40 / 47
第五章 風嵐都市編
第五話「かつての戦友」
しおりを挟む
ダイダリオスの前には黒鉄の鎧を纏った男が立っている。
前に現れた男はシャステイルだった。
「なぜ、お前が邪神教の姿でここにいる?」
ダイダリオスに問いかける。
「俺は神王陛下の命令で邪神教に潜伏していた。シャステイル、お前こそ…十年前の出来事以来姿を消して、今まで何をしていたんだ?」
憎悪の籠った目でシャステイルを見る。
十年前、風嵐都市の隣国で巻き起こった大規模な紛争。
その紛争で隣国は滅びてしまった。
当時、聖騎士として救援に派遣されたシャステイルとダイダリオスは焼野原になった街を見て絶望する。
後に首謀者が邪神教だということを知ったシャステイルは風嵐神ファルファレラへ対策を講じるよう進言したが、進言は通ることなく却下されてしまったのだ。
その頃からシャステイルはファルファレラの見据える未来に異変を感じるようになってしまい、聖騎士の座を降り、行方を眩ませた。
「俺はあれ以来、邪神教を探して殺して回っていた」
シャステイルの言葉を聞いて、荒ぶるダイダリオス。
「お前は神王殿下を裏切った…!殿下に慕われていたお前が!隊長として…聖騎士に残っていれば、あの方も…」
「ダイダリオス、あれはもう俺たちの慕っていた神王殿下ではないてん…。お前だって気付いているだろう!」
「ふざけるな…のうのうと生き、国を捨てたお前を…俺は、許さない!」
ダイダリオスの纏うオーラが激しさを増し、一帯の地面が揺れる。
「いつかの決着を着けようか、隊長」
爆風が巻き起こり、シャステイルは腕で顔を守る。
「ダイダリオス、お前を止める」
シャステイルの手に収束する。それはやがて透明の剣へと形を変えた。
バチバチと音を立て、直立するダイダリオスもまた、全身が漆黒の外装に覆われ、異様な雰囲気を感じさせるものへと変貌を遂げる。
「シャステイル!!!」
足元の地面が抉れ、ダイダリオスが視界から消えた。
凄まじい速さで背後へと回り込み、死角から放たれた一撃をシャステイルは受け止める。
―ドンッ!!
ダイダリオスの強烈な蹴りがシャステイルを吹き飛ばす。
受け身を取ったシャステイルへと怒涛の攻撃を仕掛ける。
かつて七翼の聖騎士《一席》を担っていたシャステイルですら全力のダイダリオスに圧倒されてしまう。
「《風斬り》!!」
シャステイルは防戦一方ながらも反撃を行うが、ダイダリオスの能力でかき消されてしまう。
剣を形成していた風は形を崩し、無防備となったシャステイルをダイダリオスの爪が切り裂いた。
「ソノ鎧の能力はもう知っている」
真空を操る能力が無効化されてしまい、シャステイルは押されていた。
(能力の無効化に加えて…邪眼による動体視力と反射神経の限界突破か。厄介だな…)
今まで一切焦りを見せてこなかったシャステイルの額から汗が流れ落ちる。
シャステイルには勝機があった。だが、その技は一度見切られると二度は通用しない。
(次の一撃で決めなければ…、負ける…)
視界で追えるギリギリの速度で動くダイダリオスが攻撃に移った。
剣を振りかざし、技を放とうとするシャステイルにダイダリオスは言う。
「ソノ風ノ剣ハ通用シナイゾ…!!」
シャステイルとダイダリオスが同時に攻撃を放った。
「はあああああ!!!!」
「ハアアアアア!!!!」
ダイダリオスの攻撃でシャステイルの風は霧散してしまう。
「終ワリダ!!」
急に視界が斜めになる。
何が起こったかわからなかったダイダリオスだがすぐに理解した。
胴体に激痛が走ったからだ。
(斬られた…!?)
自身の肩から胸にかけて何かに斬られていた。。
「能力ガ…ナゼ…」
痛みの方向へ目をやると、そこには風の剣ではなく一本の剣があった。
「…風の形成した剣の中にもう一つ本物の剣を仕込んでおいた」
「お前の敗因は、能力を無効化できたと思い込み実体のある剣に気付かなかったことだ。昔から…詰めが甘い」
ダイダリオスは倒れ込む。
「俺ハ…結局勝テナカッタノカ…」
連戦で酷使した身体は限界を迎えていた。
「シャステイル…アノ方ヲ…救ッテヤッテクレ」
途切れかけの意識でシャステイルに話しかける。
「ああ…。お前はもう、休め…」
ダイダリオスの外装が崩れ落ち、呼吸が止まる。
「ぐ…」
戦いには勝利したが、身体は悲鳴を上げていた。
シャステイルは傷だらけの身体を振るい立たせ、風嵐神がいる場所へと向かう。
前に現れた男はシャステイルだった。
「なぜ、お前が邪神教の姿でここにいる?」
ダイダリオスに問いかける。
「俺は神王陛下の命令で邪神教に潜伏していた。シャステイル、お前こそ…十年前の出来事以来姿を消して、今まで何をしていたんだ?」
憎悪の籠った目でシャステイルを見る。
十年前、風嵐都市の隣国で巻き起こった大規模な紛争。
その紛争で隣国は滅びてしまった。
当時、聖騎士として救援に派遣されたシャステイルとダイダリオスは焼野原になった街を見て絶望する。
後に首謀者が邪神教だということを知ったシャステイルは風嵐神ファルファレラへ対策を講じるよう進言したが、進言は通ることなく却下されてしまったのだ。
その頃からシャステイルはファルファレラの見据える未来に異変を感じるようになってしまい、聖騎士の座を降り、行方を眩ませた。
「俺はあれ以来、邪神教を探して殺して回っていた」
シャステイルの言葉を聞いて、荒ぶるダイダリオス。
「お前は神王殿下を裏切った…!殿下に慕われていたお前が!隊長として…聖騎士に残っていれば、あの方も…」
「ダイダリオス、あれはもう俺たちの慕っていた神王殿下ではないてん…。お前だって気付いているだろう!」
「ふざけるな…のうのうと生き、国を捨てたお前を…俺は、許さない!」
ダイダリオスの纏うオーラが激しさを増し、一帯の地面が揺れる。
「いつかの決着を着けようか、隊長」
爆風が巻き起こり、シャステイルは腕で顔を守る。
「ダイダリオス、お前を止める」
シャステイルの手に収束する。それはやがて透明の剣へと形を変えた。
バチバチと音を立て、直立するダイダリオスもまた、全身が漆黒の外装に覆われ、異様な雰囲気を感じさせるものへと変貌を遂げる。
「シャステイル!!!」
足元の地面が抉れ、ダイダリオスが視界から消えた。
凄まじい速さで背後へと回り込み、死角から放たれた一撃をシャステイルは受け止める。
―ドンッ!!
ダイダリオスの強烈な蹴りがシャステイルを吹き飛ばす。
受け身を取ったシャステイルへと怒涛の攻撃を仕掛ける。
かつて七翼の聖騎士《一席》を担っていたシャステイルですら全力のダイダリオスに圧倒されてしまう。
「《風斬り》!!」
シャステイルは防戦一方ながらも反撃を行うが、ダイダリオスの能力でかき消されてしまう。
剣を形成していた風は形を崩し、無防備となったシャステイルをダイダリオスの爪が切り裂いた。
「ソノ鎧の能力はもう知っている」
真空を操る能力が無効化されてしまい、シャステイルは押されていた。
(能力の無効化に加えて…邪眼による動体視力と反射神経の限界突破か。厄介だな…)
今まで一切焦りを見せてこなかったシャステイルの額から汗が流れ落ちる。
シャステイルには勝機があった。だが、その技は一度見切られると二度は通用しない。
(次の一撃で決めなければ…、負ける…)
視界で追えるギリギリの速度で動くダイダリオスが攻撃に移った。
剣を振りかざし、技を放とうとするシャステイルにダイダリオスは言う。
「ソノ風ノ剣ハ通用シナイゾ…!!」
シャステイルとダイダリオスが同時に攻撃を放った。
「はあああああ!!!!」
「ハアアアアア!!!!」
ダイダリオスの攻撃でシャステイルの風は霧散してしまう。
「終ワリダ!!」
急に視界が斜めになる。
何が起こったかわからなかったダイダリオスだがすぐに理解した。
胴体に激痛が走ったからだ。
(斬られた…!?)
自身の肩から胸にかけて何かに斬られていた。。
「能力ガ…ナゼ…」
痛みの方向へ目をやると、そこには風の剣ではなく一本の剣があった。
「…風の形成した剣の中にもう一つ本物の剣を仕込んでおいた」
「お前の敗因は、能力を無効化できたと思い込み実体のある剣に気付かなかったことだ。昔から…詰めが甘い」
ダイダリオスは倒れ込む。
「俺ハ…結局勝テナカッタノカ…」
連戦で酷使した身体は限界を迎えていた。
「シャステイル…アノ方ヲ…救ッテヤッテクレ」
途切れかけの意識でシャステイルに話しかける。
「ああ…。お前はもう、休め…」
ダイダリオスの外装が崩れ落ち、呼吸が止まる。
「ぐ…」
戦いには勝利したが、身体は悲鳴を上げていた。
シャステイルは傷だらけの身体を振るい立たせ、風嵐神がいる場所へと向かう。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる