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第二章 地底都市編
第一話「地底都市ラース」
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ジュドたちはウェスティーナ領半ばで野営を挟みつつ、次の日の昼には地底都市の検問まで辿り着くことができた。
検問に街へ来た趣旨を伝えると、守衛は一行を中へと通す。
地上の入り口を潜ると長い下り坂が下へ下へと続いており、次なる街〝地底都市ラース〟はその全貌を露わにする。
長い下り坂を降りると、そこにはまるで地下をそのままくり抜いたような景色が広がっており、暗い地下空間とは思えないほどの明るさで街が彩られていた。
地底都市ラースに到着したジュドたちは守衛に連れられ、神殿区画の最深部、旧神が住まう〝岩盤神殿〟と呼ばれる建造物へと案内される。
中に入ると吹き抜けの開放的な空間が広がっており、中央には巨大な岩で創られた椅子がそびえ立っていた。
そこに鎮座する人物にジュドたちは声をかけられた。
「よくぞ来た、大地の子らよ」
膝を付き、顔を上げるとそこには冠を被り、肩掛けの白装束を身に纏っている青年の姿をした〝何か〟がいた。
「面をあげよ。我はこの世に現在せし旧神が一柱、大地の父。地底神ラース」
あまりの圧倒的な存在感にジュドたちは動けず、ただただ立ち尽くしていた。
「なんだ、挨拶もできんのか…?、まぁ、よい。急を要するのでな。本題に移らせてもらおう」
「此度はご苦労、ある程度の話は聞かされておるであろうが…、とある場所に派遣した冒険者の行方がわからなくなっておるのだ」
その内容はジュドたちが王国で聞いていた話と相違ないものであった。
「消息を絶ったのは冒険者だけではない。こちらが救助に派遣した衛兵も〝全員〟だ」
相違ない?いや、違いすぎたのだ。聞かされた言葉に五人は絶句した。
事は五人が思っているよりもかなり深刻な状況だったのだ。
「この地底都市周辺にはいくつかの歴史的価値のある神殿があるのだが、地底都市北部アルナス山岳地帯にある〝黒石神殿〟で冒険者たちの失踪が多発しておる。ここ数日、地下で発生している〝地揺れ〟との関連性も考えられるが故、緊急の依頼としてヴェルトリアに要請を出したというわけだ」
「此方らには申し訳ないが、早速明日現地へと赴いてもらいたい」
「なに、今日は来たばかりで疲れているであろう。短い時間ではあるが、この街で取るがよい」
地底神ラースと名乗る人物は話を終える。
目の前から感じる緊迫感から言葉を発すことができなかった一行は、成すがまま神殿の外へと案内された。
地底神…一体何者なのだろうか。
「依頼を引き受けてくれてありがとうございます」
衛兵は一行に感謝を示す。
「不足の事態に備えて我々もより高い等級の冒険者に来ていただけないかを交渉している最中です。皆様には先に神殿内部へと侵入していただくことになりますが、よろしくお願いします」
話の後、先頭にいたジュドに金袋と地図が渡される。
「これは…?」
「今回に依頼の前払いとこちらで確保させていただいた宿が書かれた地図でございます。報酬は別で用意してありますので、今宵の宴の足しにでもしてください」
「ラース様を冷たく感じるかもしれませんが、あの方も今回の事態に対処するべくかなりの軍を動かし、行動されておられます。どうか私の顔に免じてご無礼をお許しください」
衛兵は頭を下げて謝罪する。
依頼内容の説明に対して尋ねたい部分もなかったと言えば嘘になるが、きっと地底神が話した内容が現状地底都市側が異変について把握している状況の全てなのだ。
あとは自分の目で確かめるしかない、地底神もそう伝えたかったのだろう。
ジュドは衛兵と握手を交わす。
「任せろ」
そう言い残し、五人は顔を見合わせ頷いた後、その場を後にした。
◇ ◇ ◇
岩盤神殿を出て、商店区画に来た一行は宿を取り、二階建ての石で作られた酒場に来ていた。
「とりあえず今日は英気を養おう」
先程の話で少し不安になっていた一行だったが、ジュドの言葉と美味しい食事で徐々に落ち着きを取り戻し始めていた。
酒場ではモーリスから地下での生活についてを話をしてもらったり、現地の楽器〝サンサウード〟を演奏してもらったりと、とても賑やかな時間を過ごす。
地底都市の食、芸術を満喫したジュドたちはその後、宿で一夜を明かすのだった。
この地底都市で一体なにが起こっているのか。
彼らはまだ知らない。壮絶な戦いが自分たちを待ち受けていることを―。
検問に街へ来た趣旨を伝えると、守衛は一行を中へと通す。
地上の入り口を潜ると長い下り坂が下へ下へと続いており、次なる街〝地底都市ラース〟はその全貌を露わにする。
長い下り坂を降りると、そこにはまるで地下をそのままくり抜いたような景色が広がっており、暗い地下空間とは思えないほどの明るさで街が彩られていた。
地底都市ラースに到着したジュドたちは守衛に連れられ、神殿区画の最深部、旧神が住まう〝岩盤神殿〟と呼ばれる建造物へと案内される。
中に入ると吹き抜けの開放的な空間が広がっており、中央には巨大な岩で創られた椅子がそびえ立っていた。
そこに鎮座する人物にジュドたちは声をかけられた。
「よくぞ来た、大地の子らよ」
膝を付き、顔を上げるとそこには冠を被り、肩掛けの白装束を身に纏っている青年の姿をした〝何か〟がいた。
「面をあげよ。我はこの世に現在せし旧神が一柱、大地の父。地底神ラース」
あまりの圧倒的な存在感にジュドたちは動けず、ただただ立ち尽くしていた。
「なんだ、挨拶もできんのか…?、まぁ、よい。急を要するのでな。本題に移らせてもらおう」
「此度はご苦労、ある程度の話は聞かされておるであろうが…、とある場所に派遣した冒険者の行方がわからなくなっておるのだ」
その内容はジュドたちが王国で聞いていた話と相違ないものであった。
「消息を絶ったのは冒険者だけではない。こちらが救助に派遣した衛兵も〝全員〟だ」
相違ない?いや、違いすぎたのだ。聞かされた言葉に五人は絶句した。
事は五人が思っているよりもかなり深刻な状況だったのだ。
「この地底都市周辺にはいくつかの歴史的価値のある神殿があるのだが、地底都市北部アルナス山岳地帯にある〝黒石神殿〟で冒険者たちの失踪が多発しておる。ここ数日、地下で発生している〝地揺れ〟との関連性も考えられるが故、緊急の依頼としてヴェルトリアに要請を出したというわけだ」
「此方らには申し訳ないが、早速明日現地へと赴いてもらいたい」
「なに、今日は来たばかりで疲れているであろう。短い時間ではあるが、この街で取るがよい」
地底神ラースと名乗る人物は話を終える。
目の前から感じる緊迫感から言葉を発すことができなかった一行は、成すがまま神殿の外へと案内された。
地底神…一体何者なのだろうか。
「依頼を引き受けてくれてありがとうございます」
衛兵は一行に感謝を示す。
「不足の事態に備えて我々もより高い等級の冒険者に来ていただけないかを交渉している最中です。皆様には先に神殿内部へと侵入していただくことになりますが、よろしくお願いします」
話の後、先頭にいたジュドに金袋と地図が渡される。
「これは…?」
「今回に依頼の前払いとこちらで確保させていただいた宿が書かれた地図でございます。報酬は別で用意してありますので、今宵の宴の足しにでもしてください」
「ラース様を冷たく感じるかもしれませんが、あの方も今回の事態に対処するべくかなりの軍を動かし、行動されておられます。どうか私の顔に免じてご無礼をお許しください」
衛兵は頭を下げて謝罪する。
依頼内容の説明に対して尋ねたい部分もなかったと言えば嘘になるが、きっと地底神が話した内容が現状地底都市側が異変について把握している状況の全てなのだ。
あとは自分の目で確かめるしかない、地底神もそう伝えたかったのだろう。
ジュドは衛兵と握手を交わす。
「任せろ」
そう言い残し、五人は顔を見合わせ頷いた後、その場を後にした。
◇ ◇ ◇
岩盤神殿を出て、商店区画に来た一行は宿を取り、二階建ての石で作られた酒場に来ていた。
「とりあえず今日は英気を養おう」
先程の話で少し不安になっていた一行だったが、ジュドの言葉と美味しい食事で徐々に落ち着きを取り戻し始めていた。
酒場ではモーリスから地下での生活についてを話をしてもらったり、現地の楽器〝サンサウード〟を演奏してもらったりと、とても賑やかな時間を過ごす。
地底都市の食、芸術を満喫したジュドたちはその後、宿で一夜を明かすのだった。
この地底都市で一体なにが起こっているのか。
彼らはまだ知らない。壮絶な戦いが自分たちを待ち受けていることを―。
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