目撃情報があったんですよ」
 と、若者Aがにこにこしながら若者Bの言葉を引き継いだ。
「ただの竜じゃないんです。虹色の瞳を持つ、非常に稀少な銀竜です」
(ぎゃー!!)
 嫌な予感、大当たり。

「そいつを狩れば百万、いや、一千万ギニーにはなります。心当たりはありませんか?」
「ありません。そんな稀少な竜が本当に飛んでいたんですか? 失礼ですけど、見間違いなのでは?」
 努めて平静に答えたが、新菜の背中は汗で濡れていた。
 まずい。非常にまずい。
 いまハクアが起きたら修羅場だ。

「いいえ、確かな情報なんです。ところで、後ろで寝てるのは獣人の子どもですよね?」
「ええ」
 新菜との契約により額の角を失ったトウカはただの獣人にしか見えないらしい。好都合だ。

「もう一人の方は人間ですか? とても綺麗な銀髪と、白い肌の持ち主みたいですが」
「もちろんです」
「では、確認させてください。《月の使者》は人間に姿を変えることができるらしいんですよ。目を見ればすぐわかりますから」
 言いながら若者Aがハクアに近づこうとしたため、新菜はハクアをすぐ後ろに庇った。
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