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34:お茶会(7)

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「なるほどなるほど。それは良い情報を聞きました。ありがとうございます」
 友永くんは一礼した。
「いえいえ。そういう友永くんは?」
「いませんよ。中学のときにはいたんですけど、別クラスになって話さなくなって、自然消滅です。よくある話っしょ?」
 紅茶にミルクを注ぎなら、友永くん。予め入っていたミルクの量では足りなかったらしい。

「そうなの。友永くんは社交的で明るい人だから、作ろうと思えばすぐに彼女もできるでしょう」
「だといいんですけどねー」
「じゃあ他に質問のある人は? お互いへの理解を深めるためにも、一人一つは質問してくれるとありがたいんだけれど。どんなくだらないことでもいいのよ」
「ええと、じゃあ、血液型は?」
「Oよ。それっぽい?」
「どちらかといえばAかなって思いました。几帳面そうなので」
「そんなことないわよ。普段は物凄く適当なの。この部屋だって、お茶会のために掃除したけど、普段は結構とんでもないわ」
 白雪先輩は片手を振った。

 そうなのだろうか。この綺麗に整えられた部屋が台風一過の後のような惨状になっているところなんて、ちょっと想像できない。

「高坂くんは、何か質問ある?」
 その言葉に、高坂くんは少し考えるような顔をして、言った。
「好きな季節は?」
「そうねえ。春かしら」
「俺もです」
 高坂くんは淡く笑った。白雪先輩もまた微笑み返す。

「雪解けの春は素敵よね。生命が一気に芽吹く、始まりの季節だもの。とても好きだわ」
「…………」
 笑い合う二人を見て、胸に見えない重圧がかかる。ずきずきと、心が痛む。
 この痛みは、感じないと思い込むには強すぎる。
 ああ、そうか。
 私、高坂くんのことが好きだったんだ。
 自覚するのと同時に失恋なんて、私らしい。いつだって私はタイミングが悪いんだ。

 中学のときもそうだった。忘れ物に気づいて、放課後に教室に戻ろうしたら、廊下から聞こえてきた言葉。日下部さんって××くんのことが好きなんじゃないの。ええ、俺、天パはちょっと。そうして笑い合う、クラスメイトたちの言葉が蘇り、胸が苦しくなった。

 友永くんが私を見て苦笑している。俺らって邪魔じゃない? と、その目が同意を求めてくるのがわかる。

 そうだね。私たちはこの場にいるべきじゃないのかもしれない。高坂くんの目に私は映っていないもの。作り物のお姫様にしかなれない私は、本物には敵わない。
 立場の違いを思い知らされて、鼻の奥がつんと痛む。

 華やかに私を飾り立てる洋服が、とても重い。この衣装を着るべきは白雪先輩だ。彼女のような美少女こそ着飾るに相応しい。私は何を浮かれていたんだろう。空回りして、馬鹿みたいだ。

「じゃあ次、くるみちゃん。自己紹介お願いします……どうしたの? ぼうっとして」
「あ、ごめんなさい。大丈夫です。自己紹介ですね! ええと、じゃあ――」
 萎んだ肺に空気を取り込み、私は笑顔を作って口を開いた。
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