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第一章 腐れ剣客、異世界に推参
腐れ剣客と異世界講座
しおりを挟む「ここは神話に記されし偉大なる神、地母神”ホウド”が創りし四大大陸、その中で最も西にある大陸ウェストラにある三つの王国の内、ブレブス王国が管理する領地の一つだ。
自分やレベッカ君はその王国の管理下にあるギルドと呼ばれるものに所属している。
ここに来たのはそのギルドからの依頼というわけだ。
そしてこの神話というのが、自分たち灯士や君たちが遭遇したゴブリン、そしてこの【墜界】に密接に関わってくる」
遂に始まったフィーゴによる異世界講釈。
そのような語りからつらつらと神話とやらについて語られていくのだったのだが、それを聞かされているのは短い人生のほとんどを剣術に捧げた男である。
似たようなものでいえば仏教ぐらいしか知らずそれについても玉ねぎの皮一枚程度の知識しかない彼にとっては実に難解なものが多く含まれており、何とか一部を咀嚼するので精一杯であった。
今回はそんな鴎垓の脳内を文章化しつつ、フィーゴによるこの世界の成り立ちについて見ていくとしよう。
「――その昔、この世界には神々だけがいたそうだ。
その神々は皆思い思いに過ごしていたが、あるとき一柱の神からとある提案が成された。
提案者は”ホウド”、この大地を創り出した張本人さ。
”ホウド”にはある望みがあった――それが『子供が欲しい』というもの。だが神とは本来不変の存在、神同士で子供を作ることは出来なかったためその願いが叶うことはなかった」
~鴎垓の脳内イメージ~
――ホウド「あー子供欲しい、けどこのままだとムリだし。どうしよう」
「ホウドは考えた。
どうすれば子供を作ることができるのかと。
そしてホウドは自らを『生命の揺り籠』――ようするに”母星”にすることを思い付いたのさ。
しかしそのためには他の神の協力が必要だった。
そこでホウドは自分と一緒に子供を作ってくれる神に協力を提案したのさ」
――ホウド「そうだ、この世界にではなく、私の中に子供を作ろう」
――ホウド「でも自分だけじゃやっぱりムリだ、だれか協力してくれる方はいないかな?」
――他の神々「ええやん、おもろそうやん」
――ホウド「キタコレ」
「多くの神が参加を表明する一方。
神の尊厳を貶める行いだとしてそれをやめさせようとする神が現れた。
それが魔神”デイモナーク”――神々の中でも最高位に位置する神の一柱だ。
ホウドが星となって産み出そうとしている『子供』は不変の神とは違い、遥かに力が弱く寿命というものを持つ不完全な存在だったからだ。そんなもののためにわざわざ神の力を使うなど絶対に認めないといって魔神は”ホウド”に協力を申し出た神々を襲い、その力を奪い始めた。
そして始まったのが賛成派と魔神の対立だ」
――デイモナーク「ホウドのいう子供って不細工でキモいな。こんなん産み出すとか神の恥じゃん。阻止しなきゃ」
――賛成派「ええ? そこまでいうことなくない?」
――デイモナーク「賛成派は神の風上にも置けないからペナで力奪うね。言っとくけどこれ秩序のためだから」
――賛成派「こいつの好きにさせる方が秩序が乱れるのでは?」
――デイモナーク「粛清!!」
――賛成派「ああっ!!(撃沈)」
「不変の神も存在そのものと言える力を奪われては一堪まりもない。次々と力を奪われ魔神の中に封じられていく神々を見かねて、ある一柱の神が立ち上がった。
それが光の神――”エルソラ”だ」
――エルソラ「デモ、お前やり過ぎ」
――デイモナーク「エルソラ! お前も敵か!」
――エルソラ「少し頭、冷やそうか」
「”デイモナーク”と”エルソラ”は同格の神。
奪った力で猛威を振るう魔神に、他の神々の助力を得て対抗する光神。
戦いは苛烈を極めたが、長きに渡る激闘の末僅かな差で”エルソラ”が勝利した。戦いが終わった後、光神は魔神がこれ以上の暴挙を行わないよう次元の裂け目を作りそこにバラバラにした魔神の体を封印した。神ゆえに滅びず、また多くの力を内包した魔神を大人しくさせるにはそうするしかなかったんだ」
――デイモナーク「くそぉおお!! 後少しだったのに!!」
――エルソラ「俺の勝ち、何で負けたのかここで考えてろ」
――デイモナーク「ちょ、おま――」
――エルソラ「これで皆を守ることができる」
――生き残った神々「さすがエルソラ! 俺たちにできないことを平然とやってのける! そこに痺れるあこがれるーーー!!!」
――ホウド「素敵、抱いて」
「そうして生き残った”エルソラ”と他の神々の協力の結果、”ホウド”は念願だった”母星”へと自身を変え、そしてその中に数多の生命を創り出した。
”エルソラ”はその後その裂け目のあった場所に座し、魔神が復活しないよう監視する役割を自らに課した。そしてあまねくを照らす父なる星――太陽となられたさ。
他の神々も母星を見守るため各々星となって世界に点在することとなった。
そうして世界は平穏に包まれる、はずだった――」
「――魔神は残った力を使い、封印した神々の一部を次元の外へと出すことに成功した。魔神の意思のこもったそれは”母星”へと降り注ぎ、その地に生きる全ての生命を滅ぼす存在へと変貌した。
それこそが我々の敵、【墜神】と呼ばれるものの正体だよ」
そして話はそれに対抗する”人類”についてへと移っていく。
――平穏だった”母星”を蹂躙する敵に対抗するため光神”エルソラ”と地母神”ホウド”は再び協力し、地上の守護する存在――”人”の先祖を産み出した。
――人はそれまでの地上に生まれた生命とは違い、毛皮を持たず、牙を持たず、爪を持たぬ存在だった。
しかし地上の守護者として産み出された彼らには、言葉と知恵、そして神々による恩寵――力が与えられていた。
――彼らが光神から与えらたのは地上に墜ちた神々を魔神の影響から解放する力。
身体に剛力を宿し、精神を奮い立たせる。
その力は何時しか『灯気』と呼ばれ、その力をもって【墜神】と戦う戦士たちを闇を切り開く松明になぞらえて人々は『灯士』と呼ぶようになった。
――人々は団結し魔神の脅威と戦い、やがて各地に集落が作られる。そして次第に人口が増え集落から村へ、村は町へと大きくなるにつれそこは国となり、強大な戦力によって護られた安住の地が誕生した。
――しかし魔神の脅威は今もまた、流星となって地上に降り注ぐ。
――この世から”神々の子供”を一つ残らず消し去るために。
――故に我々は戦い続けるだろう。
――共に生きる者たちのために。
――星落ちぬ日の到来を願って。
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