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37:食堂にて

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 傷の手当てをしてからは三人で昼食を摂った。
 食後の紅茶を楽しんでいると、リュオンとセラとメグが入ってきた。

 寝間着だったリュオンは服を着替えている。
 彼は頭に包帯を巻いておらず、両目を晒していた。
 金色の《魔力環》が浮かぶ青い両目を。

「あっ」
 リュオンたちを見てノエルが声を上げ、
「お! 目が覚めたんだな、おはようリュオン。良かったなーセラ」
 ジオは笑顔でセラに話しかけた。

「ええ、本当に」
 この世の終わりのような顔をしていたセラが笑っている。心底嬉しそうに、朗らかに。
 セラはサンドイッチが乗ったトレーを持っていた。手付かずだったそれを昼食として食べるつもりらしい。

「セラから事情を聞いたよ。皆のおかげで助かった。ありがとう」
 食堂の入り口に立ったまま、リュオンは深々と頭を下げた。

「私からもお礼を言わせて。本当にありがとうございました」
 リュオンの隣でセラも頭を下げた。

 どういたしまして、とルーシェたちは微笑んで応じた。
 セラはいそいそと配膳をし、リュオンの隣に座って食卓を囲んだ。 

「……何があったかはセラに聞いてはいるんだが。実はいまだに実感が湧かないんだ」

 サンドイッチを食べながらリュオンが話し出した。

「おれの感覚としては、寝てたら物凄く不味い液体を飲まされた。最悪な気分で目覚めたら何故か部屋にセラとメグがいて、戸惑う暇もなくセラに抱きしめられて号泣された――って感じなんだよな」

「死にかけてた自覚はねーんだな」
「ああ。でも、事実として皆には迷惑をかけた。特にジオとノエルには、《魔女の墓場》まで行ってもらって本当に……」

「いや、オレらにはもう謝らなくていーよ。お前が元気になったならそれで十分」

 また頭を下げようとするリュオンに、ジオはひらひらと片手を振った。

「謝るならセラに謝ってやれ。リュオンがなかなか起きてこないから、『もう、ダーリンったらお寝坊さん★ いい加減起きないと可愛い寝顔にキスしちゃうぞっ★』的なノリで部屋に行ったら死にかけてんだぜ? 当時の心中は察するに余りあるわ」

 本当? という顔でリュオンが隣を見る。

「き、キスしようなんて思ってなかったわよ!?」
 セラは真っ赤になって慌てた。

「わかりやすく動揺してるわね」
「大当たりだな」
 ルーシェとジオは小声で囁き合った。

 ひとしきり話し込んだ後で、ふと思いついたようにメグが言った。

「ところでさ。ジオとノエルは予想より遥かに早く《魔女の墓場》から帰還したわよね。《オールリーフ》が偶然近くに生えてて良かったわね」

「いや、教えられた通り、山の麓で摘んできたぜ? な、ノエル」
「うん」
 頷くノエルを見て、メグは目をぱちくり。

「…………は? 冗談でしょ? いくらあんたたちでも、あの距離を片道一時間で踏破するのはどう考えても不可能……いや、ちょっと待って? まさか最短距離を行ったの!? あの危険極まりない《雷電地帯》を迂回しなかったの!?」

 よほど衝撃を受けたらしくメグは声を裏返らせて立ち上がった。

 ジオとノエルは顔を見合わせてから、合図もしてないのに声を唱和させた。

「「突っ切った」」

「馬鹿なのッ!!?」
 メグは頭を抱えて悲鳴を上げた。

「いや、正真正銘の馬鹿だわ、信じられないッ!! 命知らずにも程があるわよ、 いままで《雷電地帯》で何人死んだと思ってんの!?」

「えー? 意外といけたよな?」
「うん。こうして生きてるしね」

「それはただ運が良かっただけに決まってんでしょーがっ!!」

「ねえメグ、その《雷電地帯》っていうのは何なの?」
 メグのあまりの取り乱しように尋ねずにはいられない。

 喚いていたメグは我に返ったらしく着席し、こほんと一つ咳払い。

「《雷電地帯》は灰色の空に稲妻が走り、絶え間なく雷が落ち続ける場所よ。ただし雷は
「……地面から空に向かって……?」
 当惑する。およそ自然を無視した超常現象だ。

「そうそう。《雷電地帯》の地面は普通の地面じゃなくて、なんつーか、全体的にのっぺりした銀色なんだよな。地面に白い光点が灯ったら、その光はだんだん大きくなって、三秒……遅くて五秒後に空に向かって雷が落ちる。威力は通常の雷とそんなに変わらない。直撃したら運が悪けりゃ死んでただろうな」

「………………」
 セラたちは絶句している。
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