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第三章 水門都市編
第四話「近衛兵団本部」
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約束の時間までバザールを満喫したジュドたちはアクアポートで街の中央広場にある近衛兵本部まで来ていた。
「お待ちしておりました。こちらです」
受付の近衛兵に連れられ、階段を上がりオーレダリアの執務室へと入る。
部屋からは街全体を一望することができ、水門都市の治安維持を行うのにはこの場所以外はないと思えるくらいの景色だった。
「待たせてすまない。少し散らかっているけど、そこに座ってくれ」
一行は来客用のソファに座り、オーレダリアは向かいの執務椅子に腰掛ける。
机には山積みの書類が重なっており、ふとその中の一枚に目がいく。
〝至急、呼び声の異常発生。対応求む〟。
「これは…」
チラっと見えた書類には呼び声についてが記されていた。
「ああ、色々とごたついていてね。その件については私の質問に答えてもらったあとで詳しく話そう」
オーレダリアは部下に客人への飲み物を手配し、真剣な顔でジュドたちに尋ねる。
「さっそくだが…地底都市から君たちがここへ来た理由を聞かせてもらいたい。送られてきた封書には君たちから聞けとしか書かれていなくてね」
地底神が封書を通して、ジュドたちのために上手く立ち回ってくれているみたいだ。
「わかった。地底都市での一件のことだが…」
ジュドたちは地底都市の黒石神殿で起こった異常事態、邪神教の暗躍、事件の収集をすべてオーレダリアに伝えた。
「…それで君たちがここ、水門都市へ漠水神フィオーネ様を探しに来たというわけか」
話を聞き終わると、オーレダリアはさっき見た書類を手に取り、話し始める。
「王国近郊と同じく、水門都市でも現在、呼び声による被害が著しく増加している。この状況は街を守る近衛兵団として看過することはできないため私たちは呼び声発生の疑わしい〝フィオーネ古海〟へ調査に赴こうとした。しかし、とある理由で調査は難航し、思うように動けないと言うわけなんだ…」
「とある理由…??」
「現在水門都市は地底都市と違い、主神が統治しているわけではないんだ。フィオーネ様は都市とその民の将来を考え、統治を民に任せることにされた」
オーレダリアが忙しなく執務に追われていた理由はこれだったのだ。
主神が前線を退いたこと、呼び声の被害が増加していること、運悪くそれらのタイミングが重なり、本来より慌ただしくなっていた。
「と言っても、都市の管理、運営は専門の組織が行なっているから…私たち近衛兵団の一番の問題は呼び声の増加なんだけどね」
「フィオーネ古海は浅瀬を越えて沖まで行くと魔物の危険度が上がるから、今までは近衛兵が警護していたんだけど…そこに出る呼び声は街に出る個体と比べて強力なやつが多くて、ろくに漁にも出られない状況が続いている」
バザールを回っていた時はあまり感じなかったが、地底都市と同じく水門都市でも刻一刻と異常が発生し始めているようだ。
「というわけで、私が忙しいということはわかってくれたかな?」
「君たちにフィオーネ様の居場所を教える代わりに忙しい私に変わってここ最近の状況についての見解を聞いてきて欲しい。悪くない提案だろう?」
瀑水神に会うためには提案を断るわけにはいかないため、ジュドはこれを了承する。
「よし、じゃあ君たちにこれを渡そう。そうだな、魔力量的に君が一番良さそうだ」
ルシアに白銀の石印が手渡される。
「これは…?」
突然一任されたルシアは困惑しながら受け取る。
「これは近衛兵同士が連絡に使っている通信機みたいなものだ。魔力で通信することができる」
「フィオーネ様が何とおっしゃっていたか。それと急時の際はそれで私に連絡してくれるといいよ」
そう伝えるとオーレダリアは席を立ち、窓の外を指差す。
「フィオーネ様は街の西にある丘の上に隠居されている。あそこに見える灯台を目印にすると辿り着きやすいと思うから、お願いね」
あの丘に瀑水神が。
地底神が人ならざる威圧感を醸し出していたということは、水の旧神も計り知れないのだろうか。
背筋に汗が滴る。
「わかった、また何かあったら連絡する」
ジュドはすでに冷えてしまった飲み物を一気に飲み干し、執務室から出る。近衛兵本部を出る途中、ジュドは口に残るほのかな酸味とほどよい甘さに舌鼓を打つ。
「しまった!あの飲み物、名前聞いとけば良かったな」
「観光じゃないのよ?まったくあんたは…」
システィが呆れた表情で言う。
「ジュドらしいな」
ダグラスたちもふっと笑い、一行は近衛兵本部を出る。
「お待ちしておりました。こちらです」
受付の近衛兵に連れられ、階段を上がりオーレダリアの執務室へと入る。
部屋からは街全体を一望することができ、水門都市の治安維持を行うのにはこの場所以外はないと思えるくらいの景色だった。
「待たせてすまない。少し散らかっているけど、そこに座ってくれ」
一行は来客用のソファに座り、オーレダリアは向かいの執務椅子に腰掛ける。
机には山積みの書類が重なっており、ふとその中の一枚に目がいく。
〝至急、呼び声の異常発生。対応求む〟。
「これは…」
チラっと見えた書類には呼び声についてが記されていた。
「ああ、色々とごたついていてね。その件については私の質問に答えてもらったあとで詳しく話そう」
オーレダリアは部下に客人への飲み物を手配し、真剣な顔でジュドたちに尋ねる。
「さっそくだが…地底都市から君たちがここへ来た理由を聞かせてもらいたい。送られてきた封書には君たちから聞けとしか書かれていなくてね」
地底神が封書を通して、ジュドたちのために上手く立ち回ってくれているみたいだ。
「わかった。地底都市での一件のことだが…」
ジュドたちは地底都市の黒石神殿で起こった異常事態、邪神教の暗躍、事件の収集をすべてオーレダリアに伝えた。
「…それで君たちがここ、水門都市へ漠水神フィオーネ様を探しに来たというわけか」
話を聞き終わると、オーレダリアはさっき見た書類を手に取り、話し始める。
「王国近郊と同じく、水門都市でも現在、呼び声による被害が著しく増加している。この状況は街を守る近衛兵団として看過することはできないため私たちは呼び声発生の疑わしい〝フィオーネ古海〟へ調査に赴こうとした。しかし、とある理由で調査は難航し、思うように動けないと言うわけなんだ…」
「とある理由…??」
「現在水門都市は地底都市と違い、主神が統治しているわけではないんだ。フィオーネ様は都市とその民の将来を考え、統治を民に任せることにされた」
オーレダリアが忙しなく執務に追われていた理由はこれだったのだ。
主神が前線を退いたこと、呼び声の被害が増加していること、運悪くそれらのタイミングが重なり、本来より慌ただしくなっていた。
「と言っても、都市の管理、運営は専門の組織が行なっているから…私たち近衛兵団の一番の問題は呼び声の増加なんだけどね」
「フィオーネ古海は浅瀬を越えて沖まで行くと魔物の危険度が上がるから、今までは近衛兵が警護していたんだけど…そこに出る呼び声は街に出る個体と比べて強力なやつが多くて、ろくに漁にも出られない状況が続いている」
バザールを回っていた時はあまり感じなかったが、地底都市と同じく水門都市でも刻一刻と異常が発生し始めているようだ。
「というわけで、私が忙しいということはわかってくれたかな?」
「君たちにフィオーネ様の居場所を教える代わりに忙しい私に変わってここ最近の状況についての見解を聞いてきて欲しい。悪くない提案だろう?」
瀑水神に会うためには提案を断るわけにはいかないため、ジュドはこれを了承する。
「よし、じゃあ君たちにこれを渡そう。そうだな、魔力量的に君が一番良さそうだ」
ルシアに白銀の石印が手渡される。
「これは…?」
突然一任されたルシアは困惑しながら受け取る。
「これは近衛兵同士が連絡に使っている通信機みたいなものだ。魔力で通信することができる」
「フィオーネ様が何とおっしゃっていたか。それと急時の際はそれで私に連絡してくれるといいよ」
そう伝えるとオーレダリアは席を立ち、窓の外を指差す。
「フィオーネ様は街の西にある丘の上に隠居されている。あそこに見える灯台を目印にすると辿り着きやすいと思うから、お願いね」
あの丘に瀑水神が。
地底神が人ならざる威圧感を醸し出していたということは、水の旧神も計り知れないのだろうか。
背筋に汗が滴る。
「わかった、また何かあったら連絡する」
ジュドはすでに冷えてしまった飲み物を一気に飲み干し、執務室から出る。近衛兵本部を出る途中、ジュドは口に残るほのかな酸味とほどよい甘さに舌鼓を打つ。
「しまった!あの飲み物、名前聞いとけば良かったな」
「観光じゃないのよ?まったくあんたは…」
システィが呆れた表情で言う。
「ジュドらしいな」
ダグラスたちもふっと笑い、一行は近衛兵本部を出る。
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