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第3章 聴講生になったので、自由にします!
なるようになれ
しおりを挟む辺境伯領に戻って来て1週間
さすがに泣き疲れて、涙も枯れた頃、べーゼルのギルドに顔を出して、上級ダンジョンの情報を聞きに行った。
べーゼルでも、雪は降るんだなあ。という様に、積もっては居るけど、王都ほどではない。
冒険者たちも出歩いていて、活動してる様だった。
まさか、30階層からなる上級ダンジョンと、鑑定に出るものが、簡単に踏破されてるとは思ってないけど……
半分ほど踏破されてるのなら、入れないかなあ?って思ってたんだ。
それが、「え?もう20階層に到達してるの?!」と驚きの速さだったんだけど……
最初に浮かんだ思いは、凄いじゃなく、焦ってない?だった。
そりゃ、自分も、エイドリアン領の上級ダンジョン踏破させて来たけど、あっちは踏破済みダンジョンで、ギルドも噛んで、色々と手が入れられての踏破だもん。
初となれば、mapないので作成させながらって事になるし、セーフティポイントを決め、結界を埋めなきゃいけない。
そこで気付いたのが……
焦ってると言うより、ヴィルジーク様、ダンジョンから戻って来てるの?
戻ってないのなら、20階層に到達してるのも分からないではないけど……
それって、裏を返せば、ヴィルジーク様とコーデリアの婚約なんて、なされてないのよ!
って事は、コーデリアの父、ロッテンマイヤー侯爵が謀ったのか!
自分が色々と、ヴィルジーク様の為にと思って、ダンジョンを使った領地の特産を考えたのが、裏目に出た!?
してなくても、婚約したと発表すれば、真実ではないとなれば、コーデリアに痂皮ついちゃう。
後戻り出来ない様に、反論出来ない様に、新しい上級ダンジョンに潜ってる間を狙ったと……
策士だねえって、笑っては居られないね。
というか、コーデリアもしかして、実情知らない?
婚約がなったとは聞かされてるだろうし、相手がヴィルジーク様となれば、悪くはないと思ってるだろうけど……
サロンの事で悩んでそうだよねえ。
とりあえず、どう動くかだね?
王都に取って返した自分がしたのは、噂スズメに情報を流した。
といっても、嘘じゃなく、真実。
「次期辺境伯自らが、見付かった新しい上級ダンジョンに入って1ヶ月、既に20階層にまで到達。初踏破まで直ぐでしょう。お宝は何が出るのでしょう?」
冒険者ギルドの中では、普通に流れてる話だけど、平民で知ってるとなれば、辺境伯領でくらい。
王都に居る平民はもちろん、貴族の耳には入らない。
今、貴族の会話に上ってるのは、そのヴィルジーク様とコーデリアの婚約だけど……
宝箱という餌で、上書きすれば良いの。
それに、ずっと潜ってるっていうのに、どうやって婚約したの?と言う疑問が浮かぶよ。
ロッテンマイヤー家が侯爵家だけに、表立っては話されないけど、裏じゃバンバン飛ぶよ!
コーデリアのサロンや商会が社交界で人気という事は、裏を返せば、妬み僻みない筈ないもん。
コーデリアには悪いけど、フェアじゃないやり方をする侯爵様は許せないから!
コーデリアからの手紙が来たのは、噂を流して直ぐだった。
ヴィルジーク様、ずっと上級ダンジョン内なの?だって。
見初めて下さっての話で、ダーイン伯からだって聞かされてたのにって。
ヴィルジーク様を嵌めようとしてるって噂されてるのって。
書かれてたけど……
確か、手紙書いたよね、自分。
新しい上級ダンジョン見付かったから、数日後から辺境伯領兵とヴィルジーク様が潜るから、自分が潜れるのはまだ先だって。
本人以外受け取れない様に、フクロウが届けてるから、誰かに抜かれたなんて事ないから。
裏取りせず、言われた事を素直に信じるって……
それが普通か。
どうも、この世界来てから、疑心暗鬼の慎重派になったよ。
だって、裏があるなんて、ザラなんだもん。
あれ?社交界は足の引っ張り合いだって、イルラと言ってたのになあ?
その上、ヴィルジーク様ほとんど辺境伯領に居て、王都に行ってないと思われるのに。
政略結婚ならいざ知らず、ヴィルジーク様が求婚なしで婚約する?
見初めてなんて言われたら、何でプロポーズないの?って思うけどなあ?
それに、婚約するなら、花なり贈り物なり届いてないの?
そう思ったままを、言葉にして、フクロウで送った。
絶句でもしたのか、返事は来ない。
新しい上級ダンジョンの低層に入る事は許可されてたので、噂のネタになるものないかなあ?
そう思って入ったら、凄い果物見付けた!
ちなみに、1階層から出る魔物はDランクのオークだよ、さすが上級ダンジョン。
勿論、召喚獣たちに請われて、小屋内にも植えたけどだねえ。
「仙桃」と言う通り、桃なんだけど、蕩ける様に甘く美味で!
瓶に、桃と同量の水を入れて置けば、1週間でお酒になる様で……
今、ブリュンヒルデの隠れ家への皆の目線は、踏破なので、採集してる者居なかった。
まあ、自分は屋敷を訪れ、執事さんを呼び出して、色々と暴露った。
王都で流れるヴィルジーク様の婚約話に、対処するのに流した噂。
何か噂になるものがないかと潜ったら、見付けた桃の有能さ!
まだ内緒にしたいという事で、ギルドに依頼じゃなく、手が空いてる者を連れ、上級ダンジョンの低層2と3にある真っ赤な桃を収穫してたの。
鑑定が出来ない者には、毒じゃないかと怯まれる程に真っ赤!
ちなみに、この桃、美肌効果もあるんだよ~。
婆ちゃんの持つhotlineと、現辺境伯ギルバート様とで、王宮に2回目の登城。
見付けた生の仙桃と、コンポートに、お酒を贈呈して来た。
あ、自分は正装ドレスじゃなく、冒険者姿だけどね。
そうそう、早耳の貴族が来ていて……
「ご婚約おめでとうございます」って、ポロリすると思ってたんだよねえ。
この国でも、貴族の婚約は王家の承認が要るので、王宮に登城した=婚約の願い?申請?と思ったんだろう。
でもね、ロッテンマイヤー侯爵家の者が1人も居ないのに、不審に思わなかったのか?
その上、冒険者姿の自分が居るのに、無視か!
今後、ダルム子爵の依頼受けないからね!
ギルバート様がにこやかに、「何のお話ですかな?」と口にすれば、失態に気付いた様で青くなった。
「この度は、今、ヴィルジークが踏破を目指しています新しい上級ダンジョンで見付かった貴重な物をお持ちしました」
ギルバート様の発言と共に、提出した真っ赤な桃と、ロゼの色合いのお酒を持った侍従が寄って来た。
「新しい上級ダンジョンを見付けて来たAランク冒険者のライラが、この桃も見付けて来ました。お納めください」
ギルバート様と頭を下げれば……
「ライラと申したか」と初対面の演技。
「お初にお目に掛かります」の後、本来なら、御代を称える言葉を続けるんだけど……
「今は良い。飲むのが先だ」と遮られた。
「効能は美肌でございます」
勝手な発言は本来許されないんだけど、そう呟けば、食い付いたのは横に居た王妃様。
アンチエイジングに余念のない王妃様が、コーデリアのサロンから化粧品を買ってるのは知ってるけど……
作って卸してるのは自分だから。
コーデリアとイルラにも作り方は教えたけど、売り物になるほどの商品にならず、更に、1週間ほどで直ぐに生るから、収穫も追い付かない様で……
ただ、双方とも、小屋の中に人を入れてまで収穫はしたくない。
収穫して、小遣い稼ぎせずとも、凶悪蜂の蜂蜜と蜜蝋だけで、結構な金額になる。
自分の場合は、羽虫たちと契約したのと、母も一緒なので、順調に回ってるの。
だから、仙桃の種を絞って作った油に、凶悪蜂の蝋、ローズヴァインのローズウォーターで作った、最新バージョンのクリームを贈呈したの。
そうすれば、王妃様、ピン!と来たのか……
「サロンの化粧品って、作ってるのは貴女ね」
疑問文じゃなく、肯定文になってた。
「はい。討伐に採集、調合までしていますと、売っている時間までありませんでしたので、頼みました」
そういう話を、王妃様としてると……
「ライラそなた、冒険者という事は、他国に行くという事もあるのか」
そう言い出した国王陛下。
「はい。拠点は辺境領ですが、あります」
実際、ヴィルジーク様とコーデリアが結婚するなら、国を出ようと思ってたからね。
「ギルドにあります簡易の転送陣を使用すれば、荷物は送れますので」
一瞬、顔が強ばった王妃様、安堵したみたいだけど。
国王陛下の眉間に皺は取れず……
「ライラ、そなたに命ずる」といきなり言われ、ギョッとしたら……
「他国に出掛けても戻って来る様に、婚姻を」
そう言い出され、目を白黒させてた。
ヴィルジーク様への気持ちに気付いたけど、叶えられる事はないと思ってたので、心は凪いだままだった。
ヴィルジーク様じゃなかったら、誰でも一緒だもん。
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