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70:困り事なら私まで(3)

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 昼休憩に入る前に、沙良は空になった容器やスプーンが詰まった大きなビニール袋を持ってゴミ捨て場へ向かった。

 開店前は秀司の撮影に夢中になり、準備を皆に任せきりにしてしまったので、自分からやらせてと言った結果だ。

 文化祭のために特別に設置された外のゴミ捨て場にゴミを投棄し、昇降口で靴を履き替えて廊下を歩き、階段を上る。

「あ、狐だ」
「ほんとだ。狐っ娘だ」
 階段の途中ですれ違った男子生徒二人が沙良の格好を見て言った。

(ちょっと恥ずかしいな……)
 でも、秀司に「この格好のままデートしよう」と言われたので休憩に入ってすぐに着替えるわけにはいなかったのだ。

 文化祭デート――なんと心躍る響きだろうか!

(秀司と何食べようかな。定番の焼きそば? フライドポテトやたこ焼きを二人で分け合ったりするのもいいなあ)

 階段を上りながら笑みを零す。
 生徒たちの声や足音に交じって、校舎内のどこからか、笛や太鼓を使った明るい和風音楽が聞こえてくる。

(外で男子たちが食べてた肉巻きおにぎりもおいしそうだったな――いやちょっと待って、デート中に肉なんて食べたら秀司に引かれないかしら? 口臭も気になるし……うーん、ここはおとなしくホットドッグとかにしとくのが正解? 足りなかったらデザートで補う。それがいいか。デザートも色々あったわよね、チュロスとかクレープとか――)
 楽しい想像をしながら二階を通過し、そのまま三階を通り過ぎて三段ほど上ったときだった。

「?」
 何か――意識の端に引っ掛かるようなものを見たような気がして、沙良は足を止めた。

 上った三段分の階段を下り、何が気になったのかを確認するべく三階廊下を見回す。

 三階は一年生の教室がある階だ。
 沙良も去年はこの三階で学生生活のほとんどを過ごした。

 三階廊下では魔女のコスプレをした一年生が数人集まって談笑している他、友達とパンフレットを見ながら次はどこに行こうか相談している生徒、一人で廊下を歩く生徒など、色んな生徒がいた。

 廊下の端には文化祭の道具や机や椅子が積まれており、すぐそこの一年二組の教室の扉横には『縁日』という看板が出ていた。

 陽気な和風音楽はあそこから聞こえていたらしい。

(あ、多分あの子だ)
 注意深く辺りを見回していた沙良はセミロングの女子生徒に目を留めた。
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