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41:満天の星の下(3)

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「寝転がってみて。そのほうが綺麗に見える」
 言われた通りに、私は隣で寝転がり、そして感嘆の声をあげた。改めて見ると本当に今日の夜空は美しい。こんなにたくさんの星が輝いていたのか。まるで星たちの社交場だ。

「綺麗でしょう?」
「うん」
 また彼が笑っているような気がする。どうしよう。星の綺麗さよりも、高坂くんがすぐ隣にいて、しかも同じように寝転がっているという現実に、私の胸がどきどきと騒いでいる。

「ノエルくんとミヤビちゃんにも見せてあげたかったねぇ」
「そうだな。でも、ミヤビは花より団子だから。星空は綺麗でも食えないって一蹴しそう」
「あはは。ありえる。きっとそこで、ノエルくんが『ミヤビさんはどうして風流を理解しないんですか』って怒るんだろうね。写真でも撮っておこうか。見せてあげよう」
 ポケットに入れていた携帯で、星空と湖畔を撮影する。星はあまり綺麗に映らなかったけれど、言葉で補足すれば二匹の猫も納得してくれるだろう。

 私が立ち上がり、湖畔の風景を映している間に、高坂くんも立ち上がっていた。星空を見ているのかと思ったら、彼の視線の先にいるのは私だった。

 撮影を終え、振り返ってそれを確認した私は、どぎまぎしてしまった。
 いやいや待て待て、自意識過剰だ。私じゃなくて私の立ち位置の延長上にある宿泊施設を見ていたんだ。抜け出したのが先生にばれてるかも、とか、寝てる友達のことを考えてたんだ、そうだ、そうに決まってる。

「ど、どうかしたの?」
「いや。別に」
 別にって、気になるんですけど!
「髪がちょっと伸びたよね」
「う、うん。そのうち切りに行くよ。伸ばすと手入れも大変だし。高坂くんが教えてくれた髪型が気に入ってるの」
 ……って、事実なんだけど、言わないほうが良かったかもしれない。変に意識されたかも。
 いや意識されたほうが良いのか、いやでもなんとも思ってない女子からそんなこと言われても困るだけかも、ああああ。

 混乱した私は、後ろ髪に手を入れて俯いた。

「俺はリボン、赤が好き。月曜日につけたやつ」
「あ、そ、そうなんだ」
 それじゃあ赤のリボンのローテーション率は高めにしよう。そうしよう。

「次のお茶会はそれにしてよ」
 高坂くんはその場に座った。片膝だけ上げて、腕をそこにかけて、私を見上げる。

「うん。あ、今度はあんなふうに着飾ったりしないから。ごく普通のワンピースで行くから。一人だけ浮いてたよね、私」
 座りながら言うと、高坂くんは首を傾げた。
「なんで。可愛かったのに。見違えた」
「……。残念だと思う?」
「うん」
 高坂くんは頷いた。まるで子どものように。

「……それじゃあ、また白雪先輩に頼んでお化粧してもらうことにしよう。前回よりもパワーアップを目指して」
 ぐっと拳を握る。

「楽しみにしてる。密かに楽しみなんだよね、俺。お茶会」
 高坂くんが笑った。
「……でも、白雪先輩のことはちょっと苦手っぽいことをミヤビちゃんから聞いたんだけど」
 探りを入れてみる。元カノと似ていて苦手意識を抱くということは、あまり良い別れ方をしていないのじゃないかと不安だったのだ。
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