上 下
8 / 72
第一章 腐れ剣客、異世界に推参

腐れ剣客と異世界講座

しおりを挟む

「ここは神話に記されし偉大なる神、地母神”ホウド”が創りし四大大陸、その中で最も西にある大陸ウェストラにある三つの王国の内、ブレブス王国が管理する領地の一つだ。
 自分やレベッカ君はその王国の管理下にあるギルドと呼ばれるものに所属している。
 ここに来たのはそのギルドからの依頼というわけだ。
 
 
 そしてこの神話というのが、自分たち灯士トーチや君たちが遭遇したゴブリン、そしてこの【墜界ネスト】に密接に関わってくる」
 
 遂に始まったフィーゴによる異世界講釈。
 そのような語りからつらつらと神話とやらについて語られていくのだったのだが、それを聞かされているのは短い人生のほとんどを剣術に捧げた男である。
 似たようなものでいえば仏教ぐらいしか知らずそれについても玉ねぎの皮一枚程度の知識しかない彼にとっては実に難解なものが多く含まれており、何とか一部を咀嚼するので精一杯であった。
 今回はそんな鴎垓の脳内を文章化しつつ、フィーゴによるこの世界の成り立ちについて見ていくとしよう。
 
 
 
 
 
「――その昔、この世界には神々だけがいたそうだ。
 その神々は皆思い思いに過ごしていたが、あるとき一柱の神からとある提案が成された。
 提案者は”ホウド”、この大地を創り出した張本人さ。
 ”ホウド”にはある望みがあった――それが『子供が欲しい』というもの。だが神とは本来不変の存在、神同士で子供を作ることは出来なかったためその願いが叶うことはなかった」
 
 ~鴎垓の脳内イメージ~
 

 ――ホウド「あー子供欲しい、けどこのままだとムリだし。どうしよう」
 
 
「ホウドは考えた。
 どうすれば子供を作ることができるのかと。
 そしてホウドは自らを『生命の揺り籠』――ようするに”母星”にすることを思い付いたのさ。
 しかしそのためには他の神の協力が必要だった。
 そこでホウドは自分と一緒に子供を作ってくれる神に協力を提案したのさ」
 
 
 ――ホウド「そうだ、この世界にではなく、私の中に子供を作ろう」
 ――ホウド「でも自分だけじゃやっぱりムリだ、だれか協力してくれる方はいないかな?」
 ――他の神々「ええやん、おもろそうやん」
 ――ホウド「キタコレ」
 
 
「多くの神が参加を表明する一方。
 神の尊厳を貶める行いだとしてそれをやめさせようとする神が現れた。
 それが魔神”デイモナーク”――神々の中でも最高位に位置する神の一柱だ。
 
 ホウドが星となって産み出そうとしている『子供』は不変の神とは違い、遥かに力が弱く寿命というものを持つ不完全な存在だったからだ。そんなもののためにわざわざ神の力を使うなど絶対に認めないといって魔神は”ホウド”に協力を申し出た神々を襲い、その力を奪い始めた。
 そして始まったのが賛成派と魔神の対立だ」
 
 
 ――デイモナーク「ホウドのいう子供って不細工でキモいな。こんなん産み出すとか神の恥じゃん。阻止しなきゃ」
 ――賛成派「ええ? そこまでいうことなくない?」
 ――デイモナーク「賛成派は神の風上にも置けないからペナで力奪うね。言っとくけどこれ秩序のためだから」
 ――賛成派「こいつの好きにさせる方が秩序が乱れるのでは?」
 ――デイモナーク「粛清!!」
 ――賛成派「ああっ!!(撃沈)」
 
 
「不変の神も存在そのものと言える力を奪われては一堪まりもない。次々と力を奪われ魔神の中に封じられていく神々を見かねて、ある一柱の神が立ち上がった。
 それが光の神――”エルソラ”だ」
 
 
 ――エルソラ「デモ、お前やり過ぎ」
 ――デイモナーク「エルソラ! お前も敵か!」
 ――エルソラ「少し頭、冷やそうか」
 
 
「”デイモナーク”と”エルソラ”は同格の神。
 奪った力で猛威を振るう魔神に、他の神々の助力を得て対抗する光神。
 戦いは苛烈を極めたが、長きに渡る激闘の末僅かな差で”エルソラ”が勝利した。戦いが終わった後、光神は魔神がこれ以上の暴挙を行わないよう次元の裂け目を作りそこにバラバラにした魔神の体を封印した。神ゆえに滅びず、また多くの力を内包した魔神を大人しくさせるにはそうするしかなかったんだ」
 
 
 ――デイモナーク「くそぉおお!! 後少しだったのに!!」
 ――エルソラ「俺の勝ち、何で負けたのかここで考えてろ」
 ――デイモナーク「ちょ、おま――」
 ――エルソラ「これで皆を守ることができる」
 ――生き残った神々「さすがエルソラ! 俺たちにできないことを平然とやってのける! そこに痺れるあこがれるーーー!!!」
 ――ホウド「素敵、抱いて」
 
 
「そうして生き残った”エルソラ”と他の神々の協力の結果、”ホウド”は念願だった”母星”へと自身を変え、そしてその中に数多の生命を創り出した。
 
 ”エルソラ”はその後その裂け目のあった場所に座し、魔神が復活しないよう監視する役割を自らに課した。そしてあまねくを照らす父なる星――太陽となられたさ。
 他の神々も母星を見守るため各々星となって世界に点在することとなった。
 そうして世界は平穏に包まれる、はずだった――」
 
 
 
 
「――魔神は残った力を使い、封印した神々の一部を次元の外へと出すことに成功した。魔神の意思のこもったそれは”母星”へと降り注ぎ、その地に生きる全ての生命を滅ぼす存在へと変貌した。
 それこそが我々の敵、【墜神フォールズ】と呼ばれるものの正体だよ」
 
 
 

 
 そして話はそれに対抗する”人類”についてへと移っていく。
 
 
 ――平穏だった”母星”を蹂躙する敵に対抗するため光神”エルソラ”と地母神”ホウド”は再び協力し、地上の守護する存在――”人”の先祖を産み出した。
 
 ――人はそれまでの地上に生まれた生命とは違い、毛皮を持たず、牙を持たず、爪を持たぬ存在だった。
 しかし地上の守護者として産み出された彼らには、言葉と知恵、そして神々による恩寵――力が与えられていた。
 
 ――彼らが光神から与えらたのは地上に墜ちた神々を魔神の影響から解放する力。
 身体に剛力を宿し、精神を奮い立たせる。
 その力は何時しか『灯気フレア』と呼ばれ、その力をもって【墜神】と戦う戦士たちを闇を切り開く松明になぞらえて人々は『灯士トーチ』と呼ぶようになった。
 
 ――人々は団結し魔神の脅威と戦い、やがて各地に集落が作られる。そして次第に人口が増え集落から村へ、村は町へと大きくなるにつれそこは国となり、強大な戦力によって護られた安住の地が誕生した。
 
 
 
 ――しかし魔神の脅威は今もまた、流星となって地上に降り注ぐ。
 
 ――この世から”神々の子供”を一つ残らず消し去るために。
 
 ――故に我々は戦い続けるだろう。
 
 ――共に生きる者たちのために。
 
 ――星落ちぬ日の到来を願って。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ
ファンタジー
 私は死んだ。  はずだったんだけど、 「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」  神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。  なんと幼女になっちゃいました。  まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!  エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか? *不定期更新になります *誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください! *ところどころほのぼのしてます( ^ω^ ) *小説家になろう様にも投稿させていただいています

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【完結】やり直しの人形姫、二度目は自由に生きていいですか?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「俺の愛する女性を虐げたお前に、生きる道などない! 死んで贖え」  これが婚約者にもらった最後の言葉でした。  ジュベール国王太子アンドリューの婚約者、フォンテーヌ公爵令嬢コンスタンティナは冤罪で首を刎ねられた。  国王夫妻が知らぬ場で行われた断罪、王太子の浮気、公爵令嬢にかけられた冤罪。すべてが白日の元に晒されたとき、人々の祈りは女神に届いた。  やり直し――与えられた機会を最大限に活かすため、それぞれが独自に動き出す。  この場にいた王侯貴族すべてが記憶を持ったまま、時間を逆行した。人々はどんな未来を望むのか。互いの思惑と利害が入り混じる混沌の中、人形姫は幸せを掴む。  ※ハッピーエンド確定  ※多少、残酷なシーンがあります 2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2021/07/07 アルファポリス、HOT3位 2021/10/11 エブリスタ、ファンタジートレンド1位 2021/10/11 小説家になろう、ハイファンタジー日間28位 【表紙イラスト】伊藤知実さま(coconala.com/users/2630676) 【完結】2021/10/10 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ

手切れ金代わりに渡されたトカゲの卵、実はドラゴンだった件 追放された雑用係は竜騎士となる

草乃葉オウル
ファンタジー
上級ギルド『黒の雷霆』の雑用係ユート・ドライグ。 彼はある日、貴族から依頼された希少な魔獣の卵を探すパーティの荷物持ちをしていた。 そんな中、パーティは目当ての卵を見つけるのだが、ユートにはそれが依頼された卵ではなく、どこにでもいる最弱魔獣イワトカゲの卵に思えてならなかった。 卵をよく調べることを提案するユートだったが、彼を見下していたギルドマスターは提案を却下し、詳しく調査することなく卵を提出してしまう。 その結果、貴族は激怒。焦ったギルドマスターによってすべての責任を押し付けられたユートは、突き返された卵と共にギルドから追放されてしまう。 しかし、改めて卵を観察してみると、その特徴がイワトカゲの卵ともわずかに違うことがわかった。 新種かもしれないと思い卵を温めるユート。そして、生まれてきたのは……最強の魔獣ドラゴンだった! ロックと名付けられたドラゴンはすくすくと成長し、ユートにとって最強で最高の相棒になっていく。 その後、新たなギルド、新たな仲間にも恵まれ、やがて彼は『竜騎士』としてその名を世界に轟かせることになる。 一方、ユートを追放した『黒の雷霆』はすべての面倒事を請け負っていた貴重な人材を失い、転げ落ちるようにその名声を失っていく……。 =====================  アルファポリス様から書籍化しています!  ★★★★第1〜3巻好評発売中!★★★★ =====================

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット
ファンタジー
突如出現したミノタウロスによってダンジョン1層にして仲間を失い、上層への道すら閉ざされた主人公リューロは、2層でシズクと名乗る転生者と出会う。いつの間にかリューロに与えられていた[転生者の篝火]という称号が2人を出会わせたのだ。 シズクとリューロはお互いダンジョンを無事に脱出するため、協力し合うことになる。 これは『超回復』という強力な転生者特典を持つシズクとリューロが助け合う王道ダンジョン冒険譚である。 ── 否、違う。 リューロに与えられた称号[転生者の篝火]、それは転生者が死ねばその転生者特典はリューロに引き継がれるという恐ろしいものだった。リューロはダンジョンを潜る中で、運命的に幾人もの転生者に出会い、絆を深めるが、しかしその者らはみなリューロにその力を託し、この世を去っていってしまう。 故に力を託され、たった1人残されたリューロはダンジョンを潜り続ける。 100年前の隠された真実とは? リューロの身柄を狙う各国の思惑は? 転生者はどうしてこの世界に転生してきた? ダンジョンを潜り、新たな転生者と出会う度に浮かび上がる真実。 これは陰謀と絶望の帰還譚である。

処理中です...