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39:レンタルスタジオにて(3)
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「ごめん私二人に飲み物渡してくる」
反応に困った沙良はスポーツドリンクを二つまとめて右手に持ち、そそくさと退散した。
まだ寝転がっている大和の元へ行き、隣に屈んでスポーツドリンクを渡す。
「飲めそう?」
「ああ、ありがとう……」
のろのろと大和は起き上がり、スポーツドリンクを受け取って飲み始めた。
「秀司もどうぞ」
「ありがと」
秀司も片手でスポーツドリンクを受け取った。
(いや、このスポーツドリンクは秀司が用意してくれてるものだから。お礼を言う必要ないんだけどね)
蓋を開けて飲み始めた秀司を見つめながら思う。
ついでに言うならレンタルスタジオの料金だって秀司が全額払ってくれている。
休憩時間の十分が経過した後、瑠夏たちは文化祭で踊る曲を練習し始めた。
一曲目は山岸が勧めていた『Eternal Flower』、これは世界的にも有名なゲームの主題歌だ。
二曲目は外国のアイドルグループが歌う『REVERSE』。
『Eternal Flower』と『REVERSE』の二曲を踊り終えた大和は壁際に行き、ビデオを用意し始めた。
その間に沙良は瑠夏のスマホを操作して三曲目の『夜想蓮華』を流す準備を整える。
「行くよー」
「OK」
瑠夏は扇子を持って秀司の隣に立ち、沙良の代わりに踊り始めた。
四人で顔を突き合わせて考えた難しい振付を、瑠夏と秀司は難なくこなしていく。
華麗な足捌きでステップを踏み、指先までぴんと伸ばして左右対称の動きを作り上げ、それぞれ右手と左手に持った扇子を宙に踊らせる。
何も言わずとも二人は目と目で通じ合い、次にどう動くか互いの意思を汲み取っていた。
まるで水が流れるような、歯車が寸分の狂いなく噛み合うような動きで二人は踊り、やがて曲が終わった。
「すげーな、練習始めてたった二週間なのに、もう完璧じゃん。ダメだしするところがないよ?」
ビデオカメラを片手に持ち、前方で撮影係をやっていた大和が興奮気味に二人に近づいた。
「そうかしら。確かに不破くんは恐ろしい速度で上達したし、このままステージに立っても恥ずかしくないレベルよ。それでも、『完璧』を目指すならまだ改善すべきところはあると思うわ」
四人で録画していた映像をチェックする。
瑠夏たちの踊りはとても上手だと思っていたが――
「止めて。ここ、腰の使い方がなってないわ。ちょっと立って。左足を一歩分横に引いて。重心はもっと下に置いて。目線は前。腕の角度はこう、この角度」
少しの妥協も許さない鬼講師と化した瑠夏はぐっと秀司の腰を押さえつけ、左手首を掴んで理想のポーズを取らせた。
「次はここね」
再生していた映像を止めて、瑠夏は再び秀司の身体に手をかけた。
「ここはもっと胸を張って、背筋を伸ばして。手首の角度はこうよ。扇子がぶつからないようにギリギリを攻める感じで――」
瑠夏は問題だと感じた個所を再現させては力技で修正し、秀司の身体に覚え込ませている。
(よく瑠夏は平気で秀司に触れるわね。異性の身体に触れることに対する照れや羞恥は全くないのかしら。瑠夏の目には筋骨隆々の男性以外はみんなモヤシにしか映らないのかも?)
秀司の腕を掴み、身振り手振りを加えて熱心に解説している瑠夏を見つめていると。
反応に困った沙良はスポーツドリンクを二つまとめて右手に持ち、そそくさと退散した。
まだ寝転がっている大和の元へ行き、隣に屈んでスポーツドリンクを渡す。
「飲めそう?」
「ああ、ありがとう……」
のろのろと大和は起き上がり、スポーツドリンクを受け取って飲み始めた。
「秀司もどうぞ」
「ありがと」
秀司も片手でスポーツドリンクを受け取った。
(いや、このスポーツドリンクは秀司が用意してくれてるものだから。お礼を言う必要ないんだけどね)
蓋を開けて飲み始めた秀司を見つめながら思う。
ついでに言うならレンタルスタジオの料金だって秀司が全額払ってくれている。
休憩時間の十分が経過した後、瑠夏たちは文化祭で踊る曲を練習し始めた。
一曲目は山岸が勧めていた『Eternal Flower』、これは世界的にも有名なゲームの主題歌だ。
二曲目は外国のアイドルグループが歌う『REVERSE』。
『Eternal Flower』と『REVERSE』の二曲を踊り終えた大和は壁際に行き、ビデオを用意し始めた。
その間に沙良は瑠夏のスマホを操作して三曲目の『夜想蓮華』を流す準備を整える。
「行くよー」
「OK」
瑠夏は扇子を持って秀司の隣に立ち、沙良の代わりに踊り始めた。
四人で顔を突き合わせて考えた難しい振付を、瑠夏と秀司は難なくこなしていく。
華麗な足捌きでステップを踏み、指先までぴんと伸ばして左右対称の動きを作り上げ、それぞれ右手と左手に持った扇子を宙に踊らせる。
何も言わずとも二人は目と目で通じ合い、次にどう動くか互いの意思を汲み取っていた。
まるで水が流れるような、歯車が寸分の狂いなく噛み合うような動きで二人は踊り、やがて曲が終わった。
「すげーな、練習始めてたった二週間なのに、もう完璧じゃん。ダメだしするところがないよ?」
ビデオカメラを片手に持ち、前方で撮影係をやっていた大和が興奮気味に二人に近づいた。
「そうかしら。確かに不破くんは恐ろしい速度で上達したし、このままステージに立っても恥ずかしくないレベルよ。それでも、『完璧』を目指すならまだ改善すべきところはあると思うわ」
四人で録画していた映像をチェックする。
瑠夏たちの踊りはとても上手だと思っていたが――
「止めて。ここ、腰の使い方がなってないわ。ちょっと立って。左足を一歩分横に引いて。重心はもっと下に置いて。目線は前。腕の角度はこう、この角度」
少しの妥協も許さない鬼講師と化した瑠夏はぐっと秀司の腰を押さえつけ、左手首を掴んで理想のポーズを取らせた。
「次はここね」
再生していた映像を止めて、瑠夏は再び秀司の身体に手をかけた。
「ここはもっと胸を張って、背筋を伸ばして。手首の角度はこうよ。扇子がぶつからないようにギリギリを攻める感じで――」
瑠夏は問題だと感じた個所を再現させては力技で修正し、秀司の身体に覚え込ませている。
(よく瑠夏は平気で秀司に触れるわね。異性の身体に触れることに対する照れや羞恥は全くないのかしら。瑠夏の目には筋骨隆々の男性以外はみんなモヤシにしか映らないのかも?)
秀司の腕を掴み、身振り手振りを加えて熱心に解説している瑠夏を見つめていると。
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