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52:自由に生きると決めたので!
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「あっはっは! やっぱあんたカイの生まれ変わりだわ。目の色は違うけど、髪の色とか、あたしに対する態度とかそっくりだもの。ただの人間のくせして、あいつは全然あたしのこと敬わなかったし、ベルウェザーとも遠慮なく喧嘩してた。その気になればベルウェザーもあたしも一撃でカイを殺せるだけの力があるのに、そんなの知ったことか、オレは好きなように生きるって言ってたわ。ね? まるっきりあんたでしょ?」
メグは大笑いして手を叩いた。
「ルーシェはリュオンとセラのことを運命の恋人だって言ってたけど、蓋を開けてみればあんたたちこそが本物の運命の恋人だったわね。ルーシェはやっと巡り会えた遠い前世の恋人よ、大事にしなさい?」
「……言われなくても大事にするさ」
ニヤニヤしながら上体を寄せると、ジオは照れ隠しのようにそっぽ向いた。
◆ ◆ ◆
この石は一体どんな理屈で光っているのだろうか。
星が瞬く夜空の下でジオから貰った石を眺めていると、不意に足音が聞こえた。
右手を向けば、何やら難しい顔をしたジオが歩いてくる。
「あれっ。ジオも外にいたの? 散歩?」
青く光る石を胸元に下げ直し、ルーシェは歩み寄った。
「まあ、そんなとこ。ところでルーシェ。オレたちは運命の恋人らしいんだが、信じるか?」
「………………」
ルーシェは無言で彼の額に手を当てた。
「おかしいわね。熱はないみたいなんだけど」
自分の額にも手を当てて彼が平熱であることを確認し、ルーシェは首を捻った。
「うん。やっぱ運命とか馬鹿らしいよな」
ジオはルーシェの手を掴んで下ろさせたが、手を離そうとはせず、そのまま指を絡めた。
本格的な冬が近づいてきた外は寒い。
でも、繋いだ手は温かくて、気持ち良かった。
「前世の恋人とか知らねーよ。好きな女は自分で決める」
わけのわからないことを言って、ジオは空を見上げた。
つられて空を見るが、星がいくつか瞬いているだけで、特段注目に値するようなものは見当たらない。
「何見てるの?」
「いや。もしお前が高い塔の上にいたとしたら、オレは当たり前に塔を上るんだろうなって思っただけ」
「はあ? さっきから何を言ってるの? おかしいなあ、特に変な食材は使ってなかったのに……幻覚を見せるキノコでも混じってたのかな?」
「お前はオレが《魔女の墓場》の塔の上にいたら上る気ある?」
ルーシェの台詞を無視して、ジオが金色の瞳をこちらに向けた。
「ためらう理由がないんだけど」
「魔法が使えない《魔女の墓場》だぞ? お前が行ったところで秒で死ぬぜ?」
「いや、だから、ためらう理由がないって。死ぬよりジオに会えないほうが辛いじゃないの」
それはルーシェにとってはごく当たり前のことだったのだが、ジオは虚を突かれたような顔をした。
「……死ぬってわかってんなら諦めて他の恋人探したほうが良くねーか?」
「なんでよ」
ルーシェはムッとした。
ジオはルーシェがどれだけジオのことを愛しているのか理解していないようだ。
女の本気を舐めてもらっては困る。
「ジオはわたしのためなら命懸けで《魔女の墓場》に行くんでしょ? だったらわたしも命懸けで行くわよ。他の恋人なんて要らない。ジオだけを愛して死ぬわ」
まっすぐに金色の瞳を見返すと、つかの間、ジオは呆けた。
「…………っくく。マジで言ってんな、こいつ」
ジオはおかしそうに笑い、両手を伸ばしてルーシェを抱きしめた。強く。
「!?」
火をつけたように顔が熱くなる。
「やっぱりオレの恋人はお前しかいねーわ。思い知ったわ。何、お前オレにベタ惚れじゃん」
「あ、あんただってベタ惚れなくせに!!」
彼を抱き返し、真っ赤になった顔を隠すためにその胸に顔を埋める。
「バレた?」
「バレバレだっつーの!!」
「あははははっ。《人形姫》はもうどこにもいねーな」
「ええ、《人形姫》は死にました!! ここにいるのはごくフツーの女です!!」
《END.》
メグは大笑いして手を叩いた。
「ルーシェはリュオンとセラのことを運命の恋人だって言ってたけど、蓋を開けてみればあんたたちこそが本物の運命の恋人だったわね。ルーシェはやっと巡り会えた遠い前世の恋人よ、大事にしなさい?」
「……言われなくても大事にするさ」
ニヤニヤしながら上体を寄せると、ジオは照れ隠しのようにそっぽ向いた。
◆ ◆ ◆
この石は一体どんな理屈で光っているのだろうか。
星が瞬く夜空の下でジオから貰った石を眺めていると、不意に足音が聞こえた。
右手を向けば、何やら難しい顔をしたジオが歩いてくる。
「あれっ。ジオも外にいたの? 散歩?」
青く光る石を胸元に下げ直し、ルーシェは歩み寄った。
「まあ、そんなとこ。ところでルーシェ。オレたちは運命の恋人らしいんだが、信じるか?」
「………………」
ルーシェは無言で彼の額に手を当てた。
「おかしいわね。熱はないみたいなんだけど」
自分の額にも手を当てて彼が平熱であることを確認し、ルーシェは首を捻った。
「うん。やっぱ運命とか馬鹿らしいよな」
ジオはルーシェの手を掴んで下ろさせたが、手を離そうとはせず、そのまま指を絡めた。
本格的な冬が近づいてきた外は寒い。
でも、繋いだ手は温かくて、気持ち良かった。
「前世の恋人とか知らねーよ。好きな女は自分で決める」
わけのわからないことを言って、ジオは空を見上げた。
つられて空を見るが、星がいくつか瞬いているだけで、特段注目に値するようなものは見当たらない。
「何見てるの?」
「いや。もしお前が高い塔の上にいたとしたら、オレは当たり前に塔を上るんだろうなって思っただけ」
「はあ? さっきから何を言ってるの? おかしいなあ、特に変な食材は使ってなかったのに……幻覚を見せるキノコでも混じってたのかな?」
「お前はオレが《魔女の墓場》の塔の上にいたら上る気ある?」
ルーシェの台詞を無視して、ジオが金色の瞳をこちらに向けた。
「ためらう理由がないんだけど」
「魔法が使えない《魔女の墓場》だぞ? お前が行ったところで秒で死ぬぜ?」
「いや、だから、ためらう理由がないって。死ぬよりジオに会えないほうが辛いじゃないの」
それはルーシェにとってはごく当たり前のことだったのだが、ジオは虚を突かれたような顔をした。
「……死ぬってわかってんなら諦めて他の恋人探したほうが良くねーか?」
「なんでよ」
ルーシェはムッとした。
ジオはルーシェがどれだけジオのことを愛しているのか理解していないようだ。
女の本気を舐めてもらっては困る。
「ジオはわたしのためなら命懸けで《魔女の墓場》に行くんでしょ? だったらわたしも命懸けで行くわよ。他の恋人なんて要らない。ジオだけを愛して死ぬわ」
まっすぐに金色の瞳を見返すと、つかの間、ジオは呆けた。
「…………っくく。マジで言ってんな、こいつ」
ジオはおかしそうに笑い、両手を伸ばしてルーシェを抱きしめた。強く。
「!?」
火をつけたように顔が熱くなる。
「やっぱりオレの恋人はお前しかいねーわ。思い知ったわ。何、お前オレにベタ惚れじゃん」
「あ、あんただってベタ惚れなくせに!!」
彼を抱き返し、真っ赤になった顔を隠すためにその胸に顔を埋める。
「バレた?」
「バレバレだっつーの!!」
「あははははっ。《人形姫》はもうどこにもいねーな」
「ええ、《人形姫》は死にました!! ここにいるのはごくフツーの女です!!」
《END.》
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49. 皆で料理🍳🔪🎽ヒトには向き不向きがあるからね~ドンマイヽ(´・∀・`)ノ。
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危うきに近寄らず‼️((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
ドロシーに関わってはいけません笑