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第二章 地底都市編
第二話「異変の原因」
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夜が明けた。地下では朝を迎えられているのかが分からないが、朝になると部屋に置かれている魔石が光り始めて朝を教えてくれる。
黒石神殿へは、神殿区画にある転移装置を使えばすぐに向かうことができるようになっていた。
衛兵に案内され、五人は転移装置に乗る。
「どうか、ご無事で」
衛兵が深々と頭を下げた途端、目の前がぱっと切り替わり、気が付くとジュドたちは出口の転移装置に転移していた。
周りを見渡した感じでは、どうやら黒石神殿に続く坑道、その休憩地点に飛ばされたらしい。
「|転移装置って本当に一瞬なんだな」
初めての乗り心地にジュドは感心する。
「さぁ行くわよ。どうやら神殿までの道のりはそう長くないみたい」
「あぁ、みんな気を付けて行こう」
警戒しながら五人は坑道内を進む。
暗い岩肌の中、数分進むと開けた場所に出た。
辺りを見渡していると、突如空間が揺れ始める。
「なんだ!?」
五人は突然の出来事に動揺を隠すことができず、あまりの揺れに膝をついた。
揺れる視界の中、地響きと共に目の前に巨大な岩石の塊が現れたのだ。
巨大なそれは全身が岩石の集合体のような見た目をしており、頭部と思しき部分は獅子のような顔つきで背中には二個の大きな翼、肩には鳥のような顔がついている。
「あれは…マウントコアキマイラ!?」
モーリスが全員に聞こえる声で告げる。
「魔物か!?」
ジュドが慌てて聞き返す。
「本来は神殿の守衛として侵入者を防ぐよう創られた魔物で、敵意を向けたり攻撃しなければ襲って来ることがないはずじゃが…なぜかワシらを外敵と判断しているようじゃ!」
「まさか…これに冒険者たちはやられたのか?!」
ダグラスの研ぎ澄まされた感覚は巨大な塊のその奥からじわじわと溢れてきている禍々しいオーラを見逃さなかった。
「〝地揺れ〟の正体はこいつだ。こいつが野放しになっている原因が奥にある。まずはこいつを片づけるぞ」
全員、困惑しつつも目の前の現実に立ち向かうべく武器を手に取る。
すでにその巨体で攻撃をしかけて来ているのに対し、ジュド、ダグラス、システィの三人は注意を引きにかかった。
後ろではルシアが仲間の迷惑にならずに魔法を詠唱できる見晴らしのいい場所を探しながら走り、モーリスは前衛の後ろの陣取り強化魔法を味方に重ねる。
「《身体強化》」
「《刻印加速》」
詠唱中のモーリスを守る為、前で注意を引いていたダグラスに敵の強烈な一撃が叩きこまれる。
「…ッ!」
ギリギリのところで強化魔法が間に合った。
ダグラスは何とか全身で攻撃を受け止める。
とは言え、巨体の一撃で無傷なはずもなく、強靭な肉体を持つダグラスですら反動で怯んでしまう。
その隙に、システィは足を斬り落としにかかった。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
硬い岩石で覆われた皮膚に切り込みが入る。
システィの斬魔刀は人を斬れないという制約がある代わりに魔物に特化した大剣だ。その大剣ですら切り込みを入れることしか叶わない。
「なんて硬さよ、こいつ!」
「モーリス!足場を頼む!」
ジュドが持ち前の剣撃が届く位置に行こうとして、モーリスに指示する。
「《突き出す地柱》」
詠唱とともに、瞬時にジュドの足元に土の踏み台ができ、それに乗ってジュドは上に上がっていく。
「《空遊剣舞》」
双剣による連撃でも岩石を一部を欠けさせるのがやっとだった。
善戦できない一行だが、次の瞬間、攻撃を仕掛ける三人の背後から光の槍が放たれた。
それは刃物では傷つけることができない硬い皮膚を貫く。
「威力が足りない…もっと速く…!」
ルシアが周囲に待機させていた光の槍が回転し始め、どんどん圧縮されていく。
「一分だけ時間を稼いで下さい!」
ルシアの一言に全員が守りの態勢に入った。
マウントコアキマイラも崩れた柱の上に陣取った魔術師を自身の脅威と判断し、目標めがけて襲い来る。
ジュドは剣の威力を落さずに手数を増やし攻撃を行う。
「ルシア!オレが斬ったところに撃ち込め!」
皮膚を少しでも薄くして魔術の通りをよくしようとしていたのだ。
ダグラスがルシアの前に入り敵と競り合い、モーリスが妨害魔術で敵を足止めする。
システィが斬りかかろうとしたところで獅子の頭部は地面が揺れるほどの咆哮をあげた。
その瞬間、前の四人は衝撃で坑道の壁まで吹き飛ばされてしまう。
「ぐはッ!!」
ルシアに巨体が差し迫った時、詠唱した魔術が炸裂する。
「《光輝の魔術大槍》」
ルシアの能力である二重魔術は放った魔術の威力を倍にするもので、魔術の元の威力に依存するものの強化魔術と合わせればとてつもない力を発揮する。
つまり、数十におよぶ光の槍、一本一本が本来ならあり得ない威力の魔術と化したのである。
放たれた槍は岩の魔物を易々と貫通し、いとも容易く粉砕した。
音を立てて崩れる巨体を横目に、吹き飛ばされたジュドたちは各々道具で傷を回復させる。
「神殿へ急ぐぞ!」
ジュドたちは魔力の酷使で疲労しているルシアを迎えに行き、坑道の最深部へと急ぐ。
奥に近づくにつれて異様な雰囲気が増していくのを五人はひしひしと感じていた。
黒石神殿へは、神殿区画にある転移装置を使えばすぐに向かうことができるようになっていた。
衛兵に案内され、五人は転移装置に乗る。
「どうか、ご無事で」
衛兵が深々と頭を下げた途端、目の前がぱっと切り替わり、気が付くとジュドたちは出口の転移装置に転移していた。
周りを見渡した感じでは、どうやら黒石神殿に続く坑道、その休憩地点に飛ばされたらしい。
「|転移装置って本当に一瞬なんだな」
初めての乗り心地にジュドは感心する。
「さぁ行くわよ。どうやら神殿までの道のりはそう長くないみたい」
「あぁ、みんな気を付けて行こう」
警戒しながら五人は坑道内を進む。
暗い岩肌の中、数分進むと開けた場所に出た。
辺りを見渡していると、突如空間が揺れ始める。
「なんだ!?」
五人は突然の出来事に動揺を隠すことができず、あまりの揺れに膝をついた。
揺れる視界の中、地響きと共に目の前に巨大な岩石の塊が現れたのだ。
巨大なそれは全身が岩石の集合体のような見た目をしており、頭部と思しき部分は獅子のような顔つきで背中には二個の大きな翼、肩には鳥のような顔がついている。
「あれは…マウントコアキマイラ!?」
モーリスが全員に聞こえる声で告げる。
「魔物か!?」
ジュドが慌てて聞き返す。
「本来は神殿の守衛として侵入者を防ぐよう創られた魔物で、敵意を向けたり攻撃しなければ襲って来ることがないはずじゃが…なぜかワシらを外敵と判断しているようじゃ!」
「まさか…これに冒険者たちはやられたのか?!」
ダグラスの研ぎ澄まされた感覚は巨大な塊のその奥からじわじわと溢れてきている禍々しいオーラを見逃さなかった。
「〝地揺れ〟の正体はこいつだ。こいつが野放しになっている原因が奥にある。まずはこいつを片づけるぞ」
全員、困惑しつつも目の前の現実に立ち向かうべく武器を手に取る。
すでにその巨体で攻撃をしかけて来ているのに対し、ジュド、ダグラス、システィの三人は注意を引きにかかった。
後ろではルシアが仲間の迷惑にならずに魔法を詠唱できる見晴らしのいい場所を探しながら走り、モーリスは前衛の後ろの陣取り強化魔法を味方に重ねる。
「《身体強化》」
「《刻印加速》」
詠唱中のモーリスを守る為、前で注意を引いていたダグラスに敵の強烈な一撃が叩きこまれる。
「…ッ!」
ギリギリのところで強化魔法が間に合った。
ダグラスは何とか全身で攻撃を受け止める。
とは言え、巨体の一撃で無傷なはずもなく、強靭な肉体を持つダグラスですら反動で怯んでしまう。
その隙に、システィは足を斬り落としにかかった。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
硬い岩石で覆われた皮膚に切り込みが入る。
システィの斬魔刀は人を斬れないという制約がある代わりに魔物に特化した大剣だ。その大剣ですら切り込みを入れることしか叶わない。
「なんて硬さよ、こいつ!」
「モーリス!足場を頼む!」
ジュドが持ち前の剣撃が届く位置に行こうとして、モーリスに指示する。
「《突き出す地柱》」
詠唱とともに、瞬時にジュドの足元に土の踏み台ができ、それに乗ってジュドは上に上がっていく。
「《空遊剣舞》」
双剣による連撃でも岩石を一部を欠けさせるのがやっとだった。
善戦できない一行だが、次の瞬間、攻撃を仕掛ける三人の背後から光の槍が放たれた。
それは刃物では傷つけることができない硬い皮膚を貫く。
「威力が足りない…もっと速く…!」
ルシアが周囲に待機させていた光の槍が回転し始め、どんどん圧縮されていく。
「一分だけ時間を稼いで下さい!」
ルシアの一言に全員が守りの態勢に入った。
マウントコアキマイラも崩れた柱の上に陣取った魔術師を自身の脅威と判断し、目標めがけて襲い来る。
ジュドは剣の威力を落さずに手数を増やし攻撃を行う。
「ルシア!オレが斬ったところに撃ち込め!」
皮膚を少しでも薄くして魔術の通りをよくしようとしていたのだ。
ダグラスがルシアの前に入り敵と競り合い、モーリスが妨害魔術で敵を足止めする。
システィが斬りかかろうとしたところで獅子の頭部は地面が揺れるほどの咆哮をあげた。
その瞬間、前の四人は衝撃で坑道の壁まで吹き飛ばされてしまう。
「ぐはッ!!」
ルシアに巨体が差し迫った時、詠唱した魔術が炸裂する。
「《光輝の魔術大槍》」
ルシアの能力である二重魔術は放った魔術の威力を倍にするもので、魔術の元の威力に依存するものの強化魔術と合わせればとてつもない力を発揮する。
つまり、数十におよぶ光の槍、一本一本が本来ならあり得ない威力の魔術と化したのである。
放たれた槍は岩の魔物を易々と貫通し、いとも容易く粉砕した。
音を立てて崩れる巨体を横目に、吹き飛ばされたジュドたちは各々道具で傷を回復させる。
「神殿へ急ぐぞ!」
ジュドたちは魔力の酷使で疲労しているルシアを迎えに行き、坑道の最深部へと急ぐ。
奥に近づくにつれて異様な雰囲気が増していくのを五人はひしひしと感じていた。
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