31 / 44
31:お茶会(4)
しおりを挟む
「……びっくりした。誰かと思った」
「驚いた」
友永くんの発言に、高坂くんが頷いた。私自身、その変貌ぶりに驚いたのだから、彼らの受ける衝撃はその比ではなかったのだろう。
「可愛いじゃん。その服」
「うん。見違えた」
「ありが……って、服? 服だけ?」
お礼を言いかけた私は、友永くんの発言が引っかかって質問に切り替えた。
「じゃあリボンも」
「…………」
「嘘だって。全体的に可愛い。女って化粧すると本当に変わるよな。劇的ビフォーアフターっていうか、はっきりいって詐欺だ」
からかうように笑って、友永くんは白雪先輩に促されるまま席に着いた。高坂くんも友永くんの隣に座る。テーブルは長方形なので、自然と男女で分かれて対面する形になった。なんだかお見合いみたいだ。
「お二人とも、リクエストは珈琲とミルクティーで良かったかしら? 変更もできるけれどどうしましょう?」
白雪先輩は優しい微笑を浮かべて二人に尋ねた。
「あ……はい。それで」
高坂くんは白雪先輩の問いかけに、何故か気まずそうな顔をして頷いた。
……あれ? どうしたんだろう。
気まずい、というより、恥ずかしいのだろうか。高坂くんは白雪先輩とは目を合わせようとはせず、視線をテーブルの端に固定している。
友永くんは美人に対しても気後れせずに「俺もミルクティーでいいです」と答えた。
「じゃあ準備してくるから、三人で雑談でもしていてちょうだい。目の前に可愛い子がいるからって手を出したら駄目よ?」
「しませんよー。俺は日下部さんに手を出すほど物好きじゃないです」
「失礼な!」
あっけらかんとした友永くんの返しに、頬を膨らませる。
「いやーだって、元の顔知ってるしな。いまの姿は完全なフェイクだ。詐欺だ」
「そこまで言う……どうせ私は白雪先輩ほど美人じゃないですよ……」
「あははは」
いじけて言うと、友永くんは笑った。
いや、笑い事じゃないんだけど。ここまで快活に笑われると、もう仕方ないと苦笑するしかない。彼の笑い方には、嫌味なんてまるでないからな。
「なあなあ、高坂って、五組だろ?」
「え。うん。そうだけど」
急に話しかけられて戸惑ったらしく、高坂くんは目を瞬いて友永くんを見た。台所からふんわりと良い香りがする。この香りは珈琲だ。
「やっぱりなー。五組に高坂っていうイケメンがいるって女子たちが騒いでたから。俺、一組の友永っていうんだ。日下部さんとは同じクラスなんで。よろしく」
「ああ、よろしく」
「しっかし確かにイケメンだよなー。これは女子たちが騒ぐのもわかるわー。なんだこの髪。さらっさらじゃん! 天パに対する嫌味か!? 宣戦布告か!? ちくしょう羨ましい、男のくせにCMのモデルにでもなるつもりなのかよ!?」
「えっ、ちょっ」
友永くんに思いっきり髪をかき回され、高坂くんは慌てたように防衛に入った。でも友永くんの攻撃――というかじゃれつき――は止まらない。
「止めろって言ってんだろ!」
最初はまるで小学生男子のようなノリについていけていなかった高坂くんも、次第に緊張が解けたらしく、友永くんの頭をはたいて黙らせた。どちらかといえばおとなしい彼にしてはかなり大胆な行動だ。
「驚いた」
友永くんの発言に、高坂くんが頷いた。私自身、その変貌ぶりに驚いたのだから、彼らの受ける衝撃はその比ではなかったのだろう。
「可愛いじゃん。その服」
「うん。見違えた」
「ありが……って、服? 服だけ?」
お礼を言いかけた私は、友永くんの発言が引っかかって質問に切り替えた。
「じゃあリボンも」
「…………」
「嘘だって。全体的に可愛い。女って化粧すると本当に変わるよな。劇的ビフォーアフターっていうか、はっきりいって詐欺だ」
からかうように笑って、友永くんは白雪先輩に促されるまま席に着いた。高坂くんも友永くんの隣に座る。テーブルは長方形なので、自然と男女で分かれて対面する形になった。なんだかお見合いみたいだ。
「お二人とも、リクエストは珈琲とミルクティーで良かったかしら? 変更もできるけれどどうしましょう?」
白雪先輩は優しい微笑を浮かべて二人に尋ねた。
「あ……はい。それで」
高坂くんは白雪先輩の問いかけに、何故か気まずそうな顔をして頷いた。
……あれ? どうしたんだろう。
気まずい、というより、恥ずかしいのだろうか。高坂くんは白雪先輩とは目を合わせようとはせず、視線をテーブルの端に固定している。
友永くんは美人に対しても気後れせずに「俺もミルクティーでいいです」と答えた。
「じゃあ準備してくるから、三人で雑談でもしていてちょうだい。目の前に可愛い子がいるからって手を出したら駄目よ?」
「しませんよー。俺は日下部さんに手を出すほど物好きじゃないです」
「失礼な!」
あっけらかんとした友永くんの返しに、頬を膨らませる。
「いやーだって、元の顔知ってるしな。いまの姿は完全なフェイクだ。詐欺だ」
「そこまで言う……どうせ私は白雪先輩ほど美人じゃないですよ……」
「あははは」
いじけて言うと、友永くんは笑った。
いや、笑い事じゃないんだけど。ここまで快活に笑われると、もう仕方ないと苦笑するしかない。彼の笑い方には、嫌味なんてまるでないからな。
「なあなあ、高坂って、五組だろ?」
「え。うん。そうだけど」
急に話しかけられて戸惑ったらしく、高坂くんは目を瞬いて友永くんを見た。台所からふんわりと良い香りがする。この香りは珈琲だ。
「やっぱりなー。五組に高坂っていうイケメンがいるって女子たちが騒いでたから。俺、一組の友永っていうんだ。日下部さんとは同じクラスなんで。よろしく」
「ああ、よろしく」
「しっかし確かにイケメンだよなー。これは女子たちが騒ぐのもわかるわー。なんだこの髪。さらっさらじゃん! 天パに対する嫌味か!? 宣戦布告か!? ちくしょう羨ましい、男のくせにCMのモデルにでもなるつもりなのかよ!?」
「えっ、ちょっ」
友永くんに思いっきり髪をかき回され、高坂くんは慌てたように防衛に入った。でも友永くんの攻撃――というかじゃれつき――は止まらない。
「止めろって言ってんだろ!」
最初はまるで小学生男子のようなノリについていけていなかった高坂くんも、次第に緊張が解けたらしく、友永くんの頭をはたいて黙らせた。どちらかといえばおとなしい彼にしてはかなり大胆な行動だ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

傷者部
ジャンマル
青春
高校二年生に上がった隈潟照史(くまがた あきと)は中学の時の幼なじみとのいざこざを未だに後悔として抱えていた。その時の後悔からあまり人と関わらなくなった照史だったが、二年に進学して最初の出席の時、三年生の緒方由紀(おがた ゆき)に傷者部という部活に入ることとなるーー
後悔を抱えた少年少女が一歩だけ未来にあゆみ出すための物語。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

夢幻燈
まみはらまさゆき
青春
・・・まだスマホなんてなくて、ケータイすらも学生の間で普及しはじめたくらいの時代の話です。
自分は幼い頃に親に捨てられたのではないか・・・そんな思いを胸の奥底に抱えたまま、無気力に毎日を送る由夫。
彼はある秋の日、小学生の少女・千代の通学定期を拾ったことから少女の祖父である老博士と出会い、「夢幻燈」と呼ばれる不思議な幻燈機を借り受ける。
夢幻燈の光に吸い寄せられるように夢なのか現実なのか判然としない世界の中で遊ぶことを重ねるうちに、両親への思慕の念、同級生の少女への想いが鮮明になってくる。
夢と現の間を行き来しながら展開される、赦しと再生の物語。
※本作は2000年11月頃に楽天ブログに掲載したものを改稿して「小説家になろう」に掲載し、さらに改稿をしたものです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる