29 / 47
第四章 砂塵の都編
第四話「弱肉強食」
しおりを挟む
砂塵闘技場の近くにあった酒場へと入った二人は部屋の一番奥の席に座る。
室内は大盛況で、闘技場の出場者や観客たちで賑わっていた。
「この街でジュドの仲間と邪神教の情報を集めよう」
シャステイルがそう言って、定員を呼ぶ。
注文している間、ジュドは辺りを見渡し、これまでの街と雰囲気の違う酒場を眺める。
「お待たせにゃ!二人分のエールとクアトロファッジ、アンテラリブね」
獣人の少女が注文から数分で早速料理や酒を持ってきた。
「あにゃたたち、見ない顔だにゃ。武闘祭の出場者?」
ここでも武闘祭の話が出てきた。
王国にいた頃は名前すら聞いたことがなかったが、遠路はるばるやってきたこの街や周辺国では参加するのが当たり前なのだろうか。
「武闘祭は四部族が競う合うと聞いたんだが、一般の参加者も多いものなのか?」
「始まりはそうだったけど、どうにも今回は主催が珍しいものを優勝賞品にしているらしくて。各国から色んな人が来てるらしいにゃ。あにゃたたち知らなかったの?」
「…珍しい優勝賞品?」
その景品についてジュドは定員に尋ねる。
「何だったかにゃ。たしか…」
彼女は少し悩んだ後に、はっと思い出したような表情のあと口を開ける。
「そうそう、〝遺物〟とかいうやつだにゃ!」
定員から告げられた衝撃の一言を聞いたジュドとシャステイルは目を見開き、驚きが顔に現れる。
聞き馴染みのあるその〝遺物〟という響き。
‶邪神の遺物〟。つまり、魔装十二振。
二人の脳裏に最悪の考えがよぎる。
「痛ってぇなあ!おい」
緊迫した二人を他所に怒号が飛び交い始める。
酒場の入り口付近でギャングのような見た目をした男3人が灰色のフードを被った大男に絡んでいた。
「おい、兄ちゃん。肩が当たってんだよ。ちゃんと周りを見て立ち飲みしろや」
ただ単に席で酒を飲んでいた客にケチをつけている。
絡んでいる三人、その中でも一番大柄の男が鞘に手をかけ大男に眼を飛ばす。
「明日から武闘祭だってのに、怪我したらどーしてくれんだよ?あぁん?責任取れんのかぁ?」
騒動に客が気づき始め、酒場がざわつき始める。
だが意外にも喧嘩を止める者はおらず、喧嘩を盛り上げようと声を上げ始める人もいた。
ザンディルが言ってた治安の問題はこういうことなのか?ジュドは目の前の異常な光景を見て感じる。
「金置いてけや」
逃がす気がない男たちに大男は言う。
「力の差もわからないとは」
「あ?てめぇ…」
その姿勢に我慢を切らした三人は武器を抜き、殺意を込めて襲いかかる。
「あの世で後悔しろやぁ!」
三方向からナイフやシュミターが振り下ろされる。
フード付きのマントは安易と切り裂かれ、服の中から傷だらけの肉体が露わになる。
見るからに強靭なその体は刃でかすり傷しかつけることができず、刃こぼれさせるほどのものだった。
「乱闘はいいけど!殺すなら外で頼むよ!」
酒場の店長は大男に向けて忠告する。
三人の男たちは大男に次々と店の外へと放り投げられ、客たちもぞろぞろと外に出始める。
猫耳の定員と共にジュドとシャステイルも外へ出る。
「兄貴、こいつやばくないか…?」
「うるせぇ!このままじゃ俺たちが殺されんだぞ…!!」
刃物が通じず、焦りを感じていた三人だが懲りずに攻撃を続ける。
反撃もせず、ただじっとしていただけの大男が遂に拳を握り、構えを取った。
「その程度か?」
突っ込んでくる男の振り下ろされた武器、その柄を握る腕を左手で捉え、掴んだ瞬間にボキボキと骨が砕ける音がなる。
「ぁあぁあ!!」
男の断末魔が聞こえたと同時に、大男の右手が対象の顎に直撃した。
衝撃で口から血飛沫が舞い、顎が粉々になる。
その惨劇を見て、逃げようとした残りの二人も背を向けた瞬間に腹部を手刀で貫かれ絶命する。
助けに入ろうとしたジュドをシャステイルが止めていた。
今は抑えろ。そう言いたげなシャステイルの考えは十分わかっているが…それでも、あまりにもむごすぎる。
大男は三人を葬った後、店で会計を済ませ、その場を去って行った。
客たちもぞろぞろと店へと戻り、来店時よりも更に客は盛り上がりを見せていた。
ジュドは横たわった死体を道の脇に置き、店内に戻ったが食欲が失せており、食事する気にはならなかった。
「場所によってはルールも違う。あまり気にするな」
水門都市での一件もあったことからシャステイルはジュドに声をかけ、食事を続ける。
「そうだな…」
簡単に命が奪われてしまうことに慣れない部分はあるが、そういうものだと自分に言い聞かせて無理やり胃に食事を入れた。
食事を済ませた二人は、三階の部屋に戻り、明日の戦いに向けて英気を養うことにする。
室内は大盛況で、闘技場の出場者や観客たちで賑わっていた。
「この街でジュドの仲間と邪神教の情報を集めよう」
シャステイルがそう言って、定員を呼ぶ。
注文している間、ジュドは辺りを見渡し、これまでの街と雰囲気の違う酒場を眺める。
「お待たせにゃ!二人分のエールとクアトロファッジ、アンテラリブね」
獣人の少女が注文から数分で早速料理や酒を持ってきた。
「あにゃたたち、見ない顔だにゃ。武闘祭の出場者?」
ここでも武闘祭の話が出てきた。
王国にいた頃は名前すら聞いたことがなかったが、遠路はるばるやってきたこの街や周辺国では参加するのが当たり前なのだろうか。
「武闘祭は四部族が競う合うと聞いたんだが、一般の参加者も多いものなのか?」
「始まりはそうだったけど、どうにも今回は主催が珍しいものを優勝賞品にしているらしくて。各国から色んな人が来てるらしいにゃ。あにゃたたち知らなかったの?」
「…珍しい優勝賞品?」
その景品についてジュドは定員に尋ねる。
「何だったかにゃ。たしか…」
彼女は少し悩んだ後に、はっと思い出したような表情のあと口を開ける。
「そうそう、〝遺物〟とかいうやつだにゃ!」
定員から告げられた衝撃の一言を聞いたジュドとシャステイルは目を見開き、驚きが顔に現れる。
聞き馴染みのあるその〝遺物〟という響き。
‶邪神の遺物〟。つまり、魔装十二振。
二人の脳裏に最悪の考えがよぎる。
「痛ってぇなあ!おい」
緊迫した二人を他所に怒号が飛び交い始める。
酒場の入り口付近でギャングのような見た目をした男3人が灰色のフードを被った大男に絡んでいた。
「おい、兄ちゃん。肩が当たってんだよ。ちゃんと周りを見て立ち飲みしろや」
ただ単に席で酒を飲んでいた客にケチをつけている。
絡んでいる三人、その中でも一番大柄の男が鞘に手をかけ大男に眼を飛ばす。
「明日から武闘祭だってのに、怪我したらどーしてくれんだよ?あぁん?責任取れんのかぁ?」
騒動に客が気づき始め、酒場がざわつき始める。
だが意外にも喧嘩を止める者はおらず、喧嘩を盛り上げようと声を上げ始める人もいた。
ザンディルが言ってた治安の問題はこういうことなのか?ジュドは目の前の異常な光景を見て感じる。
「金置いてけや」
逃がす気がない男たちに大男は言う。
「力の差もわからないとは」
「あ?てめぇ…」
その姿勢に我慢を切らした三人は武器を抜き、殺意を込めて襲いかかる。
「あの世で後悔しろやぁ!」
三方向からナイフやシュミターが振り下ろされる。
フード付きのマントは安易と切り裂かれ、服の中から傷だらけの肉体が露わになる。
見るからに強靭なその体は刃でかすり傷しかつけることができず、刃こぼれさせるほどのものだった。
「乱闘はいいけど!殺すなら外で頼むよ!」
酒場の店長は大男に向けて忠告する。
三人の男たちは大男に次々と店の外へと放り投げられ、客たちもぞろぞろと外に出始める。
猫耳の定員と共にジュドとシャステイルも外へ出る。
「兄貴、こいつやばくないか…?」
「うるせぇ!このままじゃ俺たちが殺されんだぞ…!!」
刃物が通じず、焦りを感じていた三人だが懲りずに攻撃を続ける。
反撃もせず、ただじっとしていただけの大男が遂に拳を握り、構えを取った。
「その程度か?」
突っ込んでくる男の振り下ろされた武器、その柄を握る腕を左手で捉え、掴んだ瞬間にボキボキと骨が砕ける音がなる。
「ぁあぁあ!!」
男の断末魔が聞こえたと同時に、大男の右手が対象の顎に直撃した。
衝撃で口から血飛沫が舞い、顎が粉々になる。
その惨劇を見て、逃げようとした残りの二人も背を向けた瞬間に腹部を手刀で貫かれ絶命する。
助けに入ろうとしたジュドをシャステイルが止めていた。
今は抑えろ。そう言いたげなシャステイルの考えは十分わかっているが…それでも、あまりにもむごすぎる。
大男は三人を葬った後、店で会計を済ませ、その場を去って行った。
客たちもぞろぞろと店へと戻り、来店時よりも更に客は盛り上がりを見せていた。
ジュドは横たわった死体を道の脇に置き、店内に戻ったが食欲が失せており、食事する気にはならなかった。
「場所によってはルールも違う。あまり気にするな」
水門都市での一件もあったことからシャステイルはジュドに声をかけ、食事を続ける。
「そうだな…」
簡単に命が奪われてしまうことに慣れない部分はあるが、そういうものだと自分に言い聞かせて無理やり胃に食事を入れた。
食事を済ませた二人は、三階の部屋に戻り、明日の戦いに向けて英気を養うことにする。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~
卯月らいな
ファンタジー
魔法が歌声によって操られる世界で、男性の声は攻撃や祭事、狩猟に、女性の声は補助や回復、農業に用いられる。男女が合唱することで魔法はより強力となるため、魔法学園では入学時にペアを組む風習がある。
この物語は、エリック、エリーゼ、アキラの三人の主人公の群像劇である。
エリーゼは、新聞記者だった父が、議員のスキャンダルを暴く過程で不当に命を落とす。父の死後、エリーゼは母と共に貧困に苦しみ、社会の底辺での生活を余儀なくされる。この経験から彼女は運命を変え、父の死に関わった者への復讐を誓う。だが、直接復讐を果たす力は彼女にはない。そこで、魔法の力を最大限に引き出し、社会の頂点へと上り詰めるため、魔法学園での地位を確立する計画を立てる。
魔法学園にはエリックという才能あふれる生徒がおり、彼は入学から一週間後、同級生エリーゼの禁じられた魔法によって彼女と体が入れ替わる。この予期せぬ出来事をきっかけに、元々女声魔法の英才教育を受けていたエリックは女性として女声の魔法をマスターし、新たな男声パートナー、アキラと共に高みを目指すことを誓う。
アキラは日本から来た異世界転生者で、彼の世界には存在しなかった歌声の魔法に最初は馴染めなかったが、エリックとの多くの試練を経て、隠された音楽の才能を開花させる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる