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35:気になる言葉

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「銀太くーん、どこー? 帰るよー?」
 もう大丈夫と判断して屋上から離れた後、美緒は朝陽と手分けして銀太を探していた。

 美緒の肩の上で入学式に参列していた銀太だが、いつ終わるとも知れない校長先生の長い話に辟易したらしく「遊びに行ってくる」と言って去った。

 一度だけ教室に戻って来たけれど、今度は担任が話し中と知り、再び白い尻尾を揺らしてどこかへ行ってしまった。

(いないなぁ。もう朝陽くんが見つけてるのかな?)

 空き教室を覗き、渡り廊下を歩いて別棟を回り、閉鎖された屋上前まで行ってみたが、銀太の姿はない。

 朝陽と連絡を取りたいところだが朝陽は携帯を持っていない。
 ついでにいうと姫子もだ。

「銀太くんって壁抜けもできるんだよね。すれ違ってる可能性もあるかも……どこにいるんだろ……」
 ぼやきながら階段を下りていると、誰かが上がって来た。

「あれ、芳谷さん」
 姿を表したのは鞄を左肩に下げた優だった。

 姫子とは既に別れたらしく一人だ。

「天野くん。どうしてここに?」
 自分のことは棚上げして尋ねる。
 特に用事がない限り、クラスメイトがこの棟に来ることはないはずだ。

「帰る前に一通り校内を見て回ろうかなと思って。光瑛って広いからさ。カフェもあるし、設備も最新式だし、さすが私立って感じだよね。芳谷さんも散歩してるの?」
「うん……まあ、そんなところ」
 まさか狐の幽霊を探していると言えるわけもなく、曖昧に笑うと、優は何か感じるものがあったのか「そう」と頷いた。

「じゃあぼくはこれで」
「うん、また明日ね」
 すれ違い、数歩進んだところで、優が背中に声をかけてきた。

「もし何か探してるなら、特別校舎の非常階段に行くといいかも」

「え?」
 振り返ったが、優は既にいなくなっていた。
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