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49:とある執事の憂鬱(4)
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「……ふん。せっかくあの《月光宝珠》が手に入るチャンスがあるっていうのに、誰が諦めるものですか。絶対に手に入れてやるんだから。――どんな手を使ってでもね」
ミレーヌはポケットから取り出した紙を開き、口の端を歪めた。
彼女が手に持つ紙。
それは、オルハーレン侯爵邸で来月開かれる仮面舞踏会への招待状だった。
気を取り直して二階の廊下を歩いていると、メイドたちに混じって、雑巾を片手に窓拭きしている少女を見かけた。
少女の頭には猫を思わせる黒い耳が、そのスカートからは細い尻尾が生えていた。
彼女はアルベルトが賭博で巻き上げた幻獣だ。
獣型になったり人型になったりする、幻獣なんだか神獣なんだか不明な生物。
仮にも幻獣のくせに人間と契約もできない出来損ないで、使える魔法も風変わりなもの、ただ一つだけ。
最初はアルベルトもミレーヌもその魔法を楽しんでいたが、もうすっかり飽きていた。
そろそろ闇オークションに出品して売り払おうかと思っていたところだ。
「あ、ミレーヌ様。ちょうど良いところに! 見てくださいです、フィーネ、頑張ったですよ! ピカピカになりましたです!」
幻獣は窓を指さしてにこにこ笑った。
(ああ、そうだ。こいつの魔法はきっと役に立つ。どうせオークションに出したところで大した値はつかないでしょうし、《月光宝珠》を手に入れるための捨て駒にしましょう。もう三カ月も世話をしてやったんだもの、十分よね?)
磨き上げられたガラス窓には見向きもせず、ミレーヌは幻獣を見つめて思案した。
「どうされたですか?」
「ねえ、フィーネ。私、あなたにお願いがあるのだけれど」
猫なで声で言いながら、幻獣の黒髪を指で梳く。
「フィーネにお願いですか!? はい、はい、喜んで! ミレーヌ様のお役に立てるなら、頑張りますです!」
幻獣は喜びを顔いっぱいに表し、決意を示すように小さな手を握り締めた。
「ふふ、ありがとう」
(愚鈍な馬鹿は操りやすくて助かるわ)
ミレーヌは優しく微笑み、話し始めた。
ミレーヌはポケットから取り出した紙を開き、口の端を歪めた。
彼女が手に持つ紙。
それは、オルハーレン侯爵邸で来月開かれる仮面舞踏会への招待状だった。
気を取り直して二階の廊下を歩いていると、メイドたちに混じって、雑巾を片手に窓拭きしている少女を見かけた。
少女の頭には猫を思わせる黒い耳が、そのスカートからは細い尻尾が生えていた。
彼女はアルベルトが賭博で巻き上げた幻獣だ。
獣型になったり人型になったりする、幻獣なんだか神獣なんだか不明な生物。
仮にも幻獣のくせに人間と契約もできない出来損ないで、使える魔法も風変わりなもの、ただ一つだけ。
最初はアルベルトもミレーヌもその魔法を楽しんでいたが、もうすっかり飽きていた。
そろそろ闇オークションに出品して売り払おうかと思っていたところだ。
「あ、ミレーヌ様。ちょうど良いところに! 見てくださいです、フィーネ、頑張ったですよ! ピカピカになりましたです!」
幻獣は窓を指さしてにこにこ笑った。
(ああ、そうだ。こいつの魔法はきっと役に立つ。どうせオークションに出したところで大した値はつかないでしょうし、《月光宝珠》を手に入れるための捨て駒にしましょう。もう三カ月も世話をしてやったんだもの、十分よね?)
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「どうされたですか?」
「ねえ、フィーネ。私、あなたにお願いがあるのだけれど」
猫なで声で言いながら、幻獣の黒髪を指で梳く。
「フィーネにお願いですか!? はい、はい、喜んで! ミレーヌ様のお役に立てるなら、頑張りますです!」
幻獣は喜びを顔いっぱいに表し、決意を示すように小さな手を握り締めた。
「ふふ、ありがとう」
(愚鈍な馬鹿は操りやすくて助かるわ)
ミレーヌは優しく微笑み、話し始めた。
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