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20:君のために
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「どうしたのその傷、一体何があったの!? 何か事件に巻き込まれたの!?」
「いや、事件に巻き込まれたわけじゃない。国王の要求に応じて魔獣と戦ってきただけだよ」
「国王?」
突拍子もない単語に困惑する。
「おれはこの六日間、国王の使いっ走りをしてたんだ。三頭の魔獣と戦ったのもその一環。これが報酬。どうぞ。貴女への贈呈品《プレゼント》です」
リュオンはノエル様の手当を受けながら屈んで鞄から黒い筒を取り出し、私に差し出した。
金色の彫刻が成された豪華な筒である。
蓋を開けてみると、中に入っていたのは二枚の紙だった。
丸まった紙を広げて絶句する。
そこに書かれている名前は『セラ・エンドリーネ』――この紙は私の身分証明書だった。
「エンドリーネって……」
あまりのことに声が震える。
「説得の甲斐あって、伯爵夫妻はセラを養女にすることに同意してくれた。ユーリもノエルも」
呆然としながら顔を向けると、ユリウス様は頷き、ノエル様はリュオンの腕に包帯を巻きながら微笑んだ。
「とはいえ、本当に書類上だけの話だ。伯爵夫妻と何度も協議した結果、下手をすれば戦争の火種になりかねない稀有な力を隠すためにも、セラには伯爵令嬢ではなくこれからもただの侍女として働いてもらうことになった。あと、悪いが相続権は放棄してくれ」
「そ、相続権なんて要らないわよ! もう充分お給金はもらってるもの」
むしろ相続権なんて貰っても困るだけだ。
「セラならそう言うと思った。書類を持ってきたから後でサインしてくれ。ありがとう、ノエル」
包帯を巻いてもらったリュオンはノエル様に礼を述べた。
「どういたしまして。セラが大事なのはわかるけれど、リュオンはもう少し自分のことも大事にするべきだと思うよ」
ノエル様の瞳には酷い怪我に対する同情と心配がある。
「あれ? ノエル、何か雰囲気が変わったな。おれがいない間に何かあった?」
「セラのおかげでね。兄さんと仲直りできたんだよ」
「へえ、それは良かった――」
「死にそうな顔色で無理に会話しなくていいから、休みなさい」
ノエル様が軽く肩を押すと、リュオンは抵抗なく背中を倒し、背もたれに身体を預けた。
表面上は元気に振る舞っていてもやはり辛いのだろう、リュオンは息を吐いてから今度はユリウス様を見た。
「……悪い、ユーリ。人間に戻すのは明日でいいか?」
「ああ。いまはお前が無事……ではないが、とにかく、戻ってきてくれただけで充分だ。いくらセラのためとはいえ、無茶をする。腕以外にも怪我をしているだろう。俺はいま猫だから鼻が利くんだ」
「まあ腕が一番酷いから。腕に比べれば、他の怪我は全部大したことじゃないと片付けられるよ」
リュオンはひらひらと右手を振ってみせた。
「全く……」
ユリウス様はため息をついた。
それから私を見て、今度はノエル様を見る。
兄の言いたいことを察したらしく、ノエル様は救急箱の蓋を閉じて黒猫と共に退室した。
扉が閉まる音。
「……セラ?」
背もたれに身体を預け、疲れ切った様子で目を閉じていたリュオンはふと目を開けて私を見て、ギョッとしたような顔をした。
泣くまいと思っても涙が溢れて止まらない。
恐らくリュオンは半月前、私の魔法を知った直後から迅速に行動を起こした。
エンドリーネ伯爵夫妻を説得し、庇護を求めた。
たとえ形式上でも私が伯爵夫妻の養女になれば、いざというときはラスファルの兵を動かすことだってできるし、仮にレアノールから追手が来てもセレスティア・ブランシュとは別人だと言い張ることができる。
私の身分証明書と一緒に入っていたのは一枚の信書だった。
『セラ・エンドリーネを自国の民と認める』――見たことがないけれど、これは多分、国王の字だ。
その紙には、もし自国民である私に手を出した場合は相応の報復をする旨が書いてある。
これにはレアノールの国王だってひれ伏すに違いない。
何しろロドリー王国はウルガルド帝国と対等以上の武力を持つ大国だ。
小国のレアノールは敵国とみなされた時点で終わりである。
この二枚の紙を手に入れるためにリュオンは王都に赴き、国王に直談判して満身創痍になった。
リュオンだけではない、エンドリーネ伯爵夫妻にも苦労を掛けたはずだ。
一から戸籍を作るために知恵を絞り、あらゆる伝手を使い、水面下でどれだけ骨を折ってくれたことか。
「………馬鹿。リュオンは本当に馬鹿よ……私のために、なんでそこまでするの……受けた恩が大きすぎて、とても返せないじゃないの……」
大粒の涙がぽろぽろ零れる。
「恩を売りたいわけじゃない」
泣きじゃくる私を見てリュオンは立ち上がり、私を抱きしめた。
彼の身体からは血と消毒液の香りがする。
「やりたいからやってるだけだ。だから、セラは気にしなくていい。少しでもセラのためになると思ったらおれはなんでもやる。――やらずにはいられないんだ」
「いや、事件に巻き込まれたわけじゃない。国王の要求に応じて魔獣と戦ってきただけだよ」
「国王?」
突拍子もない単語に困惑する。
「おれはこの六日間、国王の使いっ走りをしてたんだ。三頭の魔獣と戦ったのもその一環。これが報酬。どうぞ。貴女への贈呈品《プレゼント》です」
リュオンはノエル様の手当を受けながら屈んで鞄から黒い筒を取り出し、私に差し出した。
金色の彫刻が成された豪華な筒である。
蓋を開けてみると、中に入っていたのは二枚の紙だった。
丸まった紙を広げて絶句する。
そこに書かれている名前は『セラ・エンドリーネ』――この紙は私の身分証明書だった。
「エンドリーネって……」
あまりのことに声が震える。
「説得の甲斐あって、伯爵夫妻はセラを養女にすることに同意してくれた。ユーリもノエルも」
呆然としながら顔を向けると、ユリウス様は頷き、ノエル様はリュオンの腕に包帯を巻きながら微笑んだ。
「とはいえ、本当に書類上だけの話だ。伯爵夫妻と何度も協議した結果、下手をすれば戦争の火種になりかねない稀有な力を隠すためにも、セラには伯爵令嬢ではなくこれからもただの侍女として働いてもらうことになった。あと、悪いが相続権は放棄してくれ」
「そ、相続権なんて要らないわよ! もう充分お給金はもらってるもの」
むしろ相続権なんて貰っても困るだけだ。
「セラならそう言うと思った。書類を持ってきたから後でサインしてくれ。ありがとう、ノエル」
包帯を巻いてもらったリュオンはノエル様に礼を述べた。
「どういたしまして。セラが大事なのはわかるけれど、リュオンはもう少し自分のことも大事にするべきだと思うよ」
ノエル様の瞳には酷い怪我に対する同情と心配がある。
「あれ? ノエル、何か雰囲気が変わったな。おれがいない間に何かあった?」
「セラのおかげでね。兄さんと仲直りできたんだよ」
「へえ、それは良かった――」
「死にそうな顔色で無理に会話しなくていいから、休みなさい」
ノエル様が軽く肩を押すと、リュオンは抵抗なく背中を倒し、背もたれに身体を預けた。
表面上は元気に振る舞っていてもやはり辛いのだろう、リュオンは息を吐いてから今度はユリウス様を見た。
「……悪い、ユーリ。人間に戻すのは明日でいいか?」
「ああ。いまはお前が無事……ではないが、とにかく、戻ってきてくれただけで充分だ。いくらセラのためとはいえ、無茶をする。腕以外にも怪我をしているだろう。俺はいま猫だから鼻が利くんだ」
「まあ腕が一番酷いから。腕に比べれば、他の怪我は全部大したことじゃないと片付けられるよ」
リュオンはひらひらと右手を振ってみせた。
「全く……」
ユリウス様はため息をついた。
それから私を見て、今度はノエル様を見る。
兄の言いたいことを察したらしく、ノエル様は救急箱の蓋を閉じて黒猫と共に退室した。
扉が閉まる音。
「……セラ?」
背もたれに身体を預け、疲れ切った様子で目を閉じていたリュオンはふと目を開けて私を見て、ギョッとしたような顔をした。
泣くまいと思っても涙が溢れて止まらない。
恐らくリュオンは半月前、私の魔法を知った直後から迅速に行動を起こした。
エンドリーネ伯爵夫妻を説得し、庇護を求めた。
たとえ形式上でも私が伯爵夫妻の養女になれば、いざというときはラスファルの兵を動かすことだってできるし、仮にレアノールから追手が来てもセレスティア・ブランシュとは別人だと言い張ることができる。
私の身分証明書と一緒に入っていたのは一枚の信書だった。
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その紙には、もし自国民である私に手を出した場合は相応の報復をする旨が書いてある。
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彼の身体からは血と消毒液の香りがする。
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