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33:お茶会(6)
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「手伝いますよ」
私が席を立つよりも先に、高坂くんが動くほうが早かった。
「いいわよ、運ぶだけだから」
「でも、トレーが小さいから一回じゃ無理でしょう? だったら準備する人と運ぶ人がいたほうが速いです」
「……まあそうね。ありがとう」
白雪先輩も高坂くんの申し出を無碍にはできなかったらしく、最終的には折れて微笑んだ。
「いえ」
高坂くんはその笑みから逃れるように、さりげなく目を逸らした。
あ、まただ。
さっきと同じだ。彼は白雪先輩とできるだけ目を合わせないようにしている。
その理由は……?
「あーなるほどな」
ぴんときたように、友永くんが笑った。秘密を握った、そんな感じで。
高坂くんがカップが載ったトレーを持って運んできた。にやにやしている友永くんを見て「なんだよ気持ち悪い」と、結構酷いことを言う。
「べっつにー。次回からは俺ら、お茶会は遠慮したほうがいいのかなって。惚れてんだろ? 美人だもんな、先輩」
「違うし。勘違いするな」
各自に飲み物を配りながら、高坂くんは複雑な顔をした。嫌がっているようにも、照れ隠しのようにも見える。
……ああ、そうか。
高坂くんは、白雪先輩のことが好きなんだ。
何故か、胸に痛みが走ったような気がして、テーブルの下で手を握る。
ミヤビは飼い主のそんな想いを知っていたから『彼女候補生』と言ったのだろうか。
「さあ、お茶会を始めましょうか」
お菓子を並べて、全ての準備を整えた白雪先輩が、席に着いて微笑んだ。私のように、化粧なんてしなくても元から充分に魅力的な、美しい顔で。
「どうしましょうか。まずは入学を祝って乾杯かしらね」
「乾杯って、そんなビールみたいな」
高坂くんが苦笑いする。もう慣れたのか、今度は白雪先輩をまっすぐに見つめた。
「言ったでしょう、このお茶会は『何でもあり』がモットーなのよ。じゃあみんなカップを持って。三人とも、桜庭高校、アーンド、桜庭荘へようこそ! かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「乾杯」
ノリが良いのは友永くんだけで、私と高坂くんは『カップで乾杯ってどうなの?』という戸惑いが抜けないまま、控えめにカップを鳴らした。
私が愛想笑いを浮かべていると気づいたらしく、高坂くんが同志を見つけたような顔で笑いかけてきた。私も笑い返す。難しかったけれど、どうにか笑みを作った。
「ではでは、自己紹介タイムといきましょう。まずは私から、時計回りね。有栖川白雪、三年二組。生徒会書記をやってます。誕生日は8月20日で、しし座です。リーダーシップがあるなんていわれてるけどそうでもないわ」
白雪先輩は苦笑した。
そうかなぁ。お茶会を決行したのは先輩の勇気と決断力だと思うけれど。彼女の行動力をもってしてもリーダーになれないなら、他の誰にもリーダーなんてなれないと思う。
「趣味は音楽鑑賞、ポップもロックも好きよ。なにか質問ある人ー?」
「はーい、彼氏いますか?」
友永くんは片手を挙げて質問した。さりげなく高坂くんを肘で突いて。
高坂くんは嫌そうな顔をしたけれど、無視している。
「残念ながらいません。なかなか理想通りの人にめぐり合えなくてね。理想が高すぎるんだって友達からは言われてるんだけど、好きになる相手に妥協なんてしたくないもの」
白雪先輩は微笑んだ。
私が席を立つよりも先に、高坂くんが動くほうが早かった。
「いいわよ、運ぶだけだから」
「でも、トレーが小さいから一回じゃ無理でしょう? だったら準備する人と運ぶ人がいたほうが速いです」
「……まあそうね。ありがとう」
白雪先輩も高坂くんの申し出を無碍にはできなかったらしく、最終的には折れて微笑んだ。
「いえ」
高坂くんはその笑みから逃れるように、さりげなく目を逸らした。
あ、まただ。
さっきと同じだ。彼は白雪先輩とできるだけ目を合わせないようにしている。
その理由は……?
「あーなるほどな」
ぴんときたように、友永くんが笑った。秘密を握った、そんな感じで。
高坂くんがカップが載ったトレーを持って運んできた。にやにやしている友永くんを見て「なんだよ気持ち悪い」と、結構酷いことを言う。
「べっつにー。次回からは俺ら、お茶会は遠慮したほうがいいのかなって。惚れてんだろ? 美人だもんな、先輩」
「違うし。勘違いするな」
各自に飲み物を配りながら、高坂くんは複雑な顔をした。嫌がっているようにも、照れ隠しのようにも見える。
……ああ、そうか。
高坂くんは、白雪先輩のことが好きなんだ。
何故か、胸に痛みが走ったような気がして、テーブルの下で手を握る。
ミヤビは飼い主のそんな想いを知っていたから『彼女候補生』と言ったのだろうか。
「さあ、お茶会を始めましょうか」
お菓子を並べて、全ての準備を整えた白雪先輩が、席に着いて微笑んだ。私のように、化粧なんてしなくても元から充分に魅力的な、美しい顔で。
「どうしましょうか。まずは入学を祝って乾杯かしらね」
「乾杯って、そんなビールみたいな」
高坂くんが苦笑いする。もう慣れたのか、今度は白雪先輩をまっすぐに見つめた。
「言ったでしょう、このお茶会は『何でもあり』がモットーなのよ。じゃあみんなカップを持って。三人とも、桜庭高校、アーンド、桜庭荘へようこそ! かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「乾杯」
ノリが良いのは友永くんだけで、私と高坂くんは『カップで乾杯ってどうなの?』という戸惑いが抜けないまま、控えめにカップを鳴らした。
私が愛想笑いを浮かべていると気づいたらしく、高坂くんが同志を見つけたような顔で笑いかけてきた。私も笑い返す。難しかったけれど、どうにか笑みを作った。
「ではでは、自己紹介タイムといきましょう。まずは私から、時計回りね。有栖川白雪、三年二組。生徒会書記をやってます。誕生日は8月20日で、しし座です。リーダーシップがあるなんていわれてるけどそうでもないわ」
白雪先輩は苦笑した。
そうかなぁ。お茶会を決行したのは先輩の勇気と決断力だと思うけれど。彼女の行動力をもってしてもリーダーになれないなら、他の誰にもリーダーなんてなれないと思う。
「趣味は音楽鑑賞、ポップもロックも好きよ。なにか質問ある人ー?」
「はーい、彼氏いますか?」
友永くんは片手を挙げて質問した。さりげなく高坂くんを肘で突いて。
高坂くんは嫌そうな顔をしたけれど、無視している。
「残念ながらいません。なかなか理想通りの人にめぐり合えなくてね。理想が高すぎるんだって友達からは言われてるんだけど、好きになる相手に妥協なんてしたくないもの」
白雪先輩は微笑んだ。
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