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38:特大の雷が落ちた理由
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「でも猶予が三秒もあれば、ぼくらなら回避そうだよねってジオと相談した結果、荷物をその場に放って突撃した」
「なんで突撃するのよっ!?」
思わずツッコむ。
「時間がなかったからに決まってんだろ? リュオンの命がかかってんだぜ?」
「そ、それはそうかもしれないけど、でも……」
「いやーノエルの十七回……十八回か? 連続回避は凄かったな。お前らに見せたかった」
「ジオの動きだって神懸かってたよ。奥に進むにつれて雷の発生する頻度が上がって、地面を見て確認する暇もなくなってさ。最後のほうはほとんど勘で避けてたよね」
「極限状態で頭がどうかしたらしく、なんかもう楽しくなってきて笑っちまったよなー」
「笑ってる場合じゃないのにねー」
あははははー、と二人は呑気に笑っているが、ルーシェたちはちっとも笑えない。
頭痛でも覚えたのか、リュオンは無言で額を押さえている。
「《雷電地帯》をよーやく抜けたと思ったら、今度は風船みたいに、一抱えほどもある巨大な宝石の群れが空を飛んでんだよ。なんだこりゃ? って思ってたら、黄色い宝石がすーっと滑空しながら近づいてきて、何の前触れもなくいきなりオレらの目の前で大爆発した」
「あと一秒でも回避が遅れてたらぼくらは骨も残らず消滅してただろうね。地面が軽く一メートルは抉れてなくなってたし」
「………………」
滝のような冷や汗がルーシェの頬を滑り落ちていく。
「あと、アレも凄かったよな! 額に赤い宝石がついた、狼っぽい、体長二十メートルは超える巨大な白い獣の群れ!! すげーんだよ、なんつーか神秘的で、めちゃくちゃ綺麗な獣だった!!」
身振り手振りを加えて、キラキラした目でジオは語る。
「うん。あの獣と戦ったらさすがに死ぬなと思って、ジオと一緒に岩陰に隠れてやり過ごしたけど。毛並みがふわふわで、つやつやで……許されるのなら一度だけでも触ってみたかった……」
ほう、とノエルが吐息を漏らす。彼は動物全般が好きだ。
「《魔女の墓場》にはお馴染みのグリフォンもいたよな。でも《魔女の墓場》にいるグリフォンは超進化を遂げてて、ドラゴンみたいに火を吐くんだよ! マジでびっくりした!」
「回転する黒い……毛玉……? みたいな、不思議な生き物もいたよね」
「ああ、黒い鋼線みたいな糸を伸ばしてくるやつな。あれは手ごわかったよなー。音も気配もなくいつの間にか近づいてきて、一撃必殺の糸を何本も飛ばしてくるのは反則だろ。とっさに斬り払ったけど、剣が欠けたし。全方位から襲ってくるもんだから、さすがに全部は避け切れずに何本か頬を掠ったし。見た目は可愛いのに、とんでもねー敵だった」
「とんでもないといえば、途中で見かけた洞窟の壁に張り付いてた謎の仮面群も怖かったよね。洞窟の奥には金銀財宝があったけど、もし足を踏み入れてたらどうなってたんだろうね――」
「……あの。二人とも。本当に、よく無事に帰って来たわね……?」
真っ青な顔でセラが言う。
「ああ。生きるか死ぬかの戦いだった」
「……でも、刺激的で楽しかった」
ボソッと、ノエルが呟いた。
「それはわかる。《魔女の墓場》には見たことのない動植物と見たことのない景色しかなかった。息を飲むほど綺麗な絶景だって見たんだぜ。七色に煌めく凍った川とか、白く結晶化した森とか、幻想的な光を放つ花とかさ。もうちょっと時間があれば珍しい花を摘んだり、地面に散らばってた宝石を拾い集めたりできたんだけどなー」
ジオの口ぶりは本当に残念そうだった。
「なあメグ、ルーシェへの土産にしたいからさ、もう一回《魔女の墓場》に連れて行っ――」
「――命懸けで摘んできた花なんて貰ったって嬉しくないわよッ!!」
その日、ラスファルの街には特大の雷が落ちたという。
「なんで突撃するのよっ!?」
思わずツッコむ。
「時間がなかったからに決まってんだろ? リュオンの命がかかってんだぜ?」
「そ、それはそうかもしれないけど、でも……」
「いやーノエルの十七回……十八回か? 連続回避は凄かったな。お前らに見せたかった」
「ジオの動きだって神懸かってたよ。奥に進むにつれて雷の発生する頻度が上がって、地面を見て確認する暇もなくなってさ。最後のほうはほとんど勘で避けてたよね」
「極限状態で頭がどうかしたらしく、なんかもう楽しくなってきて笑っちまったよなー」
「笑ってる場合じゃないのにねー」
あははははー、と二人は呑気に笑っているが、ルーシェたちはちっとも笑えない。
頭痛でも覚えたのか、リュオンは無言で額を押さえている。
「《雷電地帯》をよーやく抜けたと思ったら、今度は風船みたいに、一抱えほどもある巨大な宝石の群れが空を飛んでんだよ。なんだこりゃ? って思ってたら、黄色い宝石がすーっと滑空しながら近づいてきて、何の前触れもなくいきなりオレらの目の前で大爆発した」
「あと一秒でも回避が遅れてたらぼくらは骨も残らず消滅してただろうね。地面が軽く一メートルは抉れてなくなってたし」
「………………」
滝のような冷や汗がルーシェの頬を滑り落ちていく。
「あと、アレも凄かったよな! 額に赤い宝石がついた、狼っぽい、体長二十メートルは超える巨大な白い獣の群れ!! すげーんだよ、なんつーか神秘的で、めちゃくちゃ綺麗な獣だった!!」
身振り手振りを加えて、キラキラした目でジオは語る。
「うん。あの獣と戦ったらさすがに死ぬなと思って、ジオと一緒に岩陰に隠れてやり過ごしたけど。毛並みがふわふわで、つやつやで……許されるのなら一度だけでも触ってみたかった……」
ほう、とノエルが吐息を漏らす。彼は動物全般が好きだ。
「《魔女の墓場》にはお馴染みのグリフォンもいたよな。でも《魔女の墓場》にいるグリフォンは超進化を遂げてて、ドラゴンみたいに火を吐くんだよ! マジでびっくりした!」
「回転する黒い……毛玉……? みたいな、不思議な生き物もいたよね」
「ああ、黒い鋼線みたいな糸を伸ばしてくるやつな。あれは手ごわかったよなー。音も気配もなくいつの間にか近づいてきて、一撃必殺の糸を何本も飛ばしてくるのは反則だろ。とっさに斬り払ったけど、剣が欠けたし。全方位から襲ってくるもんだから、さすがに全部は避け切れずに何本か頬を掠ったし。見た目は可愛いのに、とんでもねー敵だった」
「とんでもないといえば、途中で見かけた洞窟の壁に張り付いてた謎の仮面群も怖かったよね。洞窟の奥には金銀財宝があったけど、もし足を踏み入れてたらどうなってたんだろうね――」
「……あの。二人とも。本当に、よく無事に帰って来たわね……?」
真っ青な顔でセラが言う。
「ああ。生きるか死ぬかの戦いだった」
「……でも、刺激的で楽しかった」
ボソッと、ノエルが呟いた。
「それはわかる。《魔女の墓場》には見たことのない動植物と見たことのない景色しかなかった。息を飲むほど綺麗な絶景だって見たんだぜ。七色に煌めく凍った川とか、白く結晶化した森とか、幻想的な光を放つ花とかさ。もうちょっと時間があれば珍しい花を摘んだり、地面に散らばってた宝石を拾い集めたりできたんだけどなー」
ジオの口ぶりは本当に残念そうだった。
「なあメグ、ルーシェへの土産にしたいからさ、もう一回《魔女の墓場》に連れて行っ――」
「――命懸けで摘んできた花なんて貰ったって嬉しくないわよッ!!」
その日、ラスファルの街には特大の雷が落ちたという。
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