5 / 5
ヒントを求めてミントに出会う
しおりを挟む
『最近になって学園を中心に出回っているこいつには多幸感を得られる代わりに高い依存性が認められている。
しかしその材料は全くの不明、普通の製法では出来ないということだけは分かっているがどれをどんな風にすればこうなるのか、お前にはそれを調べて貰いたい』
殿下から渡された特殊な麻薬――一見すると薄荷の飴そのものな、ただの白い結晶でしかない。
普通の人にはこれと薄荷の飴並べたらどっちがどっちか分からないだろう。
こんなものを殿下はどうやって見つけ出したのかと思いつつ、生徒会室から帰ってきた私はその後教室で授業をそこそこに受け、昼食の時間となったのを期にある部屋を目指して歩きだす。
幸いなことに誰にも邪魔されることなく、私はすぐにそこへと辿り着くことができた。
「もし、誰か居られるでしょうか」
扉をノックしてから入室の許可をとる。
すると中から女性の声が聞こえてくる。
「はいはい、おりますよ~」
「失礼致します」
聞き覚えのあるその声に私は遠慮なく、その扉を開けた。
「あれま、アリス君ではないかね、一体ここには何の用なんだい?」
「お久しぶりですセレス先生、少々お邪魔致します」
扉を開けた途端、様々な植物の匂いが中から溢れだしてくる。
一番強いのはミントの香りだろうか。
そんなことを思いつつ手を使ってそれから鼻を庇いながら、火にかけた鍋で何かを煮詰めている先生へと挨拶をする。
この女性の名はセレス・ゴーキンセン。
平民という身分にありながらその植物に対する深い知識によって様々な薬を生み出し、その功績をもって男爵の位を陛下より賜った異例中の異例。
学園の医師の一人であり、そして私がこの学園で一番お世話になっている方でもある。
「今新しい薬の抽出を行っているところでね、匂いがきついのは勘弁してくれよ」
「構いません、お邪魔しているのはこちらなのですから」
「結構、他の生徒も君くらい弁えていて貰いたいものだ」
「恐縮ですわ」
このセレス女史は自分の研究を邪魔されるのを特に嫌うお方。
礼儀のなっていない者も毛嫌いしており、医師としての実力と反比例するような人気のなさ。
私も以前お世話になっていなかったらこうして交流を持つこともなかったでしょう。
「うーん、この方法じゃ駄目だったかな? 入れる溶剤を変えたほうがよさそうだな」
女史がそういって煮詰めていた鍋から顔をあげ、大雑把な動きで火を止める。
「今日はやめだな、お客さんもいるしこれ以上は時間の無駄だ」
備え付けのソファーに身を投げ出した女史はそのままの体勢でこちらに声を掛けてくる。
「それで、今日は一体どんな用なんだい」
何か面白いことなんだろね――と言う女史。
私はポケットの中から殿下から預かった木箱を取りだし、事情を説明していく。
そしてそれを聞き終えた女史の顔は新しい玩具でも見るかのように、木箱の中を覗き込んではキラキラと輝やかせているのだった。
しかしその材料は全くの不明、普通の製法では出来ないということだけは分かっているがどれをどんな風にすればこうなるのか、お前にはそれを調べて貰いたい』
殿下から渡された特殊な麻薬――一見すると薄荷の飴そのものな、ただの白い結晶でしかない。
普通の人にはこれと薄荷の飴並べたらどっちがどっちか分からないだろう。
こんなものを殿下はどうやって見つけ出したのかと思いつつ、生徒会室から帰ってきた私はその後教室で授業をそこそこに受け、昼食の時間となったのを期にある部屋を目指して歩きだす。
幸いなことに誰にも邪魔されることなく、私はすぐにそこへと辿り着くことができた。
「もし、誰か居られるでしょうか」
扉をノックしてから入室の許可をとる。
すると中から女性の声が聞こえてくる。
「はいはい、おりますよ~」
「失礼致します」
聞き覚えのあるその声に私は遠慮なく、その扉を開けた。
「あれま、アリス君ではないかね、一体ここには何の用なんだい?」
「お久しぶりですセレス先生、少々お邪魔致します」
扉を開けた途端、様々な植物の匂いが中から溢れだしてくる。
一番強いのはミントの香りだろうか。
そんなことを思いつつ手を使ってそれから鼻を庇いながら、火にかけた鍋で何かを煮詰めている先生へと挨拶をする。
この女性の名はセレス・ゴーキンセン。
平民という身分にありながらその植物に対する深い知識によって様々な薬を生み出し、その功績をもって男爵の位を陛下より賜った異例中の異例。
学園の医師の一人であり、そして私がこの学園で一番お世話になっている方でもある。
「今新しい薬の抽出を行っているところでね、匂いがきついのは勘弁してくれよ」
「構いません、お邪魔しているのはこちらなのですから」
「結構、他の生徒も君くらい弁えていて貰いたいものだ」
「恐縮ですわ」
このセレス女史は自分の研究を邪魔されるのを特に嫌うお方。
礼儀のなっていない者も毛嫌いしており、医師としての実力と反比例するような人気のなさ。
私も以前お世話になっていなかったらこうして交流を持つこともなかったでしょう。
「うーん、この方法じゃ駄目だったかな? 入れる溶剤を変えたほうがよさそうだな」
女史がそういって煮詰めていた鍋から顔をあげ、大雑把な動きで火を止める。
「今日はやめだな、お客さんもいるしこれ以上は時間の無駄だ」
備え付けのソファーに身を投げ出した女史はそのままの体勢でこちらに声を掛けてくる。
「それで、今日は一体どんな用なんだい」
何か面白いことなんだろね――と言う女史。
私はポケットの中から殿下から預かった木箱を取りだし、事情を説明していく。
そしてそれを聞き終えた女史の顔は新しい玩具でも見るかのように、木箱の中を覗き込んではキラキラと輝やかせているのだった。
0
お気に入りに追加
7
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

歪んだ恋にさようなら
木蓮
恋愛
双子の姉妹のアリアとセレンと婚約者たちは仲の良い友人だった。しかし自分が信じる”恋人への愛”を叶えるために好き勝手に振るまうセレンにアリアは心がすり減っていく。そして、セレンがアリアの大切な物を奪っていった時、アリアはセレンが信じる愛を奪うことにした。
小説家になろう様にも投稿しています。


だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる