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31:お茶会(4)

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「……びっくりした。誰かと思った」
「驚いた」
 友永くんの発言に、高坂くんが頷いた。私自身、その変貌ぶりに驚いたのだから、彼らの受ける衝撃はその比ではなかったのだろう。

「可愛いじゃん。その服」
「うん。見違えた」
「ありが……って、服? 服だけ?」
 お礼を言いかけた私は、友永くんの発言が引っかかって質問に切り替えた。

「じゃあリボンも」
「…………」
「嘘だって。全体的に可愛い。女って化粧すると本当に変わるよな。劇的ビフォーアフターっていうか、はっきりいって詐欺だ」
 からかうように笑って、友永くんは白雪先輩に促されるまま席に着いた。高坂くんも友永くんの隣に座る。テーブルは長方形なので、自然と男女で分かれて対面する形になった。なんだかお見合いみたいだ。

「お二人とも、リクエストは珈琲とミルクティーで良かったかしら? 変更もできるけれどどうしましょう?」
 白雪先輩は優しい微笑を浮かべて二人に尋ねた。

「あ……はい。それで」
 高坂くんは白雪先輩の問いかけに、何故か気まずそうな顔をして頷いた。
 ……あれ? どうしたんだろう。
 気まずい、というより、恥ずかしいのだろうか。高坂くんは白雪先輩とは目を合わせようとはせず、視線をテーブルの端に固定している。

 友永くんは美人に対しても気後れせずに「俺もミルクティーでいいです」と答えた。

「じゃあ準備してくるから、三人で雑談でもしていてちょうだい。目の前に可愛い子がいるからって手を出したら駄目よ?」
「しませんよー。俺は日下部さんに手を出すほど物好きじゃないです」
「失礼な!」
 あっけらかんとした友永くんの返しに、頬を膨らませる。

「いやーだって、元の顔知ってるしな。いまの姿は完全なフェイクだ。詐欺だ」
「そこまで言う……どうせ私は白雪先輩ほど美人じゃないですよ……」
「あははは」
 いじけて言うと、友永くんは笑った。
 いや、笑い事じゃないんだけど。ここまで快活に笑われると、もう仕方ないと苦笑するしかない。彼の笑い方には、嫌味なんてまるでないからな。

「なあなあ、高坂って、五組だろ?」
「え。うん。そうだけど」
 急に話しかけられて戸惑ったらしく、高坂くんは目を瞬いて友永くんを見た。台所からふんわりと良い香りがする。この香りは珈琲だ。

「やっぱりなー。五組に高坂っていうイケメンがいるって女子たちが騒いでたから。俺、一組の友永っていうんだ。日下部さんとは同じクラスなんで。よろしく」
「ああ、よろしく」
「しっかし確かにイケメンだよなー。これは女子たちが騒ぐのもわかるわー。なんだこの髪。さらっさらじゃん! 天パに対する嫌味か!? 宣戦布告か!? ちくしょう羨ましい、男のくせにCMのモデルにでもなるつもりなのかよ!?」
「えっ、ちょっ」
 友永くんに思いっきり髪をかき回され、高坂くんは慌てたように防衛に入った。でも友永くんの攻撃――というかじゃれつき――は止まらない。

「止めろって言ってんだろ!」
 最初はまるで小学生男子のようなノリについていけていなかった高坂くんも、次第に緊張が解けたらしく、友永くんの頭をはたいて黙らせた。どちらかといえばおとなしい彼にしてはかなり大胆な行動だ。
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