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40:契約ともふもふ堪能タイム(4)
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「……って、トウカ!?」
悲鳴じみた声をあげ、床に跪いてがっしとトウカの両肩を掴む。
「額の三本の角は!? どこに行ったの!?」
「ニナの身体の中でパルスとして巡ってる。契約を破棄したら戻るよ」
「どんな仕組みっ!? ほんとにわたしと契約しちゃって良かったの!? 魔法が使えなくなっちゃったんでしょ!? 後悔しない!?」
「うん。しない」
「……どうしてそう言い切れるの?」
迷いなく顎を引いたトウカを見て、新菜は困惑した。
全幅の信頼を寄せてくれるのは嬉しいが、自分にその資格と、それを受け止める覚悟はあるのだろうか。
「だって、ニナはぼくのことを大事に想ってくれてる。これまでぼくを追いかけて来た人間は、みんな契約しろ、魔力を寄越せって、自分勝手な人ばっかりだった。でも、ニナは自分のことよりも、ぼくの気持ちを考えてくれた。ぼくはニナのことが好きだよ」
「…………」
「ぼくはこれからもずっと、ハクアとニナと一緒にいたいの。後悔なんて、するわけないよ」
トウカは笑った。
曇りのない笑顔に、胸が引き絞られるように痛む。
(わたしは一体何を弱気になってるのよ。トウカは文字通り全てを託してくれたのに。なら、わたしがすべきことなんて、決まってるじゃない)
思い出せ。自分は何のために強くなろうと思ったのか。
新菜はぱんっと自分の頬を叩いて気合を入れた。
びっくりしているトウカの小さな両手を握り締め、言う。
「わたしはこの身にかけてトウカを守ると誓うわ。トウカがくれた力で、トウカもハクア様も必ず幸せにしてみせる! 約束する!!」
「……何故そこにおれを含める?」
ハクアが冷静に突っ込んだが、新菜は華麗にスルーした。
「ありがとう。よろしくね」
トウカは新菜の手を握り返し、無垢な天使のような笑顔を浮かべた。
(はああああ可愛い……なんだこの可愛い生き物は……!! この笑顔は反則でしょう……!!)
「うんっ!!」
感極まって、体当たりするようにトウカを抱きしめる。
トウカの尻尾がぱたぱた揺れた。もふもふの尻尾だ。辛抱たまらん。
いまなら言える。新菜はそう判断し、抱擁を解いて訊いた。
「ねえ、ねえ、もふもふしていい?」
「もふもふ?」
トウカがきょとんと首を傾げた。
「耳とか尻尾とか触っていい? 遠慮なく。容赦なく。もーそれは思いっきり気の済むまで」
わきわきと両手を身体の脇で蠢かせる。蜘蛛のように。
「一回だけ。一回だけでいいからもふらせて」
「……えー……う、うん、いいよ?」
鼻息を荒くし、目を血走らせた新菜の形相が怖いらしく、ためらいながらもトウカは許可してくれた。
夢にまで見たもふもふチャンス到来に、新菜の理性は粉砕された。
「まああああああなんて素晴らしい毛並み! 肌ざわり! なんてうらやまけしからん! けしからんぞこの耳! 尻尾! もふもふ! もふもふ最高ぉぉーー!!」
新菜はハクアが「そろそろ止めてやれ」と制止をかけてくるまで、思う存分もふもふを堪能したのだった。
悲鳴じみた声をあげ、床に跪いてがっしとトウカの両肩を掴む。
「額の三本の角は!? どこに行ったの!?」
「ニナの身体の中でパルスとして巡ってる。契約を破棄したら戻るよ」
「どんな仕組みっ!? ほんとにわたしと契約しちゃって良かったの!? 魔法が使えなくなっちゃったんでしょ!? 後悔しない!?」
「うん。しない」
「……どうしてそう言い切れるの?」
迷いなく顎を引いたトウカを見て、新菜は困惑した。
全幅の信頼を寄せてくれるのは嬉しいが、自分にその資格と、それを受け止める覚悟はあるのだろうか。
「だって、ニナはぼくのことを大事に想ってくれてる。これまでぼくを追いかけて来た人間は、みんな契約しろ、魔力を寄越せって、自分勝手な人ばっかりだった。でも、ニナは自分のことよりも、ぼくの気持ちを考えてくれた。ぼくはニナのことが好きだよ」
「…………」
「ぼくはこれからもずっと、ハクアとニナと一緒にいたいの。後悔なんて、するわけないよ」
トウカは笑った。
曇りのない笑顔に、胸が引き絞られるように痛む。
(わたしは一体何を弱気になってるのよ。トウカは文字通り全てを託してくれたのに。なら、わたしがすべきことなんて、決まってるじゃない)
思い出せ。自分は何のために強くなろうと思ったのか。
新菜はぱんっと自分の頬を叩いて気合を入れた。
びっくりしているトウカの小さな両手を握り締め、言う。
「わたしはこの身にかけてトウカを守ると誓うわ。トウカがくれた力で、トウカもハクア様も必ず幸せにしてみせる! 約束する!!」
「……何故そこにおれを含める?」
ハクアが冷静に突っ込んだが、新菜は華麗にスルーした。
「ありがとう。よろしくね」
トウカは新菜の手を握り返し、無垢な天使のような笑顔を浮かべた。
(はああああ可愛い……なんだこの可愛い生き物は……!! この笑顔は反則でしょう……!!)
「うんっ!!」
感極まって、体当たりするようにトウカを抱きしめる。
トウカの尻尾がぱたぱた揺れた。もふもふの尻尾だ。辛抱たまらん。
いまなら言える。新菜はそう判断し、抱擁を解いて訊いた。
「ねえ、ねえ、もふもふしていい?」
「もふもふ?」
トウカがきょとんと首を傾げた。
「耳とか尻尾とか触っていい? 遠慮なく。容赦なく。もーそれは思いっきり気の済むまで」
わきわきと両手を身体の脇で蠢かせる。蜘蛛のように。
「一回だけ。一回だけでいいからもふらせて」
「……えー……う、うん、いいよ?」
鼻息を荒くし、目を血走らせた新菜の形相が怖いらしく、ためらいながらもトウカは許可してくれた。
夢にまで見たもふもふチャンス到来に、新菜の理性は粉砕された。
「まああああああなんて素晴らしい毛並み! 肌ざわり! なんてうらやまけしからん! けしからんぞこの耳! 尻尾! もふもふ! もふもふ最高ぉぉーー!!」
新菜はハクアが「そろそろ止めてやれ」と制止をかけてくるまで、思う存分もふもふを堪能したのだった。
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