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クッキーは話題をかっさらって
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次の日の学園。
教室までの廊下を歩いているとそこかしこで固まって話をしている方々の姿がよく見られた。
どうせその話題は同じ、私がバウザー様の告白を断ったことだろう。
周囲からの奇異の視線に晒されながら、私は一人、教室までの道のりを進む。
そろそろ教室が近づいてきたところ、中から他の方々の声が聞こえてくる。
「ねぇ知っていまして? 昨日の」
「バウザー様のことかしら?」
「そうよ! また断ったんですってあの方!」
「まあ、またですの」
ここでも私の話題か。
まあ、この年頃ならこの手の話題は大好物か。
そんなことを思いながら私は教室に入った。
さっきまで談笑していたらしい二人組が私を目ざとく見つけ、こそこそと声を潜めながら会話を続ける。
「あ、ほら。噂をすればアリス様よ」
「まあ本当だわ」
隠す気もない薄ら笑い。
私が何も言わないのをいいことに随分と失礼な態度だ。
「相変わらず子供のようなお姿ですこと、私の弟とそう変わらないのではなくて」
「あら、それではその弟君に失礼よ。アリス様と違って成長するのですから」
「まあ、そう言えばそうですわね。
私ったら失言でしたわ」
クスクスと、とても楽しそうに笑う二人。
周囲もそれを注意することなく、にやけ面でこっちを視線くれてくる。
はぁ、他人の身体的特徴をあげつらって笑うだなんて。
何とも低俗なことね。
これが貴族の子息子女というのだから。
一度彼女や彼らの親にどんな教育をしているか聞いてみたいものだ。
「――ごきげんよう皆様、失礼致します」
そんなことをいつも通りの無表情の下で思っていると、教室の入り口から誰かが挨拶をして入ってくる。
その方の登場に教室の中がにわかに騒がしくなる。
「まあロベルタ様ですわ、相変わらずお美しい……!」
「あの蒼い瞳、皇太子様から直々にお褒めいただいたらしいわよ……!」
ロベルタ――ああ、最近交換留学でこちらに来たという隣国の貴族の娘か。
彼女は大きな籠を手に持ち、蓋をするようにしていた布を持ち上げてその中にあるものを露にする。
「家でクッキーを焼いて来ましたの、他のクラスの方たちにも配っていますから皆様遠慮なく食べてくださって」
私が自分で作りましたの――と、誰もを魅了するような笑顔をしてそういう彼女の周りには瞬く間に人が集まる。
「まあ! ロベルタ様自ら!」
「是非とも食べさせて下さいまし!」
わいわいと騒がしい集団が一瞬の内に出来上がり、教室の中は私からクッキーの話題に一変した。
騒がしいのは嫌いだが、視線がこちらにこないのはありがたい。
鞄から取り出した本を開いた私。
しかし一人離れたところにいるのをどう思ったのか、ロベルタ様が人の囲いの中から声をあげる。
「そちらの方もどうかしら、中々上手くできたので是非食べていただきたいのですけど」
「いえ、いりません――どうせ吐くので」
その瞬間、教室の空気が固まった。
教室までの廊下を歩いているとそこかしこで固まって話をしている方々の姿がよく見られた。
どうせその話題は同じ、私がバウザー様の告白を断ったことだろう。
周囲からの奇異の視線に晒されながら、私は一人、教室までの道のりを進む。
そろそろ教室が近づいてきたところ、中から他の方々の声が聞こえてくる。
「ねぇ知っていまして? 昨日の」
「バウザー様のことかしら?」
「そうよ! また断ったんですってあの方!」
「まあ、またですの」
ここでも私の話題か。
まあ、この年頃ならこの手の話題は大好物か。
そんなことを思いながら私は教室に入った。
さっきまで談笑していたらしい二人組が私を目ざとく見つけ、こそこそと声を潜めながら会話を続ける。
「あ、ほら。噂をすればアリス様よ」
「まあ本当だわ」
隠す気もない薄ら笑い。
私が何も言わないのをいいことに随分と失礼な態度だ。
「相変わらず子供のようなお姿ですこと、私の弟とそう変わらないのではなくて」
「あら、それではその弟君に失礼よ。アリス様と違って成長するのですから」
「まあ、そう言えばそうですわね。
私ったら失言でしたわ」
クスクスと、とても楽しそうに笑う二人。
周囲もそれを注意することなく、にやけ面でこっちを視線くれてくる。
はぁ、他人の身体的特徴をあげつらって笑うだなんて。
何とも低俗なことね。
これが貴族の子息子女というのだから。
一度彼女や彼らの親にどんな教育をしているか聞いてみたいものだ。
「――ごきげんよう皆様、失礼致します」
そんなことをいつも通りの無表情の下で思っていると、教室の入り口から誰かが挨拶をして入ってくる。
その方の登場に教室の中がにわかに騒がしくなる。
「まあロベルタ様ですわ、相変わらずお美しい……!」
「あの蒼い瞳、皇太子様から直々にお褒めいただいたらしいわよ……!」
ロベルタ――ああ、最近交換留学でこちらに来たという隣国の貴族の娘か。
彼女は大きな籠を手に持ち、蓋をするようにしていた布を持ち上げてその中にあるものを露にする。
「家でクッキーを焼いて来ましたの、他のクラスの方たちにも配っていますから皆様遠慮なく食べてくださって」
私が自分で作りましたの――と、誰もを魅了するような笑顔をしてそういう彼女の周りには瞬く間に人が集まる。
「まあ! ロベルタ様自ら!」
「是非とも食べさせて下さいまし!」
わいわいと騒がしい集団が一瞬の内に出来上がり、教室の中は私からクッキーの話題に一変した。
騒がしいのは嫌いだが、視線がこちらにこないのはありがたい。
鞄から取り出した本を開いた私。
しかし一人離れたところにいるのをどう思ったのか、ロベルタ様が人の囲いの中から声をあげる。
「そちらの方もどうかしら、中々上手くできたので是非食べていただきたいのですけど」
「いえ、いりません――どうせ吐くので」
その瞬間、教室の空気が固まった。
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