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10:狐が学校に通う!?
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「この紐を持っているってことは、朝陽さんも相談員なんですね」
「おれは相談員っていう柄でもないんだけどな。銀太がやりたがっていたから、おれが代わりにその夢を引き継ぐことにした。おれは人として暮らし、人に混じって生きるあやかしの助けになりたいと思ってる。現世にも多くのあやかしが住んでいることは、君も知っているだろう?」
「はい。銀太くんと会ってから、わたし、あやかしに対するイメージが変わりました。怖がってばかりいたけれど、身を呈してわたしを守ってくれるような、優しいあやかしもいるんだなって。それから、あやかしと積極的に関わるようになったんです。思い切って話してみるとみんな優しいあやかしばかりで、時々家にも遊びに来てくれました。月に一度は、おばあちゃんも交えてお茶会を開いたりしてたんですよ」
集まるあやかしの面子によって、メインの飲み物が紅茶になるときもあれば、緑茶や珈琲にもなった。
お茶受けも老舗の和菓子だったりスナック菓子だったり。
お茶会と言いつつゲーム大会が開催されることもあった、基本的になんでもありの、和気藹々としたあやかしたちとの交流会に思いを馳せ、美緒は知らずに笑んでいた。
「引っ越すと言ったら、みんな別れを惜しんでくれたんですよ。一反木綿さんは飛んで会いに行くと言ってくれました。豆だぬきの子たちは花の首飾りをくれましたし、花河童ちゃんはキュウリの漬物をくれたんです。あ、花河童っていうのは頭のお皿に花を飾っていたからわたしが勝手につけた名前なんですけど。彼女がくれた漬物は味のバリエーションも豊かで、とっても美味しかった。もらってすぐに食べ切っちゃいました」
「そうか。良いあやかしに恵まれたようで良かった。縁日では怖い目に遭っただろう? あやかし嫌いになっていないか心配だったんだ」
美緒の笑顔につられるように、朝陽も微笑んだ。
感情表現はあまり豊かな方ではないが、優しい狐らしい。
他者に共感して笑うことができるのだから。
興味と好感を持って朝陽を見る。
見た目ではそう変わらない年頃に見えるが、実際はいくつなのだろうという疑問が沸いた。
「……朝陽さんって、いまいくつなんですか?」
「さあ。正確な年は知らない。あやかしはいちいち年を数えたりしないからな。でも、外見的には君と一緒くらいなんじゃないだろうか。少なくとも人間としての公的書類上では君と同じ十五歳ということになっている。でなければ高校に入れないからな」
「…………ん? 高校に通うんですか? 人間の?」
狐なのに? と続いて飛び出しかけた言葉を美緒はすんでのところで飲み込んだ。
「ああ。君と同じ、光瑛高校に」
この後の美緒の反応を予想してだろう、朝陽が小さく笑った。
「ええええええ!?」
光瑛高校は県でも三指に入る進学校。
実力で合格したのだとしたら大したものだ。
銀太の『ぼくよりずうっと頭も良い』という褒め言葉は決して大げさではなかったらしい。
「おれは相談員っていう柄でもないんだけどな。銀太がやりたがっていたから、おれが代わりにその夢を引き継ぐことにした。おれは人として暮らし、人に混じって生きるあやかしの助けになりたいと思ってる。現世にも多くのあやかしが住んでいることは、君も知っているだろう?」
「はい。銀太くんと会ってから、わたし、あやかしに対するイメージが変わりました。怖がってばかりいたけれど、身を呈してわたしを守ってくれるような、優しいあやかしもいるんだなって。それから、あやかしと積極的に関わるようになったんです。思い切って話してみるとみんな優しいあやかしばかりで、時々家にも遊びに来てくれました。月に一度は、おばあちゃんも交えてお茶会を開いたりしてたんですよ」
集まるあやかしの面子によって、メインの飲み物が紅茶になるときもあれば、緑茶や珈琲にもなった。
お茶受けも老舗の和菓子だったりスナック菓子だったり。
お茶会と言いつつゲーム大会が開催されることもあった、基本的になんでもありの、和気藹々としたあやかしたちとの交流会に思いを馳せ、美緒は知らずに笑んでいた。
「引っ越すと言ったら、みんな別れを惜しんでくれたんですよ。一反木綿さんは飛んで会いに行くと言ってくれました。豆だぬきの子たちは花の首飾りをくれましたし、花河童ちゃんはキュウリの漬物をくれたんです。あ、花河童っていうのは頭のお皿に花を飾っていたからわたしが勝手につけた名前なんですけど。彼女がくれた漬物は味のバリエーションも豊かで、とっても美味しかった。もらってすぐに食べ切っちゃいました」
「そうか。良いあやかしに恵まれたようで良かった。縁日では怖い目に遭っただろう? あやかし嫌いになっていないか心配だったんだ」
美緒の笑顔につられるように、朝陽も微笑んだ。
感情表現はあまり豊かな方ではないが、優しい狐らしい。
他者に共感して笑うことができるのだから。
興味と好感を持って朝陽を見る。
見た目ではそう変わらない年頃に見えるが、実際はいくつなのだろうという疑問が沸いた。
「……朝陽さんって、いまいくつなんですか?」
「さあ。正確な年は知らない。あやかしはいちいち年を数えたりしないからな。でも、外見的には君と一緒くらいなんじゃないだろうか。少なくとも人間としての公的書類上では君と同じ十五歳ということになっている。でなければ高校に入れないからな」
「…………ん? 高校に通うんですか? 人間の?」
狐なのに? と続いて飛び出しかけた言葉を美緒はすんでのところで飲み込んだ。
「ああ。君と同じ、光瑛高校に」
この後の美緒の反応を予想してだろう、朝陽が小さく笑った。
「ええええええ!?」
光瑛高校は県でも三指に入る進学校。
実力で合格したのだとしたら大したものだ。
銀太の『ぼくよりずうっと頭も良い』という褒め言葉は決して大げさではなかったらしい。
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