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38:契約ともふもふ堪能タイム(2)

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「ねえ、ニナはどうしてぼくと契約してくれって言わないの? 強くなりたいんでしょう?」
 トウカが尋ねた。
 手っ取り早く劇的に強くなる都合の良い方法は、実はある。
 トウカとの契約だ。
 でもこれまで新菜はトウカに一度たりともその話を振ったりしなかった。昨日から筋トレやランニングをする新菜を見守っていたトウカはそれが不思議でしょうがなかったようだ。

「そりゃあもちろん、トウカの魔力は魅力的だよ。契約してくれたら嬉しいけれど、それはわたしが無理強いするものじゃないわ。それじゃトウカに酷いことをした人間と一緒じゃない。わたしはトウカには幸せでいてほしいんだよ」
 腰を浮かせて手を伸ばし、トウカの頭を撫でる。
 狐の耳の感触がたまらなく気持ち良い。
 くすぐったそうに首を縮めるトウカの反応が愛おしく、新菜は目を細めた。

「トウカに頼らなくたって、わたしはわたしの力で未来を切り拓いてみせる。頑張ってお金を稼いで魔導具を買うから大丈夫だよ。そして絶対にトウカもハクア様も守ってみせるんだから」
「バトルメイドとして?」
 ハクアから聞いたらしい。新菜は笑って肯定した。
「そうよ。バトルメイドとして」
 照れるでもなく堂々と胸を張ると、トウカはくすくす笑った。

「うん。決めた。ぼく、ニナと契約する!」
「へ」
「だってニナはぼくたちを守ってくれるんでしょう? だったらぼくもニナを守りたい。ぼくの魔力を全部ニナにあげる」
「え、いや、でも――」
 急展開に戸惑う新菜の前に、トウカがやって来た。
 トウカは両手を伸ばして新菜の頬を掴み、引き寄せ、前かがみになった。
 額がぶつかり、トウカの角が刺さって、軽い痛みを覚える。

「神獣トウカの名の下、祝福を与えます。私はこれより貴女の剣となり、貴女を護る盾となる」
 厳《おごそ》かに告げたトウカの身体が光に包まれ、その光は額の角を通して新菜の身体にも伝わり、包み込んでいく。
 額に触れていたはずのトウカの角の感触が消失した。
 額と額が直接触れ合い、温かいものが額を介して流れ込んでくる――

(え? なんで? トウカの角はどこいっちゃったの? いまどういう状況なの?)
 新菜本人は知りようもないが、トウカの額に生えていた角は強い虹色の光を放ち、光そのものとなって新菜の額から体内へと侵入していた。
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